中国、米軍幹部との対話停止 台湾「海上封鎖」演習続く

中国、米軍幹部との対話停止 台湾「海上封鎖」演習続く
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『【北京=羽田野主、ワシントン=坂口幸裕】ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発する中国人民解放軍が、台湾海峡などの「海上封鎖」を念頭に軍事威嚇を強めている。中国外務省は5日、米中両軍幹部の電話協議の停止など8項目の米国への対抗措置を発表した。米中両軍のパイプが事実上とぎれ、偶発的な衝突リスクが高まる。

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中国側の対抗措置には、国防当局の実務者会合の停止や、海上軍事安全協議の取り消しも含まれる。

米中は安全保障や経済分野で激しく対立しているが、両軍は複数のチャネルをもち、偶発的衝突を避けるため綿密に連絡を取り合ってきた。中国は今回、両軍幹部が非常時に連絡する「ホットライン」を停止する可能性に言及している。予期せぬ衝突により現場の収拾がつかなくなるリスクがある。

気候変動問題に関する話し合いの一時停止も対抗措置に加えた。中国側はバイデン政権との緊張緩和の糸口になるとみて、この分野では積極的に協議に応じてきた。国際犯罪取り締まり協力の一時停止なども含む。

中国外務省は5日、ペロシ氏とその家族に制裁を科すとも発表した。制裁の具体内容は明らかにしていない。

ペロシ氏は同日、都内の米国大使館で記者会見し「中国が我々の台湾訪問を軍事挑発の口実に利用している可能性がある」と述べた。台湾を囲んで軍事演習を続ける中国を「台湾を孤立させることは許されない」とけん制した。

中国軍が4日に台湾周辺で開始した大規模演習は7日まで続く予定だ。台湾国防部(国防省)は5日、中国軍の航空機と艦船が台湾海峡の事実上の停戦ライン「中間線」を台湾側に越えたと発表した。ロイター通信によると、同日午前に艦船約10隻、航空機約20機が中間線を越えた。航空機の中間線越えは3日連続で、艦船を交えた連日の実施は極めて異例だ。

中国軍は今回、台湾の東や南東にも演習エリアを設けた。台湾島の東側は中央山脈に遮られ、中国から直接攻撃しにくい要衝とされてきた。だが、戦闘機や給油機の性能向上により、中国軍は台湾の東側や南側の空・海域にも広く展開することが可能になった。

台湾国防部の高官は、演習が「航空・海上封鎖に等しい」との見方を示す。中国軍の空母の2隻体制が確立し、有事の際は台湾東側と台湾海峡の両面で挟み撃ちにする海上封鎖のシナリオが現実味を帯びる。日本から救援に向かう米軍を迎撃し、遮断する態勢を整えつつある。

国防大学の孟祥青教授は中国国営中央テレビ(CCTV)で「南の演習エリアはバシー海峡に近い」と指摘し、中国軍が台湾東側に回り込む際に必要な海峡を押さえる狙いを指摘した。「北のエリアは沖縄に近い」とも話し、沖縄の駐留米軍も対象との見方を示した。

中国軍を監視する米海軍の第5空母打撃群のドネリー司令官は5日、原子力空母ロナルド・レーガン艦上で記者会見し、「我々の戦力を見せることがこの地域の抑止力になる」と述べた。

米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は4日、レーガンを中心とする打撃群が日本を含む周辺海域で安全任務を続けると発表した。数週間以内に米海軍の艦船が台湾海峡で「航行の自由作戦」を実施することも明かした。

一方、週内に計画していた大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験は延期する。カービー氏は「地域の緊張を考慮した。危機や紛争の口実を作ってはいけない」と説明した。

米ホワイトハウスは5日までに、秦剛中国駐米大使を呼び、台湾周辺の軍事活動に抗議した。「危機を求めていない」とも伝えた。

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滝田洋一
日本経済新聞社 特任編集委員
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ひとこと解説

日経朝刊では「日本の備えは 」と題し、専門家の話を紹介しています。
①香田洋二・元自衛艦隊司令官は「存立危機事態や重要影響事態になる前の段階で、どう中国を警戒監視するか」を宿題とし、「ミサイル攻撃からの被害を小さくして反撃態勢を保つ必要」を指摘します。
②兼原信克・元官房副長官補は「台湾有事で米国は台湾に向かう。日本を全面的に守ってくれるわけではない」として、「いまのように弾薬がない、部品もないではとても耐えられない」と語ります。
③現状は兼原氏らが5月に出版した台湾有事のシミュレーション本(新潮新書)を、現実がなぞっているようです。日台間の連絡メカニズムの構築など、具体的な対応が急がれます。
2022年8月6日 8:07 (2022年8月6日 10:35更新) 』