北朝鮮、地方経済の苦境深まる 中国との境界ルポ

北朝鮮、地方経済の苦境深まる 中国との境界ルポ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM164U00W2A710C2000000/

『【長白(中国吉林省)=渡辺伸】北朝鮮が続ける新型コロナウイルス禍の境界封鎖を受け、中国に隣接する地方経済の苦境がさらに深まっている。衛星写真のデータによると、市民生活に不可欠な市場の新設はほぼストップしている。中朝境界の中国側から北朝鮮の街の様子を観察してみた。

7月末、中国東北部にある吉林省の長白朝鮮族自治県から鴨緑江をはさんだ北朝鮮北部にある両江道の中心都市、恵山市。マンションや平屋の住宅が並ぶが、夜でもともる照明は少ない。夕方には複数の民家から煙がのぼった。

北朝鮮・恵山市の野外市場で、頭に荷物を載せて歩く住民(7月下旬)=中国吉林省長白から関係者が撮影

「電気やガスが足りないため、薪や練炭を炊事に使っている」。北朝鮮を40回以上訪れた環日本海経済研究所の三村光弘・主任研究員はこう話す。

米中央情報局(CIA)によると北朝鮮で電気を使用できるのはコロナ禍前の2019年時点で総人口の26%のみ。都市部で36%、地方は11%にとどまる。

中国で新型コロナが広がった20年1月下旬、北朝鮮は貿易額の9割以上を占める中国との境界を封鎖した。ウイルスの流入を恐れたとみられるが、境界封鎖による貿易の途絶も追い打ちとなり、電力事情はさらに悪化しているとみられている。

「チャンマダン」と呼ばれる野外市場も厳しい状況に置かれている。日本経済新聞が入手した7月下旬に撮影された写真によると、恵山の中心部ではビルや住宅に囲まれた空き地に市場がある。路上にスイカや野菜が並ぶが、冷蔵設備などは確認できない。住民らはいずれもマスクを着用している。

北朝鮮では金正恩(キム・ジョンウン)政権下で闇市場の合法化が進み、事実上の市場経済化の動きが加速したとされる。衛星画像で北朝鮮を分析する米国の専門家、ジェイコブ・ボーグル氏によると、北朝鮮には政府公認と非公式の運営を含め、少なくとも477の市場がある。

北朝鮮・恵山市の街並み(7月下旬)=中国吉林省長白から関係者が撮影

新設された市場は16~19年は毎年4~6カ所だが、20~21年は1~2カ所に減った。増えた市場の面積(既存施設の拡張分を含む)は20年が19年比で68%減の7450平方メートル、21年は同97%減の630平方メートルだった。ボーグル氏は「これらの減少は境界封鎖の影響だろう」と分析する。

船舶による貨物輸送は行われているが、貨物列車の運行停止は続く。長白の貿易関係者は取材に「運行再開がいつになるかは全くわからない」と語った。

共産党の幹部人事を決める党大会を秋に控える中国。当局は北朝鮮からのコロナの流入を警戒しており、早期に陸路貿易が再開するとみる向きは少ない。

【関連記事】

・北朝鮮、コロナ禍で経済苦境 コメ価格2倍・市場閉鎖
・北朝鮮、資金調達・洗浄にNFT利用 規制の抜け穴突く
・「北朝鮮で核爆発装置の実験確認」 国連報告書案 』