[FT・Lex]ペロシ米議長訪台、TSMCにジレンマ

[FT・Lex]ペロシ米議長訪台、TSMCにジレンマ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB03A7I0T00C22A8000000/

『アジア市場は通常、国務長官クラスより下の米国の政治家による訪問を無視する。だが、その政治家が民主党の大物ペロシ下院議長で、しかも訪問先が台湾となれば話は別だ。台湾、香港、中国の株価はいずれも下落した。台湾ドルは2年ぶりの安値をつけた。

台湾をめぐり米中の対立が深まるなかで、世界最大の半導体メーカーTSMCは、中国と米国の間で選択を迫られる可能性に直面している=ロイター

中国の戦闘機が台湾海峡の上空を飛び交っている。半導体は軍事用機器に使われるだけでなく、米中間の緊張にも登場する。半導体受託生産大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、米国と中国のどちらをとるか選ばなければならなくなるかもしれない。これは東西貿易によって繁栄を築いてきた台湾にとってのジレンマでもある。

中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は、バイデン米大統領に「火遊びは身を焦がす」と警告していた。中国が台湾を武力で統一しようとして、米国との紛争を誘発する恐れが現実にある。

地政学的な二極化は小さな台湾にとって不都合だ。世界における台湾企業の影響力はTSMCのような半導体企業あってこそだ。その戦略的重要性は世界的な不足によってさらに増している。これらの企業は、世界の半導体受託製造の3分の2近くを占める。中国も米国も、台湾や韓国の生産能力には太刀打ちできない。

ペロシ氏が議長を務める米下院は、半導体の生産や研究開発に520億ドル超の補助金を投じる半導体法案を可決した。現在最先端の5ナノメートル半導体の製造工場をアリゾナ州に建設しているTSMCも補助金を供与される。補助金の主な条件は、受益者がプロセッサー密度の基準である28ナノメートルより高度な半導体の中国における生産を増やさないことだ。

これはTSMCにとって問題だ。同社はすでに中国でより優れた16ナノメートルの半導体を製造している。半導体法によって、南京の生産施設の更新ができなくなる。中国は最先端の半導体に飢えており、米国の間接的な禁輸措置に強く反発するだろう。

TSMCは、お互いに離れようとしている米中間の要として圧力を受けている。同社の株価は1月のピークから25%以上下落し、予想PER(株価収益率)は13倍と、中国にローテクの組み立てと検査施設しか持たない同業の米インテルより2割割安になっている。

米中どちらかを選ぶようにとのTSMCに対する圧力は、比較的微妙なものだ。TSMCはこれを迂回する方法を見つけるかもしれない。しかし、先端半導体への需要は世界的な緊張と並行して高まっている。いずれ中国と米国は、多国籍の半導体メーカーにもっとはっきりと同じ選択を迫るだろう。そうなれば「両方」というのは現実的な対応ではなくなる。

(2022年8月2日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

【関連記事】

・ペロシ氏訪台、台湾経済に逆風も 強まる中国依存
・台湾株3日 小反発、米中緊張警戒も大型株高が支え
・台湾海峡に嵐の予兆 米中の対立、危険な水域へ突入
・米の半導体補助金、5.9兆円支給へ前進 下院も法案公表
・米中首脳、台湾巡り険悪な2時間 米下院議長の訪台案で 』