供給網強化で日米広く連携 半導体や電池、脱中国探る

供給網強化で日米広く連携 半導体や電池、脱中国探る
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『【ワシントン=新井惇太郎】日米両政府は初の外務・経済担当閣僚協議「経済版2プラス2」で4項目の行動計画をまとめた。半導体や電池など重要物資のサプライチェーン(供給網)強化で協力する。ウクライナ危機や中国の強権的な動きで深まる世界の分断をにらみ、原子力を含むエネルギーや食料の安全保障で連携する。インド太平洋地域の有志国の陣営づくりも探る。

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行動計画は①経済秩序を通じた平和と繁栄②威圧と不透明な貸し付けへの対抗③重要・新興技術と重要インフラの促進と保護④供給網の強化――からなる。インド太平洋地域の価値観を共有する国・地域を巻き込んだ経済圏をつくる。

供給網で具体的に挙げたのは半導体、電池、レアアースなどの重要鉱物だ。半導体は回路線幅が10ナノ(ナノは10億分の1)メートル未満の先端品の生産能力の9割が台湾に集中する。台湾有事の危険性をふまえれば供給網の分散が欠かせない。

半導体は中国が力を伸ばすとの見方も強い。ボストン・コンサルティング・グループと米国半導体工業会は、2020年時点で世界の15%を占める中国の生産能力が30年に24%に達するとみる。

萩生田光一経済産業相は2プラス2の初会合後の記者会見で「次世代半導体研究における日本の英知を結集し、新しい研究開発組織を立ち上げる」と表明した。両国で積み重ねてきた次世代半導体の開発・量産に向けた合意の具体化を急ぐ。

22年内に日本に研究開発拠点を新設する。理化学研究所や東京大学などが参加し、25年にも国内で量産できる体制の整備をめざす。回路線幅2ナノメートル相当の先端半導体を共同で研究する。

リチウムイオン電池も中国の成長が著しい。経産省によると、20年の車載用の生産シェアは中国が37%で最大。韓国が36%で続き、日本は21%で3位だった。日本は15年に40%だったのが次第に低下している。行動計画は有志国との連携を主導するため「強力なバッテリーサプライチェーンを構築する」と記した。

電気自動車など脱炭素に不可欠なレアアースも調達の多様化が課題だ。レアアース生産量は中国が世界の6割を占める。鉱石から不純物を除いてレアアースを取り出す精製・分離の工程も中国に集中しているという。

行動計画は「財政支援を含めた協力の重要性」を指摘した。日米とインド太平洋地域で価値観を共有するオーストラリアなどが協力し、自国内で精製工程などを確立するため企業支援を進める。

経済秩序の項目はロシアへの厳しい文言が並んだ。「ウクライナ侵攻がエネルギーおよび食料の市場に及ぼす影響を緩和するために協力する」と盛り込んだ。ロシアは化石燃料の資源大国。小麦の輸出量も世界1位だ。侵攻は資源や食料の価格高騰を招いている。

行動計画は米国のシェールオイルやシェールガスの増産を「歓迎する」と明記した。ロシアに依存しないエネルギー安全保障の確立をめざす。次世代原子炉の研究開発なども念頭に「原子力サプライチェーン」の構築で協力する。

新興国への不透明な貸し付けの項目では、中国の「経済的威圧に対処・対応」すると明示した。中国は新興国のインフラ整備に融資し、返済が難しい場合に権益を取得する「債務のワナ」がかねて指摘されている。

重要・新興技術の保護は輸出管理の協力を盛った。人工知能(AI)やサイバー分野などの新興技術が軍事や人権侵害に利用されるのを防ぐ。中国が少数民族の行動監視に、日米両国の技術を組み込んだ製品を使っているとの見方もある。

経済安保はインド太平洋地域で民主主義などの価値観を共有する国・地域と手を取り合う必要がある。「志を同じくする国々」「パートナー」などの表現をちりばめ、各国に協力を呼びかけた。

陣営づくりは簡単ではない。20カ国・地域(G20)でもロシアとの距離で参加国の溝があり、16日までの財務相・中央銀行総裁会議は共同声明を出せずに終わった。

中国は米国が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)に加盟申請するなど揺さぶりともとれる動きを続ける。日米が経済版2プラス2で改めて連携を確認するのは危機感の裏返しでもある。』