暗号資産は有価証券か商品か 規制巡り論争白熱

暗号資産は有価証券か商品か 規制巡り論争白熱
Global Economics Trends 編集委員 小柳建彦
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK0239C0S2A800C2000000/

 ※ この辺の話しになると、もはや全くついていけない…。

 ※ オレが知っている「有価証券」は、「財産権を表章する証券で、その権利の移転・行使が証券でされることを必要とするもの。」というものだ…。

 ※ 全くの「紙ベース」のものの話しだな…。

 ※ 「老兵は、死なず。ただ、黙って消えゆくのみ…。」だな…。

『米国で暗号資産(仮想通貨)の規制のあり方を巡る議論が活発になってきた。政府や議会で検討が始まったにもかかわらず、米証券取引委員会(SEC)が7月下旬、独自の現行法解釈に基づいて捜査や告発などの法執行を強行する動きを見せたためだ。他の省庁・委員会や裁判所、議会を巻き込んだ論争が年末にかけて熱を帯びそうだ。

「コインベース・ショック」広がる

暗号資産交換業大手の米コインベースはSECとの対決姿勢を明確にしている=AP

SECは7月21日、暗号資産交換業大手の米コインベース・グローバルが扱う暗号資産のインサイダー取引で不正に利益を得たとして、同社の元従業員らを突然告発した。告発の中で、コインベースの取引プラットフォームに「上場」している暗号資産のうち7銘柄を個別具体的に「有価証券である」とSECが断定していたため、クリプト(暗号)業界に衝撃が走った。

これに対しコインベースは「我々のプラットフォームには『有価証券』は一つも上場していない」とすぐに声明をツイートした。「(21年4月の)我々の株式新規上場の審査の過程で、SEC自身が我々の実践している判断基準を確認していたはずだ」と、SECの一貫性の欠如を指摘した。

また同日、コインベースはSECが対応を義務付けられている「ルール整備の請願」手続きを活用し、請願書(Petition for Rulemaking – Digital Asset Securities Regulation)をSECに提出した。請願書では「どんな条件によってどのデジタル資産が有価証券に分類されるのか早急にルールを明確にすべきだ」と要求した。ルールが整理されないまま強権を発動するSECの姿勢を批判し、全面対決姿勢を明確にした。

SECの強行措置への反発は政府内からも起こった。

同じ21日、これまでビットコインなどの仮想通貨を金や穀物などと同様に「商品」の一種とみなして監督権限を行使してきた米商品先物取引委員会(CFTC)の委員が、異例のSEC批判の声明を出した。SECのインサイダー告発は、暗号資産の一部を有価証券として扱うという未確定のルールを、「執行を先行させることで既成事実化しようとする衝撃的な行為だ」と批判した(Statement of Commissioner Caroline Pham on SEC v. Wahi)。

その翌週、SECは個人のインサイダー取引だけでなく、未登録の「有価証券」を「上場」させている会社としてのコインベースの違法性についても捜査していると米ブルームバーグ通信が報道。「コインベース・ショック」はさらに広がった。

有価証券を一般人向けに売る場合、米証券法はSECへの発行登録と詳細な情報開示を義務付けている。また、有価証券の集中オークション型の取引仲介はSECに登録された「証券取引所」のみに許されると証券取引法は規定している。

仮にSECが、コインベースが違法に無登録で有価証券を扱っているとして告発に踏み切れば、米国籍のほぼ全ての暗号資産交換業者と、世の中で無数に出回っている「トークン」と呼ばれる非通貨型の暗号資産が未登録で違法状態にあることになり、業界全体が大混乱に陥る可能性がある。報道を受けてコインベースの株価は一時約2割急落した。

一部暗号資産の法的位置付けは曖昧

暗号資産の法的位置付けの問題は、元祖暗号資産のビットコインが2009年に登場して以来続いている。数ある暗号資産のうち金銭価値の媒体としての機能しかないビットコインやイーサ(イーサリアム・ブロックチェーン上で発行される仮想通貨)などの「通貨」的な暗号資産については、有価証券ではなく「商品」であり、CFTCが監督権限を持つとする判例法が、18年までにほぼ確立した。

一方、それ以外のトークンの位置付けの扱いは曖昧なままだ。

17~18年ごろ急増していたICO(仮想通貨技術を使った資金調達)で発行された「ユーティリティー(便益提供型)」トークンや、この1~2年で急増しているDAO(分散型自律組織)の組成のために発行される「ガバナンス(統治型)」トークンは、サービス利用権や事業の意思決定のための議決権、収益配分受領権などが付いた「スマートコントラクト」(プログラムとして自動履行される契約)の形になっている。買い手はこれらのトークンを「投資」目的を兼ねて買うことが多い。

SECは、「投資契約」の機能を持ったトークンは有価証券であり、証券法や証券取引法が適用されると主張してきた=ロイター

これらのトークンを巡ってSECは15年ごろから、もうけを狙う投資家向けに事業体が何らかのリターンを期待させる形で販売する「投資契約」の機能を持ったトークンは有価証券であり、証券法や証券取引法がそのまま適用されると繰り返し主張してきた。しかし、具体的にどんな権利や機能が付いていればそのトークンが「投資契約」になるのか、細かな条件は提示してこなかった。

このため、どのトークンが有価証券でどれが商品なのか、それぞれの交換所運営企業や、トークン発行の実質的な主体企業などが弁護士などに相談して勝手に判断せざるを得ない状況が続いてきた。それに対してSECは、いわば後出しジャンケンのように目についたトークンについて有価証券と断定し、告発などの権限を発動している。
SECの後出しジャンケンに批判の声

「当初、暗号資産を活用するスタートアップ企業と相談しながら規制の道筋を探っていたSECは、20年ごろから急に一貫性のない一方的な告発を実行するようになった」――。SECの暗号資産の扱いの変遷と現状の課題を分析した「The SEC, Digital Assets and Game Theory」と題する21年の論文で、米ニュージャージー州立大(ラトガース大)法科大学院のユリヤ・グスィーバ教授は最近のSECのやり方に危惧を表明した。

なかでも同教授がSECの「後出しジャンケン」の象徴に挙げたのが、暗号資産の国際送金サービスを手がけるスタートアップの米リップルを20年12月にSECが提訴した案件だ。

リップルは、独立したブロックチェーン「XRPレッジャー」上で発行された暗号資産である「XRP」を媒介に使って安くて速い国際送金サービスを主に銀行向けに提供する。XRPレッジャーを開発・運営するのは「XRPL Foundation」という非営利団体で、リップルはそのインフラの一利用者という立て付けになっている。

SECは、XRPレッジャーのもともとの開発者の一部がリップルを創業したことに着目。リップル自体が実質的なXRPの発行体で、事業の資金調達のために投資家向けにXRPを販売したので、これは未登録の有価証券だと主張した。その販売で不当に利益を得たとして会社と幹部らを提訴した。

リップル側は、XRPはビットコインやイーサ同様、金銭価値の媒介の機能しかない「仮想通貨」で、「商品」に当たると主張している。SECの告発よりも前に、元CFTC委員長のクリス・ジャンカルロ弁護士らが論文「Cryptocurrencies and US securities laws: beyond bitcoin and ether」で、XRPは何の契約関係も体現しておらず、SECが有価証券として扱う条件としている「投資契約」の要件を満たしていないと詳細に分析していた。「SECはXRPを有価証券扱いすべきではない」とわざわざクギを刺していた。しかしSECは提訴に踏み切った。

SECは「形式よりも(利益を目的に販売されているという)実態で投資契約であるかどうかを判断する」と言い始めており、裁判所がどちらの言い分を取るか予断を許さない。XRPは時価総額で10位以内に入る主要暗号資産の一つだけに、判決の影響は大きい。今秋までに審議を終え、判決が年内か年明けに出る。
米議会の法規制の審議は来年以降か

一方で司法判断に頼らずに暗号資産の規制体系を整備すべきだという声も多い。バイデン米大統領もその意見を共有しているようだ。
バイデン氏は3月に大統領令で、省庁の垣根を越えた包括的な規制・政策体系の立案を命じた=AP

バイデン氏は3月に大統領令(Executive Order on Ensuring Responsible Development of Digital Assets)で、デジタル資産を扱う消費者、投資家、企業活動を保護するための省庁の垣根を越えた包括的な規制・政策体系の立案を政府全体に命じた。

SECのコインベース告発の後に米ブルッキングス研究所が開いた討論会(The future of crypto regulation)でロスティン・ベナム現CFTC委員長は「有価証券か商品かの判断が必要なトークンが何百もある。判断基準は法律によって定められるべきで、(CFTCやSECなどの)規制当局はその運用に専念すべきだ」と、条件設定は議会の仕事であると強調した。

議会には21年以降、50本もの暗号資産規制関連法案が提出され百家争鳴状態だ。ただ、22年7月、有価証券の認定要件、DAOの法人認定制度、暗号資産の評価益・売買益への所得税上の扱いなど、多くの切り口から暗号資産のルールを定める意欲的な包括法案が超党派の議員らによって上院に提出された。「責任ある金融イノベーション」法案と名付けられ、今後の議会の議論のたたき台候補として有力視される。しかし、提出した上院議員自身が「まともな審議が始まるのは23年になってからだろう」と、立法プロセスのスピードについてはかなり悲観的な見通しを示している。

規制の枠組みを実定法できちんと固める規制のやり方が、すぐに実態に合わなくなったりイノベーションを阻害したりするリスクを指摘する声もある。

米ジョージタウン大学のクリス・ブラマー教授と米バンダービルト大学のイェシャ・ヤダフ教授は「Fintech and the Innovation Trilemma」と題する19年の論文で、「規制当局が、①明確なルールを設定し、②市場の健全性を維持し、③金融サービスのイノベーションを振興しようとすると、どれか2つしか実現できない」という法則があると指摘し、変化の激しいフィンテックを包含する規制体系整備の難しさを論証した。

SECのやや強引な「法施行」と裁判の積み重ねによる判例法でデジタル有価証券の要件が固まっていくのか、それとも政府や議会のルール整備がスピードアップするのか、現時点では読みにくい。いずれにしても大部分の暗号資産について、ほとんど何も明確な法規制がないという状態が長くは続かないことだけは確かだろう。
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【記事中の参照URL】
■Petition for Rulemaking – Digital Asset Securities Regulation(https://www.sec.gov/rules/petitions/2022/petn4-789.pdf)
■Statement of Commissioner Caroline Pham on SEC v. Wahi(https://www.cftc.gov/PressRoom/SpeechesTestimony/phamstatement072122)
■The SEC, Digital Assets and Game Theory(https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3806116)
■Cryptocurrencies and US securities laws: beyond bitcoin and ether(https://www.iflr.com/article/2a644yk131snh9bzqpou8/cryptocurrencies-and-us-securities-laws-beyond-bitcoin-and-ether)
■Executive Order on Ensuring Responsible Development of Digital Assets(https://www.whitehouse.gov/briefing-room/presidential-actions/2022/03/09/executive-order-on-ensuring-responsible-development-of-digital-assets/)
■The future of crypto regulation(https://www.brookings.edu/events/the-future-of-crypto-regulation/)
■Fintech and the Innovation Trilemma(https://www.law.georgetown.edu/georgetown-law-journal/wp-content/uploads/sites/26/2019/02/1Fintech-and-the-Innovation-Trilemma.pdf)』