邦人退避、輸送力が課題に 「台湾有事」想定の机上演習

邦人退避、輸送力が課題に 「台湾有事」想定の机上演習
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA070H10X00C22A8000000/

『日本戦略研究フォーラムは6、7両日、台湾有事を想定した机上演習を開いた。防衛相経験者や国会議員、自衛隊の元幹部などが参加した。中国が軍事行動に踏み切った場合に邦人退避や国民保護の備えは十分か。輸送力の不足などの課題が見えてきた。
2027年、中国の世論工作で台湾内で独立派と統一派が衝突し、台湾総統が襲撃された。続いて沖縄県・尖閣諸島に漁民が上陸し、中国軍の特殊兵のもようだとの情報が入る。
中国は台湾周辺にも弾道ミサイルを撃ち込む。日本政府は邦人に中国や台湾から自主的な退避を呼びかけたものの情勢の悪化で民間の船舶や航空機は使えない。台湾に1500人、中国には11万人の日本人がいる。

演習はこんなシナリオを想定した。

国家安全保障会議(NSC)の9大臣会合を模し、刻々と変わる情勢にどう臨むかについて討論した。

参加者がまず直面した課題は、有事との判断が邦人保護にも影響する点だ。日本が武力攻撃事態だと認定すれば、日本と中国の対立関係が決定的になる。

演習で首相役を担った人は「邦人の安全な輸送が最優先だ」と話し、台湾に自衛隊機を飛ばすために中国側への働きかけを促した。

防衛相役は「事態認定が遅れれば状況が困難になる」と強調。尖閣に上陸した漁民の武装が確認できた時点で武力攻撃事態にあたると決めた。

輸送力の不足も浮かんだ。今回台湾と尖閣周辺の双方で本格的な交戦状態に発展したと仮定した。

石垣島など先島諸島に残る住民の避難が急務になる局面では自衛隊に頼らざるを得ない。ただ防衛相役は尖閣や先島諸島の防衛を最も優先する方針を示し、前線部隊への物資輸送の帰りに住民避難を支援する道を探る。

3つ目の課題としてはより早い段階で避難を始める仕組みづくりが欠かせない点だ。有事に至る手前での民間航空機などを活用した自発的な避難では間に合わなかった。

小野寺五典元防衛相は演習で首相役を担った。記者団に「国民の避難が少し後手に回った。法改正か新たな制度か、なるべく早く退避できるよう検討する必要がある」と語った。

演習は中国が小型の核を使用した場合の対応などのテーマも扱った。米国が核を含む戦力で日本を防衛する「拡大抑止」の信頼性を高める方策を考えた。

中国は4日、ペロシ米下院議長の台湾訪問を機に実際に台湾周辺へ弾道ミサイルを発射した。うち5発が日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。台湾当局機関へのサイバー攻撃も相次いでいる。

今回の演習は中台間の衝突が日本の防衛に波及するだけでなく、台湾有事と尖閣など日本の領土への攻撃がほぼ同時に発生したとシミュレーションした。より複雑な事態も念頭に備えを急ぐ必要性を共有した。
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