ペロシ氏「米台は団結」蔡総統と会談 台湾離れ韓国到着

ペロシ氏「米台は団結」蔡総統と会談 台湾離れ韓国到着
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『【台北=龍元秀明、北京=羽田野主】ペロシ米下院議長が3日、訪問先の台湾で蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と会談した。ペロシ氏は「米台の団結を明確にするため訪問した」と述べ、台湾の民主主義を支える考えを強調した。蔡氏は謝意を示し「民主主義の防衛線を守る」と語った。訪問に強く反発する中国は、台湾を取り囲む形で軍事演習に乗り出す。ペロシ氏は3日夜、次の訪問先である韓国に到着した。

米下院議長の訪台は1997年のギングリッチ氏以来、25年ぶり。米下院議長は大統領の継承順位が副大統領に次ぐ2位の要職だ。ペロシ氏は会談で「米国は揺るぎない決意で台湾と世界の民主主義を守る」と語った。

中国本土と台湾が不可分だとする中国の立場に異を唱えないが、台湾の安全保障には関与する米国の「一つの中国」政策を尊重し「台湾への関与を放棄しない」と強調した。蔡氏は「自衛力を高め、台湾海峡の平和と安定に努力する」と述べた。

ペロシ氏は会談後の共同記者会見で、米台の貿易協定が近く実現する可能性があるとの見方を示した。台湾積体電路製造(TSMC)などの半導体工場を補助金を出して誘致する米の新法については「米台の経済交流の扉を開くものだ」とアピールした。

台湾は先端半導体の生産で世界の9割を占める。台湾メディアは蔡氏が3日開いた昼食会に、ペロシ氏に加え、TSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏が出席したと報じた。

ペロシ氏は2日夜に台北に到着した。中国への配慮から滞在を短時間にとどめるとの見方もあったなか、一晩を過ごしたのは台湾が歴訪先の他のアジア諸国と「同格」と示す狙いがあったとみられる。4日には日本を訪れる。

ペロシ氏の訪台を受け中国は猛反発している。王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は3日の異例の談話で「中国の平和的台頭をぶち壊すことは完全に徒労で、必ず頭を打ち付けて血を流す」とペロシ氏を非難した。謝鋒外務次官は2日深夜に米国のニコラス・バーンズ駐中国大使を呼び「強烈な抗議」をした。

台湾の国防部(国防省)は3日、中国軍機27機が防空識別圏(ADIZ)に侵入したと発表した。うち22機が台湾海峡の事実上の停戦ライン「中間線」を、台北に近い北側で越えた。ペロシ氏訪問後、中国軍機の中間線越えが確認されたのは初めて。

中国人民解放軍は即座に対抗措置に動いた。2日夜から、海空軍やロケット軍、サイバー攻撃を担う戦略支援部隊などが台湾の北部、西南部、東南部の空海域で統合演習を実施している。

4日から7日にかけては台湾を取り囲む6カ所で軍事演習を始める。演習場所は複数の箇所で台湾の「領海」と重なるうえ、台湾海峡の中間線上でも実施する。

96年の台湾海峡危機の際の演習エリアは4カ所だったが、今回は2カ所増やした。台湾本島から約20キロメートルの空海域も演習エリアに指定されている。軍事的な緊張が高まるのは必至で、偶発的衝突も懸念される。

主要7カ国(G7)外相は3日、中国の「威嚇的な行動、特に実弾射撃演習や経済的威圧を懸念する」との共同声明を出した。

中国は演習エリアへの船舶や航空機の進入を禁じている。ANAホールディングスは、5日と6日の羽田―松山(台北)便について、通常とは別ルートでの対応を検討する。バンコク便や香港便にも影響が生じる可能性がある。日本航空(JAL)も同様の対応をとる。日本郵船は台湾海峡の通航回避を検討するよう注意喚起を出した。

中国は台湾への経済的な締めつけも強めている。中国税関総署は3日、台湾からかんきつ類や太刀魚などの魚類の輸入を停止すると発表した。商務省も同日、台湾向けの天然砂の輸出を止めると発表した。

2日夕には台湾域外からのサイバー攻撃で、台湾総統府のホームページが一時閲覧不能になった。

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滝田洋一
日本経済新聞社 特任編集委員
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ひとこと解説

①韓国では尹錫悦大統領はペロシ議長と会いません。「休暇中」との理由です。が、議長の電撃的な台湾訪問の後だげに、中国の顔色をうかがった、と見るのが自然でしょう。
②日本では岸田文雄首相がペロシ議長と会談します。でも台湾訪問の見通しが伝えられた2日、林芳正外相は「議長の外遊について、日本政府としてコメントする立場にない」と議長の訪台にお茶を濁しました。
③ノーコメントは3日の松野博一官房長官も同様。一方、議長の訪台への報復として中国が行う軍事演習の領域に、日本のEEZが含まれることについて、松野長官は「懸念」を表明したものの、どこか及び腰。与那国島が目と鼻の先なのに中国への忖度が働いていませんか。
2022年8月4日 0:48 (2022年8月4日 1:00更新) 』