米インドネシア軍事演習に陸自参加 10カ国超で信頼築く

米インドネシア軍事演習に陸自参加 10カ国超で信頼築く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM040W40U2A800C2000000/

『米国とインドネシアの両陸軍はこのほど、定期合同演習「ガルーダ・シールド」を記者団に公開した。現場で訓練を目の当たりにすると、米国と中国が覇権を争うインド太平洋地域で、同盟国やパートナー国同士が実戦を想定した意思疎通を深める重要性を実感した。
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インドネシアのスマトラ島南西部にある沿岸の地、バトゥラジャ。同島南部の都市パレンバンの空港から車で6時間半かけてたどりついた演習場で3日、米インドネシア両陸軍と、ガルーダ・シールド初参加の日本の陸上自衛隊が訓練を実施した。

午前10時ごろ、小雨の空に米軍のC130輸送機がごう音とともに姿をあらわした。地上300メートルの低空から3カ国の隊員が次々とパラシュートで降下した。隊員は地上に降り立つとそのまま銃を構え、言葉を掛け合いながら目的地まで歩みを進めていった。

米国、インドネシア、日本の3カ国は合同で空挺訓練を実施した(3日、バトゥラジャ)

輸送機は米領グアムのアンダーセン空軍基地を出発しバトゥラジャまで約3800キロメートルの長距離を航行して来た。陸自がインドネシアで空挺(くうてい)訓練を実施するのは初めてだった。

「空挺訓練は非常に危険を伴う。3カ国がそれぞれの国のやり方、違いを理解しながら、安全に実行できたのは価値あることだ」。牛嶋築陸上総隊司令部幕僚長は終了後、記者団に成果を強調した。

ガルーダ・シールドは07年に始まった。今回は陸自のほか、オーストラリアやシンガポールが部隊を派遣した。英国やフランス、カナダをはじめ米国の主要同盟国もオブザーバー参加するなど過去最大規模で10カ国超が名を連ね「スーパー・ガルーダ・シールド」と称した。

隊員はパラシュートから降下後、言葉を掛け合いながら目的地に進んだ(3日、バトゥラジャ)=インドネシア陸軍提供

インドネシア国軍制服組トップのアンディカ司令官は「訓練は特定の国を想定したものではない」と訴える。しかし、言葉を額面通りに受けとめる者はいない。同国にとって中国は最大の貿易相手国だが、南シナ海の自国領ナトゥナ諸島の周辺で権益争いを抱えている。

声高に「対中国」を叫べば、中国に気兼ねして参加への意欲をそぐ可能性がある。演習には中国との経済的結びつきが強い一方、南シナ海で領有権を争うマレーシアも加わった。インドネシアと事情が似る。

この静かな連携こそが中国の抑止になる。中国は太平洋地域に限ってみれば軍事力で米国をしのぎつつあるとされる。だが同盟国やパートナー国との軍事上のネットワークに乏しい。インド太平洋地域で中国への立場を乗り越えて各国から約5000人が演習に参加した意義は大きい。

演習の現場では、米国、インドネシア、日本の3カ国の隊員が、時に立ち止まって、作戦を確認するような場面をしばしば見かけた。牛嶋氏は実戦を想定した現場で、組織文化、装備などの違いを理解し、意思を共有することの重要性を指摘する。

演習に臨んだインドネシアのアンディカ国軍司令官㊧とフリン米太平洋陸軍司令官(3日、バトゥラジャ)=インドネシア陸軍提供

今回のガルーダ・シールドではナトゥナ諸島と同じインドネシアのリアウ諸島州に属するシンケプ島で水陸両用の演習も実施する。ナトゥナ諸島を意識した離島防衛訓練であることは明らかだ。

米太平洋陸軍のフリン司令官は3日の演習をこう締めくくった。「懸命に訓練にはげみ、信頼関係を構築し、来年また会おう。もっとスーパーな形で」。ガルーダ・シールドはインド太平洋の安全保障上の主要な演習に育ちつつある。

(ジャカルタ=ボビー・ヌグロホ、根本涼)

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