米高官、米軍幹部との対話停止「中国は無責任」

米高官、米軍幹部との対話停止「中国は無責任」
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『【ワシントン=坂口幸裕】米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は5日、ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発する中国が米中両軍幹部の協議を停止するなどの対抗措置を発表したことを「無責任だ」と批判した。「誤算や誤解のリスクを減らすための意思疎通は重要だ」と述べた。記者団に語った。

中国が公表した8項目の対抗措置には、国防当局の実務者会合の停止や、海上軍事安全協議の取り消しも含む。カービー氏は「軍幹部間のすべての対話が遮断されるわけではない」との認識を示した。

米中両軍は複数のチャネルで偶発的衝突を避けるため綿密に連絡を取り合ってきた。中国は今回、両軍幹部が非常時に連絡する「ホットライン」を停止する可能性に言及している。予期せぬ衝突により事態の収拾が難しくなるおそれがある。

米高官は5日までに秦剛中国駐米大使をホワイトハウスに呼び、台湾周辺の軍事活動に抗議した。カービー氏は中国の行動は米国だけでなく、国際社会が反対していると伝えたと明らかにした。

主要7カ国(G7)外相は3日の共同声明で、中国が軍事圧力を強めていることに懸念を表明。東南アジア諸国連合(ASEAN)は4日「隣接する地域での最近の出来事による国際的、地域的な不安定を懸念する」と記した外相声明を出した。

カービー氏は「米国は台湾海峡とその周辺の事態を注視し、監視を続ける。危機を望んでおらず、中国が挑発的な演習や発信をやめれば緊張緩和に向けて前進できる」と強調した。

8項目の対抗措置には気候変動問題に関する話し合いの一時停止も記した。中国は世界で温暖化ガスの最大の排出国で、カービー氏は「太平洋諸島の海面上昇から欧州の火災まで米国のパートナーに影響を及ぼす」と非難した。

台湾海峡での中国による挑発行為は日本の安全保障の脅威になる。中国軍は4日に始めた台湾周辺での演習で台湾東部沖へ複数のミサイルを発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)内に複数落下した。

ブリンケン米国務長官は5日、訪問先のカンボジアで記者会見し「台湾海峡の平和と安定、自由で開かれたインド太平洋を支持する。 数日、数週間のうちにそのことが分かるだろう」と明言。「日本を含む地域の同盟国の安全保障に対する米国の関与を示すため、さらなる措置を講じる」と話した。

米軍は数週間以内に米海軍の艦船が台湾海峡で「航行の自由作戦」を実施する計画で、威圧的な軍事活動を強める中国軍に対抗する姿勢を示す狙いだ。

ブリンケン氏は現地での米政府系メディアのインタビューで、台湾海峡は多くの商業船舶が通過する海上交通路だと指摘し「不通になれば世界経済に重大な影響をおよぼす」と力説。「海を鎮めるべきだ」と表明した。

【関連記事】中国、米軍幹部との対話停止 台湾「海上封鎖」演習続く

米中Round Trip https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?me=B001&n_cid=DSREA_roundtrip 

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滝田洋一
日本経済新聞社 特任編集委員
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ひとこと解説

米中の対話チャネルの途絶は天然災害ではなく人為の産物です。中国が揺さぶりのカードとして使っていることこそ最大の問題です。同様な揺さぶりは日本に対してもかけてきている。4日にカンボジアで予定していた日中外相会談を中国側から中止したのは、その典型です。日本のEEZへのミサイル着弾もしかり。河野太郎氏がいうように、「ミサイルはそこに『落下』したのではなく、そこを狙って撃たれた」のです。「中国は日米の分断をしかけてくる。単に(中国と)仲良くなろうという姿勢は禁物だ」――兼原信克・元官房副長官補はそう語ります(日経朝刊)。黙ってやり過ごし嵐が過ぎるのを待つといった対応は通用しないでしょう。
2022年8月6日 8:54 (2022年8月6日 11:44更新)

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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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分析・考察

今回の台湾を包囲する中国の軍事演習という事態を受けて、最も懸念されていることの一つが、米中の軍事的なコミュニケーションチャンネルの断絶で、それにより偶発的な衝突のリスクが増えます。米ソ冷戦においても、いくつかの危機的な状況を経験して両国でコミュニケーションを確保して、全面核戦争を回避してきました。米中の間にはその関係が築かれていないことを今回の事態が再確認したと思います。今後、米中のチャンネル構築が地域の安定と世界の平和のための最重要課題の一つになるでしょう。日本がいざという時に機能するバックチャンネルを中国と作れるのかというのも重要な課題となるはずです。
2022年8月6日 8:16 』