インドで人口抑制論「子供2人まで」 雇用・食料に懸念

インドで人口抑制論「子供2人まで」 雇用・食料に懸念
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB269460W2A720C2000000/

『【ニューデリー=馬場燃】人口膨張が続くインドで、政策的に増加を抑制すべきだとの声が出始めている。一部の州では「二人っ子」法案や、子ども2人以下の世帯に対する優遇策などを検討している。国連は2023年に人口が中国を抜いて世界最多になるとの推計を公表しており、人口増に見合う雇用創出や食料確保に懸念が高まる。

「我々には人口抑制策が必要になる。このままでは大混乱をもたらしかねない」。北部ウッタルプラデシュ州のアディツアナス州首相は国連が7月に最新の人口推計を公表した後にこう述べた。

同州の人口は2億人を超え、インドの地域別で最も多い。出稼ぎ労働者を多く抱え、貧しい州の一つとされる。このため、「子供は2人を規範とすることで、人口を安定させる」として、昨夏に人口抑制の草案を作成。現在、議会などを通じて法案化を検討している。
インド政府は7月下旬、議会で「人口抑制に関する法律は検討していない」との見解を示した。ただ、モディ首相は3年前に重要政策を訴える独立記念日の演説で「人口膨張は新しい挑戦だ。成長の妨げになりかねない」と強調。モディ氏が率いる与党「インド人民党(BJP)」に所属する議員のなかには、人口抑制策を主張する動きも出ている。

地方政府レベルでは抑制策に動く。ウッタルプラデシュ州に加え、北東部アッサム州や南部カルナタカ州などでは子供2人以下の世帯を優遇する政策が検討されている。

こうした動きが広がる背景にあるのは、人口増加のペースに雇用の受け皿拡大や、食料・エネルギーの供給などが追いつかないことへの懸念だ。

国連の最新推計によると、22年7月の人口はインドが14億1717万人、中国が14億2588万人。インドの人口は23年に中国を抜いて世界最多になった後、50年には16億7049万人まで膨張する。1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は、インドでは10~20年の間に2.05~2.6で推移している。

世界銀行はインドの15歳以上の労働人口が25年まで毎月130万人ほど増えると予測する。社会の安定には年間800万人規模の新規雇用が必要とみるが、経済成長率は停滞しており、都市部の失業率は高止まりが続く。足元では新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵攻が重なり、減速を強いられている。

中国は国家主導で製造業の強化を進めてきたが、インドは現在も労働人口の半数程度が農業に従事している。このため、インド政府は20年から地場製造業の育成に向け、補助金の支給などで幅広い業種を底上げし、雇用確保につなげようとしているが道半ばだ。食料については、足元で小麦や砂糖の輸出規制を導入している。

人口増加は、異なる宗教間での対立を深める恐れもある。

人口が膨張する要因には、国内で14%を占めるイスラム教徒がさらに増えることがあるとみられている。一方で、ヒンズー教徒の割合は約8割にのぼる。モディ首相が率いる与党BJPはヒンズー至上主義を掲げており、イスラム教徒に対して強権的な政策を導入しがちだ。

ウッタルプラデシュ州などで人口抑制策の検討が進む裏にも、イスラム教徒の増加を防ぐ目的が透ける。インドが今後、人口増に見合う経済成長を実現できない場合、多数派のヒンズー教徒と少数派のイスラム教徒などの間で摩擦が強まるリスクが浮上する。』

インド
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89