「北朝鮮で核爆発装置の実験確認」 国連報告書案

「北朝鮮で核爆発装置の実験確認」 国連報告書案
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN04EH40U2A800C2000000/

『【ニューヨーク=吉田圭織、白岩ひおな】国連安全保障理事会で対北朝鮮制裁の履行状況を調べる専門家パネルが9月にも公表する中間報告書案の全容が明らかになった。豊渓里(プンゲリ)核実験場での地下トンネルの掘削再開や核実験に使われる爆発装置の実験が確認されたと明記し「追加の核兵器開発に向けた核実験に道を開くものだ」と指摘した。

3日に安保理の北朝鮮制裁委員会に提出された報告書案の全文を日本経済新聞が入手した。理事国の議論や修正を経て公表する。法的拘束力はないが、報告を受けて安保理や加盟国などが違反する団体や個人に新たな制裁を科すことがある。報告書案は2022年1月から7月の対北朝鮮制裁の履行状況をまとめており、制裁逃れの手口を詳述している。

報告書案によると、北朝鮮は寧辺(ニョンビョン)の核施設で核分裂性物質の生産能力を高め、18年に非核化交渉の過程で爆破した豊渓里の核実験場の地下トンネルの掘削も再開した。ある加盟国によると、核実験に使われる爆発装置の実験も確認された。2カ国の加盟国の分析によると、6月上旬時点で核実験の準備は最終段階に入った。

北朝鮮系のハッカー集団「ラザルスグループ」などがサイバー攻撃活動を続けており、イーサリアムやUSDコイン(USDC)など数億ドル相当の暗号資産(仮想通貨)を盗み取ったと明らかにした。北朝鮮は防衛企業を含む47の企業・機関にサイバー攻撃を実行したという。

北朝鮮がNFT(非代替性トークン)を資金調達とマネーロンダリング(資金洗浄)の手口として使う例が増えていると指摘した。3月下旬にはラザルスが、フィリピンなどで人気のNFTゲーム「アクシー・インフィニティ」の関連サービスから仮想通貨を盗んだとされる。

ラザルスは1月、偽の求人情報を使ってマルウエア(悪意のあるプログラム)に感染させる「オペレーション・ドリーム・ジョブ」を通じて、複数の化学やIT(情報技術)分野に関わる組織から情報を盗み取ろうとした。「ビッシング」と呼ばれる電話を使ったフィッシング詐欺の手法なども使われた。

北朝鮮による石油精製品の輸入などの制裁逃れも続いた。7月27日までに加盟国が制裁委員会に報告した北朝鮮による石油精製品の輸入量は、年間供給上限50万バレルの8.15%にとどまった。一方、ある加盟国はすでに年間供給上限に迫る45万8898バレルもの石油精製品が輸入された可能性があると推計する。

北朝鮮は石炭の輸出も継続した。専門家パネルと加盟国による調査では、北朝鮮は制裁をかいくぐり、中国領海で石炭の荷下ろしを続けた。具体的な数量は明らかにしていない。
報告書案で北朝鮮による制裁逃れを指摘する一方で、北朝鮮における新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり「国連による制裁が意図せずして人道状況に影響を及ぼしたことに疑いの余地はない」との文言が盛り込まれた。

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

「ある加盟国によると、核実験に使われる爆発装置の実験も確認された」というのは国連の専門家パネルの報告書でよくみられる記述だが、こういう書き方をする裏には様々な文言のやり取りがあり、いろんなフィルターを通じた結果出てくる文言。なので、こうやって表現する時は、それなりに信憑性の高い情報であり、北朝鮮が核爆弾の起爆装置を作っていることはおよそ確かなのだろう。北朝鮮が次の核実験に向けての準備を着々と進めていることは間違いないが、問題はそのタイミング。恐らく中国の共産党党大会の後となるだろう。

2022年8月5日 14:04

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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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ひとこと解説

核爆発装置の作動試験について、韓国政府はバイデン米大統領による日韓歴訪直後の5月下旬に北朝鮮が複数回行ったと探知・分析しています。この実験は7回目の核実験がすでに最終準備段階に入っていることを意味します。それから2カ月以上がたちました。「朝鮮半島の非核化」を唱える中国に配慮してきた北朝鮮が、秋の中国共産党大会以降に核実験に踏み切るかどうか。核実験の有無やそのタイミングを考える際に、北朝鮮が依存を強める中国との力学に注目しています。

2022年8月5日 11:51 』