[FT]ドイツ製兵器、東欧への供与進まず ロシアに配慮か

[FT]ドイツ製兵器、東欧への供与進まず ロシアに配慮か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2926J0Z20C22A7000000/

『ドイツと東欧の同盟国が編み出したウクライナ支援計画は、当初は妙案に思えた。ポーランドなどの国が旧ソ連製の戦車をウクライナに供与する見返りに、ドイツが西側製の装備を補充するという計画だった。
ドイツからポーランドへの戦車などの武器供与は公約通りに進んでいない=ロイター

だが、結束の価値を示し、ウクライナが必要としているすぐに使える武器を速やかに供与するこの構想は、約束が果たされていないと同盟国が非難し合う争いの種になっている。

ドイツにとって、この構想はウクライナに戦車や装甲車両を直接供与し、ロシアをむやみに挑発するのを避ける狙いがあった。ドイツは今週、ポーランド、スロベニア、スロバキア、ギリシャ、チェコと長期にわたり協議しているにもかかわらず、まだどの国とも契約締結に至っていないと認めた。

ポーランドとはこれを機に関係が悪化する恐れがある。ポーランド政府はウクライナに旧ソ連製戦車T72を240両供与し、ドイツから戦車レオパルトを補充してもらえると期待していた。だが、ドイツはまだ20両しか提供していない。

ポーランドは代替戦車を調達するため、米国と韓国に目を向けている。ドイツ当局筋は「ポーランド政府との合意は基本的に機能していない」と明かした。

こうした状況を受け、ドイツの野党は怒りをあらわにしている。キリスト教民主同盟(CDU)所属の連邦議会議員で、独連邦軍大佐だったローデリヒ・キーゼベッター氏は「ドイツは長年築き上げてきた信頼をみすみす失いつつある」と非難した。
ドイツ野党からも怒りの声

ドイツ政府は同盟国やウクライナを裏切ったとの批判を退けている。今週、ウクライナ政府からゲパルト対空戦車15両のうちの3両、多連装ロケットシステム「MARS」3基、自走式りゅう弾砲「パンツァーハウビッツェ(PzH)」3門が届いたと連絡があったと説明した。ドイツ政府は6月にもPzH7門を供与している。一方、PzH2000を製造する独防衛機器大手クラウス・マッファイ・ベクマン(KMW)に対し、ウクライナ政府にPzH2000を追加で100門供与することも認めた。総額17億ユーロ(約2300億円)相当に上る。

ドイツ当局筋は独連邦軍が地対空ミサイル「パトリオット」をスロバキアに配備したとも強調した。もっとも、これは供与したわけではない。スロバキア政府がウクライナに旧ソ連製の地対空ミサイルシステム「S300」1基を供与したことに対する措置だ。

だが、野党の怒りは収まっていない。野党は政府にウクライナへの重火器供与を義務付けた4月の連邦議会の決議を守っていないとして、ショルツ独首相を非難している。

CDUのメルツ党首は「国民と議会はだまされた」と憤る。「(ショルツ氏の)ウクライナ軍支援の発表は検証に耐えられない」と語気を強めた。

ドイツ当局は当初、武器移転の合意締結に自信を示していた。ショルツ氏は5月、ギリシャがウクライナに旧ソ連製の装甲兵員輸送車を供与し、ドイツがギリシャに代替車を補充すると明言した。だが、これは実行に移されていない。
関係者が多すぎるとの弁明

当局者らは3カ国の政府が関わる合意は複雑なため、妥結に至っていないと弁明する。ギリシャ政府の担当者は「関係者が多すぎて、何も実現しないだろう」との見方を示した。ドイツ政府の担当者も「1つの歯車が狂えば全体が機能しなくなる非常に複雑な作業だ」と語った。

ショルツ氏の広報官は25日、移転契約の締結を断念しない方針を示した。「一連の移転契約について相手国と緊密に連携している。協議は非常に建設的で、一部はかなり進展している」と述べた。

実際、ドイツのベーアボック外相は26日、チェコがT72数十両をウクライナに供与した代わりに、ドイツが自国の戦車をチェコに供与することで合意に近づいていることを明らかにした。

もっとも、ポーランドとの状況はこの構想の落とし穴を示している。ドイツとポーランドの国防相は4月、ドイツのラムシュタイン空軍基地で開かれたウクライナに関する国際会議で、武器移転に原則合意した。

だが、ポーランドのブワシュチャク国防相は今週、ポーランド誌「Sieci」とのインタビューで、ドイツからの供与はレオパルト2A4戦車20両にとどまっていることを示した。さらに「すぐに使えるような状態ではない。修理に1年かかるだろう」とも語った。
自国軍の増強に動くポーランド

ブワシュチャク氏は小規模部隊に配備できるよう供与する戦車を44両に増やすようドイツに要請したとも語った。だが、ドイツ政府はこれを断った。ドイツ当局筋は「実際には、連邦軍には供与できるほど多くの装備がない」と漏らす。

ドイツの消極姿勢を横目に、ポーランドは自国軍を増強し、ウクライナに供与した武器を補充する手段を探っている。7月に入り、米国から中古のエイブラムス戦車116両を調達すると発表したほか、27日には韓国と戦車1000両近く、大砲600門以上、戦闘機数十機を購入することで合意したともしている。韓国のK2戦車180両は年内に納入される。

だが、ポーランド政府はドイツに対する反撃に打って出ている。ポーランドのシモン・シンコフスキ・ベル・センク外務副大臣は7月、独誌シュピーゲルとのインタビューでドイツの約束は「詐欺」だったと批判した。

このコメントはロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、ポーランド政府によるドイツに対するとげを含んだ物言いの典型だ。近く退任するドイツのローリングホーフェン駐ポーランド大使は最近、ポーランド主要紙ジェチポスポリタに対し「ポーランド政府の意図を自問している」と吐露した。「ドイツをポーランドの強力な同盟国にしたいのか。それとも内部闘争の身代わりとして私たちを必要としているのか」と疑問を呈した。

それでもなお、武器移転合意を巡る論争により、東欧諸国の一部ではドイツのウクライナ支援は不十分で、約束の履行も遅いとの認識が明確になっている。

公営シンクタンク、ポーランド経済研究所のピョートル・アラック所長は、ドイツの対ウクライナ政策は「まさに言行不一致だ」と指摘する。ポーランドは「(ドイツは)戦争疲れに陥り、経済問題が本格化すれば対ロシア経済制裁を緩和し、ロシアとガス輸入の増加に向けて再び取引するのではないか」との疑念を示した。

By Guy Chazan and Raphael Minder

(2022年7月28日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.』