挑発いなせぬ「脆き大国」 中国、ペロシ氏訪台に猛反発

挑発いなせぬ「脆き大国」 中国、ペロシ氏訪台に猛反発
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM034N90T00C22A8000000/

 ※ 下記で、今村さんが鋭いことを言っている…。

 ※ 案外、「それ」が本質を抉っている…、のかもしれない…。

『ペロシ米下院議長の台湾訪問に中国が猛烈な反発を示している。米下院議長の訪台は25年前にも実績があるにもかかわらず、中国はなぜこれほど過剰反応するのか。

「下院議長の訪台は前例があり、新しいことではない」。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は1日の記者会見でこう語った。1997年のギングリッチ米下院議長の訪台を指す。

米国は1979年の米中国交正常化時のコミュニケで中国を唯一の合法政府と認め、その範囲内で台湾人民と交流するとした。本来なら議員交流は許容範囲内といえる。

だが、今の中国にとってギングリッチ氏の訪台は「前例」とはいえない。米中と台湾を巡る環境が一変しているためだ。

当時、台湾の政権は国民党政権であり、中台間には両岸問題を巡る様々な交流もあった。当時の李登輝総統も「対話や平和的方法による両岸関係の処理」を訴えていた。一方、今の台湾の政権は中国が独立機運を強く警戒する民進党の蔡英文(ツァイ・インウェン)政権だ。

米国への疑念も強い。バイデン政権は「一つの中国」政策に変わりはないと説明するが、ペロシ氏は米紙への寄稿で訪問の目的を「中国共産党が台湾を脅かすのを座視できない」と明言した。ペロシ氏は大統領継承順位2位であり、序列を重視する中国にとって米軍機でのペロシ氏の訪台は「現状変更の兆し」と映る。

中国の強硬姿勢は中国の強さと弱さの両面の反映でもある。

習近平(シー・ジンピン)国家主席は急速な経済成長と拡大する軍事力を背景に、能力を内に隠す「韜光養晦(とうこうようかい)」路線を改め、中国の権威と誇りを顕示する「中国の夢」と「中華民族の偉大な復興」を掲げた。

「領土」の死守は最大の柱といえる。中国のSNS(交流サイト)には「ペロシ氏の訪台は台湾統一のきっかけだ」などの前のめりな書き込みがあふれている。習氏自身も自分の強い言葉に縛られた形となり「弱腰」はあり得ない選択肢だ。

「中国の夢」や「中華民族の偉大な復興」を掲げる習氏にとって台湾統一で弱腰はみせられない(22年7月1日、香港返還式典で)=ロイター

秋の中国共産党大会で3期目の党総書記就任をめざす習氏にとり、8月は党長老らが大詰めの調整をする「北戴河会議」の重要な時期でもある。

足元の経済減速が「失点」となりかねない環境下、7月末のバイデン米大統領との電話協議を得点としたかったはず。そこに突然、ペロシ氏の訪台をぶつけられ、ますます強硬姿勢以外の選択肢はなくなった。

中国は米国に次ぐ大国になったが、その一方で国内には人口減少や貧困問題、経済減速など様々な矛盾を抱えており、習氏が3期目以降も厳しい政権運営を迫られるのは避けられない。世界に出現しようとしているのは「脆(もろ)き大国」にほかならず、国内を抑え込むために対外強硬姿勢が加速し、わずかな挑発もいなせなくなる恐れもある。

多くの戦争は行き違いの積み重ねや偶発的事件から起きてきた。中国は今、台湾周辺で大規模に軍を動員しており、万が一の偶発的衝突が起きれば有事発生ともなりかねない危険をはらむ。

中国との間に真剣な危機回避策を策定する必要性は現実のものとなりつつある。今回の事態をいかにして「世界の悲劇」の予告編としないかが米国や日本に問われている。

(中国総局長 桃井裕理)

ニューズレター https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?n_cid=DSREA_newslettertop

米中Round Trip https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?me=B001&n_cid=DSREA_roundtrip

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

今村卓のアバター
今村卓
丸紅 執行役員 経済研究所長
コメントメニュー

分析・考察

習氏にとっては、隣接する台湾に定着し成熟する民主主義が脅威として膨らんでいるのでは。
25年前の台湾はその1年前に初の総統直接選挙、民主化は緒に就いたばかりでした。米国も中国には関与政策という鷹揚な姿勢だったので、ギングリッチ氏の訪台が台湾独立に道を開くなど考えもしなかったでしょう。
しかし今日蔡氏と会談したペロシ氏は台湾と世界の民主主義を守ると訴え、バイデン大統領は民主主義対権威主義の構図を提唱しています。習氏は米国によって台湾が民主主義陣営に取り込まれ、中国から離れていく危機感を覚え阻止に動いたのでは。民主化する隣国ウクライナにロシアのプーチン大統領が抱いた危機感との共通点もありそうです。
2022年8月3日 20:15 (2022年8月3日 20:18更新) 』