米失業率3.5%、喜べぬ半世紀ぶり水準 非労働力が増加

米失業率3.5%、喜べぬ半世紀ぶり水準 非労働力が増加
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN05DSW0V00C22A8000000/

『【ワシントン=高見浩輔】米労働省が5日発表した7月の雇用統計は減速の予想を覆す強い数字だった。失業率は前月比0.1ポイント下がり3.5%と、半世紀ぶりの水準だった新型コロナウイルス禍前の2020年2月以来の低さになった。統計の内容を詳しくみると、仕事を探そうとしないため失業者に数えない非労働力人口の増加など好ましくない兆しも浮かぶ。

【関連記事】米就業者52.8万人増 7月雇用統計、失業率3.5%に低下

「歴史上、最も多くの人々が働いている」。雇用統計の公表から1時間後、バイデン米大統領は高らかにコメントを発表した。非農業部門の就業者数は1億5253万人と、20年2月の1億5250万人を超えて過去最高になった。前月比の増加幅は52万8000人と前月(改定後39万8000人)から加速した。

この記録に疑義を呈するのは米ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ヤン・ハチウス氏だ。「今の雇用統計は数字が過大に出ている可能性がある」という。

雇用統計で一般に市場が重視する就業者数は企業への調査に基づく。ハチウス氏は7月のリポートで、同じ米労働省が家計に調査した就業者数に注目した。22年3月にコロナ前比40万人減まで回復した後、7月まで伸びが止まった状態だ。過去最高には達していない。

2種類の調査の数字はおおむね同じ動きをしてきたのが、この半年間あまりは差が大きくなっている。背景として「複数の仕事を掛け持つパートタイマーの急増」を指摘する声がある。企業からの集計では一部がダブルカウントになっている可能性がある。

雇用者数が頭打ちなら失業率はなぜ下がったのか。失業率は就業者と失業者を合わせた労働力人口に占める失業者の割合だ。7月は分母の労働力人口が1億6396万人と前月から6万3000人減った。それ以上に分子の失業者の減り幅(24万2000人)が大きかった。

16歳以上の人口に占める労働力人口の割合(労働参加率)は62.1%と0.1ポイント低下した。職探しをしない人は失業者として扱わず、非労働力人口に数える。7月の非労働力人口は23万9000人増えており、そもそも労働市場からの退出者が増えている様子がうかがえる。計算上は失業率が下がっていても、必ずしも雇用情勢が改善しているわけではない。

米ブルッキングス研究所は4日、「学士号を持たない働き盛り(プライムエイジ)の男性、同じく学士号を持たない45~54歳の女性」が労働市場に戻っていないと指摘した。1960年代にかけて生まれたベビーブーマーの早期退職もある。

雇用統計の強さを受けて、米金利先物市場は9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%の大幅利上げが続くとの予想を7割ほど織り込んだ。だがコロナ禍も経て労働市場の構造は大きく変わっている。雇用の実態をつかみ損なえば、景気を左右する金融政策の判断も誤りかねない。

ニューズレター https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?n_cid=DSREA_newslettertop 』