[FT]ドイツ銀、内規に反して顧客への不正な税還付を支援

[FT]ドイツ銀、内規に反して顧客への不正な税還付を支援
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB021EH0S2A800C2000000/

『ドイツ最大の金融機関であるドイツ銀行で起きた、欧州史上まれに見る大規模な税金詐欺に関する内部調査で、従業員が法令や内部規定に反して顧客への不正な税還付を手助けしていたことが明らかになった。

ドイツ銀の元・現従業員70人以上が、ケルン検察当局による捜査の対象となっている=ロイター

ドイツ銀の元・現従業員70人以上が、ケルン検察当局による捜査の対象となっている。複数の当局が目下、「Cum-Ex取引」と呼ばれる巨額詐欺の真相究明に大々的に乗り出しており、ドイツ銀が深入りしていた実態が明るみに出た。

英バークレイズや豪マッコーリー、伊ウニクレディト傘下の独ヒポ・フェラインス銀行といった主要金融機関も関係しているCum-Ex取引は、国庫に本来納められるべき税金を長期間にわたって不正に環流させてきた仕組みで、計1500人がケルン検察当局の取り調べを受けている。

配当権利落ち日前後の株式取引を悪用

この問題を巡っては何年も前から捜査が実施されてきたが、7月にフランクフルト検察当局の要請の下、オランダのフォルティス銀行幹部がスペインのマヨルカ島で身柄を拘束されたことで、追及の手が強まった。

2015年から英法律事務所フレッシュフィールズが実施してきたドイツ銀の内部調査結果が、検察当局と共有された。事情を知る複数の関係者の話では、同行従業員の刑事責任を追及していくうえで鍵となる資料だ。

Cum-Ex取引は、配当権利落ち日前後の株式取引を通じて、はなから納めてもいない税金の還付を受けられるようにだます手口で、欧州大陸の国々から多額の歳入を奪ってきた。「Cum」と「Ex」はラテン語でそれぞれ「(権利)付き」「(権利)落ち」を意味する。

内部調査によると、ドイツ銀の税務部門は当初、行員から直接的な実行の許可を求められたCum-Ex取引と距離を置こうとした。同行の税務専門家は、税還付を受けられる仕組みの存在を当時認識しつつも、不正の要素が拭えず、大きく評判を落とす羽目になると主張していた。

それにもかかわらず、同行ロンドン支店の投資銀行員が間接的な方法でCum-Ex取引に関与したことが、内部調査で暴かれた。フレッシュフィールズは「いくつもの法令・内規違反を突き止めた」と明かした。

独財務省は、01~11年に国内で少なくとも39億ユーロ(約5300億円)の税金が不正に還付されたと発表している。

Cum-Ex取引への取引関与認める

フレッシュフィールズの報告書は、Cum-Ex取引に特化した顧客であると知りながらも投資銀行サービスを提供することで、ドイツ銀が何百万ユーロもの手数料を稼いでいたと説明した。同行は、法の抜け穴をかいくぐる違法性が既に指摘されているデリバティブ(金融派生商品)取引もしていた。

ドイツ銀は08~11年に、Cum-Ex取引専門の投資ファンドを有するルクセンブルク・フィナンシャル・グループ・ホールディングの株式を5%保有していた。フレッシュフィールズが13年に取りまとめ、フィナンシャル・タイムズ(FT)が入手した過去の報告書でも、この投資ファンドは投資銀行部門の問題顧客の1つに挙げられていた。

ドイツ銀はFTに対し、「自社会計上ではCum-Ex取引に従事したことはない」とコメントしつつ、「顧客によるCum-Ex取引には関与した」と認めた。Cum-Ex取引の資金繰り支援などの金融サービスを提供したという。

同行は「今日ではこうした資金提供に極めて批判的な見方をしており、この件で当局の捜査に協力している」と説明した。

ドイツ連邦裁判所は21年、Cum-Ex取引が常に不正行為であったという画期的な判決を下し、フレッシュフィールズを含むさまざまな法律事務所からの反対意見を退けた。

フレッシュフィールズが報告書で挙げたドイツ銀の問題点の中には、行員による内規の順守をチェックする内部統制の不備が含まれる。

Cum-Ex取引に関わる部署が「自らの業務を律する」のではなく、「承認条件の範囲内で担当部署が取引するようなシステムを整えておくべきだった」というのが、フレッシュフィールズの見解だ。

フレッシュフィールズは、明らかにCum-Ex取引を専門とし、その資金繰りに多額を借り入れる顧客を容認していたドイツ銀を批判した。ドイツ銀はまた、Cum-Ex取引に使われる株式を提供したり、株価の急変動リスクをヘッジする商品を販売したりしていた。

報告書は「上級管理職がCum-Ex取引の潜在的な買い手への融資に絡む評判上の問題を議論した」うえで「そのリスクを許容可能だと判断した」と指摘した。これらの上級管理職が「Cum-Ex取引の性質を完全に理解し、(一部の顧客が)間接的にCum-Ex取引に関与する可能性を認識していた」と記している。

さらに報告書で、ドイツ銀がCum-Ex取引関連の顧客に対する手数料設定を適切に書面で記録していなかったことが判明した。

内部文書に「今ここにある好機」

フレッシュフィールズの調査によると、ドイツ銀は自ら、法律の抜け穴を使ったデリバティブ取引に手を染めていた。FTが入手した07年の内部文書には「今ここにある好機」と表現されていた。

フレッシュフィールズが調べた複数の内部文書からは、ドイツ銀が配当権利落ち日前後のデリバティブ取引で年間5000万ユーロ稼げると見込んでいたことが分かった。「われわれが株式を物理的に購入するわけではなく、われわれが(税還付の)申請人になるわけでもない」と強調していた。

フレッシュフィールズは、このような取引が内規の「精神と目的」に違反するとの見方を示し、Cum-Ex取引への関与を制するという内規の本来的な意図がほとんど顧みられなかったと結論付けた。

By Olaf Storbeck

(2022年8月1日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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