ミサイル落下「近くて遠い」 台湾望む国境の島ルポ写真でみる与那国島

ミサイル落下「近くて遠い」 台湾望む国境の島ルポ
写真でみる与那国島
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC060QQ0W2A800C2000000/

『中国による台湾周辺での大規模な軍事演習では、日本最西端の沖縄県・与那国島から約80キロメートルの地点にミサイルが落下しました。台湾に最も近い国境の島、与那国島はいまどのような状況にあるのか、現地ルポをお伝えします。

与那国島の日本最西端の碑。天候の条件がそろえば海越しに台湾が見える(6日)

与那国島は周囲約27キロメートルの島です。台湾を望む西側の岬に「日本最西端の碑」があります。台湾とは最も近いところで111キロメートルの位置にあり、天候の条件が良ければ目視できます。那覇市と与那国島の距離は500キロ以上あり、直行便で約1時間20分かかります。

日本側からみる台湾東部には山が連なっています。5日には雲の合間から黒い山並みが見え、地元の方によるとこれが台湾ということです。住民の話では「きれいに見えるのは年に10回ほどではないか」とのことです。6日も与那国島は晴天でしたが、台湾方面には雲があり、肉眼では見えませんでした。

近海での漁を終えて与那国島の漁港へ戻ってきた漁船(6日)

中国の軍事演習は漁業に影響を及ぼしています。与那国町漁港は4日のミサイル落下を受けて5日から漁の自粛を呼びかけていますが、6日は午前中から数隻が近海でのカジキマグロ漁に出ていました。漁師の一人は「お盆前の書き入れ時に休漁はつらい。燃料費の高騰もあり、ますます厳しい」と漏らしていました。

漁協関係者は「沖縄は来週からお盆に入るので刺し身に使う魚の需要はあるが『自粛』の呼びかけである以上、強制はできない」と頭を抱えています。夫が漁師の40歳代女性は「ニュースに出ているほどの差し迫った危機意識はないですが、夫が海に出る時に万が一のことが起きないか心配ではあります」と心中を明かします。

食品や生活用品を販売する商店の買い物客ら(6日)

町民は事態をどのように見ているのでしょうか。Tシャツ店を営む竜門砂月さん(53)は「島外の知人から『大丈夫?』と連絡をもらいますが、街のようすは普段と変わりないです」と落ち着いたようすでした。近海へのミサイル落下を知って「『あっ』と思いましたが『近いけど遠い』というのが実感。演習ということもあり現実的な危機感はあまりない」と話していました。

与那国島の漁港近くで遊ぶ子どもたち(6日)

町では目立った混乱はなく、普段と変わらない日常が流れているようです。漁港の近くでは夏休み中の小中学生が普段と変わらず遊ぶようすが見られました。小学5年生の女子児童は「ミサイル落下はニュースで知ったけど全く気にしていない。それよりコロナに気をつけるよう親に言われています」と平然としたようすでした。

与那国空港では観光客の姿も(4日)

観光客にも話を聞いてみました。沖縄県の西表島から子ども2人と訪れた今村愛さん(44)は4~7日の予定で乗馬などを楽しむそうです。与那国島に住む知人にようすを聞いたところ「『いつもと変わらない』と言っていたので予定通りの旅行を決めました」と教えてくれました。

ダイビングに訪れた男性は「波もとても穏やかで海はとてもきれいだった。軍事演習の気配は全く感じなかった」と話していました。ダイビングショップの女性は「釣り客は漁船が出られないためキャンセルがあると聞くが、ダイビング客のキャンセルはほとんどない」と明かします。

お盆に備えて沖縄の伝統芸能「エイサー」を練習する町民ら(6日)

6日午後9時ごろには若い人達が来週のお盆に備え、太鼓を叩きながら踊る「エイサー」の練習をしていました。太鼓の「ドンッ、ドンッ」という勇壮な音と「スリサーサー!」という元気な掛け声が目の前の漁港に響いていました。数十キロ先とみられる北西の空には、通常の民間機とは異なる軌道で巡回する飛行物の光が確認でき、参加者の1人は「どこの機体か分からないが中国の軍事演習に関連した何らかの飛行だろう」と眺めていました。
与那国島周辺を航行する海上保安庁の巡視船(6日)

6日は与那国島の周辺で海上保安庁の巡視船が航行するようすも確認できました。中国軍の演習も念頭に警戒・監視活動にあたっているようです。第11管区海上保安本部広報室は「普段から空白エリアがないように巡視しており、通常のパトロールです」と説明しました。ある漁師は「漁に出た漁船に気を使ってくれて見守りにきてくれたのだろう」と話していました。

船の詳細は不明ですが、与那国島から数十キロメートル先とみられる近海を行き交うタンカーのような船舶のようすも4~6日にかけて確認できました。

陸上自衛隊駐屯地前を歩くヨナグニウマ(5日)

与那国島では陸上自衛隊の駐屯地が2016年3月に開設されました。船舶や航空機の監視を担う沿岸監視隊が配備されています。今年の4月からは対空レーダーを備えた航空自衛隊の分遣班も新たに加わりました。

自衛隊員の移住は島の活性化にもつながり、15年に1500弱だった人口が現在は1700人ほどまで増えています。小学校の複式学級が解消され、町のイベントに自衛隊員が加わるなどして、以前より活気が出ているといいます。

(那覇支局 児玉章吾)

【関連記事】

・「中台」緊張身近に、与那国島のいま 地元関係者に聞く
・沖縄・与那国漁協、8日まで操業自粛 中国ミサイル懸念
・台湾間近に望む与那国島、街は「いつも通り」「不安ある」 』