北朝鮮、資金調達・洗浄にNFT利用 規制の抜け穴突く

北朝鮮、資金調達・洗浄にNFT利用 規制の抜け穴突く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0516L0V00C22A8000000/

『【ニューヨーク=白岩ひおな、吉田圭織】北朝鮮がNFT(非代替性トークン)を利用し、暗号資産(仮想通貨)を不正奪取する資金調達やマネーロンダリング(資金洗浄)を進めている実態が明らかになった。国連安全保障理事会で対北朝鮮制裁の状況を調べる専門家パネルが報告した。北朝鮮は得た資金を核開発などに開発にあてているとみられる。

専門家パネルがまとめた中間報告書案は、北朝鮮の偵察総局傘下のハッカー集団「ラザルスグループ」が、2022年1~7月にサイバー攻撃でイーサリアムやUSDコイン(USDC)など数億ドル相当の仮想通貨を盗み取ったと結論づけた。

専門家パネルは北朝鮮系のハッカー集団が、サイバー攻撃の標的を銀行などから仮想通貨を扱う企業に移していると分析している。北朝鮮が目を付けたのがNFTだ。NFTはオンライン上のデジタルアートなどのデータに固有のIDを持たせて唯一無二であることを証明する仕組み。誰でも作成でき、専用の取引市場「NFTマーケットプレイス」に出品して売買できる。

3月下旬にはラザルスが、人気のNFTゲームの「アクシー・インフィニティ」のネットワークにサイバー攻撃を仕掛け、約6億2000万ドル(約820億円)の仮想通貨を不正に奪い取った。ゲーム内の取引の仕組みを手掛けるサービス会社のネットワークが攻撃の標的となった。

NFTは若者を中心に急速に広まっている。米調査会社の推計では、21年の世界市場は113億ドルまで成長した。30年にかけて年間の平均成長率は30%を超え、2319億ドルの市場に拡大するとの予想もある。

専門家パネルは、「北朝鮮が資金調達と資金洗浄の両方で、規制が緩いNFTの仕組みを利用するケースが増えている」と指摘する。米会計会社のアイズナーアンパーは「デジタルアートを出品し、匿名口座を通じて仮想通貨で作品を買い戻すことで資金洗浄などに利用される可能性がある」と警告する。

北朝鮮は制裁逃れを続けながら、核実験に向けた準備を進めている。1日からニューヨークの国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議では、各国から懸念が相次いだ。ブリンケン米国務長官は「北朝鮮は違法な核開発を拡大し地域への挑発を続けている」と非難した。北朝鮮は03年にNPT脱退を宣言している。グテレス国連事務総長も「北朝鮮による核実験は容認できない」と強調した。
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

北朝鮮はこれまでもオークションなどを通じて資金洗浄を行ってきたが、それがNFTになった。他の仕組みで規制が厳しくなれば、新たな資金取引の仕組みを取り込み、それを資金洗浄に使っていく。それにしても、北朝鮮のこうした最先端の技術に対する感度の高さには改めて驚く。それだけ必死だということなのだろう。
2022
年8月6日 12:53 』