[FT]再選目指すブラジル大統領、3男がトランプ氏に接近

[FT]再選目指すブラジル大統領、3男がトランプ氏に接近
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『トランプ前米大統領の側近だった元首席戦略官・上級顧問のスティーブン・バノン氏が2022年のブラジル大統領選を「中南米史上で最も重要な選挙」だと持ち上げた際、隣にいたのはブラジルの極右ボルソナロ大統領に最も近い人物であるブラジル下院議員で息子のエドゥアルド・ボルソナロ氏だった。

エドゥアルド氏(中央)は21年1月6日のトランプ氏支持者による米議会襲撃の際、ワシントンに滞在していた=ロイター

21年に米サウスダコタ州で開かれた会議でバノン氏から「『熱帯のトランプ』の三男」と紹介されたエドゥアルド氏は、父親から全幅の信頼を受けた海外特使兼、父の政治信条を訴える人物として、トランプ一族など海外の保守派と緊密な関係を築いている。

ブラジルでは10月に大統領選が実施される。中年米最大の民主主義国であるブラジルにとって正念場と目されるこの選挙で、2期目をめざす現職のボルソナロ氏は苦戦を強いられている。エドゥアルド氏は父親とともに、ブラジルの電子投票制度に疑問を呈し、最高裁判所を攻撃している。

2期務めた左派ルラ元大統領がほぼすべての世論調査で大きくリードしているが、エドゥアルド氏は「接戦」だと信じて疑わない。

同氏は首都ブラジリアにある手狭な議員事務所で珍しくインタビューに応じ「世論調査は信じない」と言い切った。

最高裁に攻撃の矛先

エドゥアルド氏には上院議員のフラビオ氏とリオ市議のカルロス氏という2人の兄がおり、父親からは「03」と呼ばれている。当初は政界を避けて連邦警察に勤めていたが、14年に30歳でサンパウロ市議になった。

エドゥアルド氏は「約1万ドルを費やして当選した。本当に運が良かった」と振り返った。4年後に下院議員に立候補し、最多の184万票を獲得して当選した。

エドゥアルド氏は親しみやすく礼儀正しいが、発言は寛容とは限らない。父親のライバル候補を厳しく批判するのと同様に、最高裁にも攻撃の矛先を向けている。

最高裁判事は「常に」ルラ氏に有利になるよう介入し、父親に「対抗」していると訴えた。

ブラジル最高裁の権限は他の多くの国よりも大きく、判事が告発して自ら調査に着手できる。国民の多くからは民主主義のとりでとみなされているが、ボルソナロ氏や息子たち、国内の右派にとっては、大統領の保守主義に抵抗する左派のエスタブリッシュメント(支配層)だ。

エドゥアルド氏は「最高裁は独裁体制を敷いてメディアを廃業に追い込み、ジャーナリストを投獄し、市民を国外追放し、政党の党首や政治家を逮捕している」と主張する。「これらはいずれもブラジルで実際に起きた。だがボルソナロ大統領ではなく、最高裁によるものだ」

実例として、軍警察出身のボルソナロ派議員、ダニエル・シルベイラ氏の事件を挙げた。最高裁は4月、最高裁のモラエス判事らを動画で脅迫したとして、シルベイラ氏に懲役9年近くに及ぶ実刑判決を言い渡した。シルベイラ氏は動画で「国民は最高裁に行き、モラエス氏の首根っこをつかんでそのインテリぶった頭をごみ箱に投げ捨てるべきだ」とけしかけた。

エドゥアルド氏はシルベイラ氏を非難するのではなく、最高裁の行為を「最低」だと糾弾した。「(モラエス氏は)自分を被害者だとして自ら告発し、判決を下した。こんな制度はブラジルにしかない」と指摘した。ボルソナロ氏はその後、シルベイラ氏に恩赦を与えた。

海外の支持者の橋渡し役

エドゥアルド氏は研修で米国に滞在した経験があるため英語を流ちょうに話す。さらに本人の政治信条もあり、ボルソナロ氏と海外の支持者の橋渡し役を担っている。ボルソナロ氏は19年、エドゥアルド氏を駐米大使に任命しようとしたが、議会の反対を受けて断念した。

エドゥアルド氏はトランプ氏を「大いに尊敬」していると話す。トランプ氏もそう思っているようだ。エドゥアルド氏の事務所にはトランプ氏の「エドゥアルド氏は偉大な人物だ。素晴らしい父親に関する朗報が間もなく舞い込むだろう。幸運を祈る。ドナルドより」とのメッセージが書き添えられたエドゥアルド氏のウィキペディアのページが額に入れて飾られている。

米在住の資本家でボルソナロ一族に近いジェラルド・ブラント氏は「エドゥアルド氏は米国の保守派の運動をブラジル流にして伝えるたぐいまれなる才能を持つ」とたたえる。「父親の実績を次世代につなげていくだろう」

エドゥアルド氏は21年1月6日のトランプ氏支持者による米議会襲撃の際、ワシントンに滞在していた。だが、この事件は米国の「国内問題」だとしてコメントを控えた。同氏はその後も、バノン氏が登壇した21年8月のサウスダコタの会議などでトランプ一族や側近と会っている。

中南米情勢に詳しいシャノン元米国務次官は、エドゥアルド氏は「米議会襲撃の失敗の原因を詳細に調べていた」との見解を示した。

さらに「エドゥアルド氏らはトランプ氏が暴徒が成功することに託していたのが失敗の原因だと結論付けた。権力の座を保つには公的組織、武装勢力の支援が必要だと考えている」と指摘した。

ボルソナロ氏は7月、各国の駐ブラジル大使との会合で電子投票制度を繰り返し攻撃した。これを受けてバイデン米政権はブラジルの投票制度への支持を表明した。

米国務省の高官は「ブラジルの次の選挙結果は有権者の意志が反映されると100%確信している」と強調した。

ボルソナロ氏は電子化された投票機は不正が起きやすいと主張し、軍の監視下で並行して集計するよう求めている。

銃の所持を強力に支持

エドゥアルド氏は投票制度が変更されず、父親が選挙で敗北した場合にはどうするかとの質問に対し「(投票制度は)改善されると思う」と答えをはぐらかした。「それ以外はすべて予測にすぎない。(支持者が)抗議デモを起こすかどうかは分からない」

当局は暴動が起こるのではないかと懸念している。だがエドゥアルド氏は、ボルソナロ政権下で銃の所持が4倍に増えたことで、ブラジルはより安全になったと考えている。同氏の事務所には銃器のレプリカや「安全な銃のルールその1:携帯すること」との標語を飾り、ルラ氏が大統領に選出されれば、銃を取り締まるのではないかと懸念している。

エドゥアルド氏は「独裁者は国民を脅威とみなして銃を取り上げる。私たちは逆に、自らの身と財産を守る可能性を国民に与える」と持論を展開した。

「03」にとっては、こうした自由を守っていることが父親の主な実績であり、再選される根拠になっている。「父は国民に自由をもたらすために私生活をささげている。自由の闘士だ」と強調した。

By Roula Khalaf, Michael Stott and Michael Pooler

(2022年7月31日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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