中国、宇宙で繰り返す無責任 ロケット残骸、地球落下

中国、宇宙で繰り返す無責任 ロケット残骸、地球落下
編集委員 小玉祥司
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD289G30Y2A720C2000000/

『中国が宇宙ステーション施設の打ち上げに使った大型ロケットの残骸が7月30日、制御されないまま地球に落下した。幸い被害はでなかったものの、万一、都市部などに破片が落下すれば大きな被害が出る恐れもあった。中国は2021年にも同様にロケットの残骸を落下させ、批判を浴びた。世界的に宇宙利用が活発になるなかで、安全性や持続可能性を軽視した宇宙開発を続けることは国際社会の理解を得られない。
21年にも非難を浴びる

落下したのは7月24日に打ち上げた大型ロケット「長征5号B」の1段目にあたるコアステージと呼ばれる部分だ。建設中の宇宙ステーションに設置する実験施設「問天」の打ち上げに使われた。監視していた米軍によると打ち上げ後は地球を周回していたが徐々に高度を下げて、7月30日にフィリピン近海に落下したとみられる。

中国が建設中の宇宙ステーションのイメージ=新華社・共同

長征5号Bロケットは重さ22トンと巨大で、残骸が地球に落下すると大気中で燃え尽きずに破片が地表まで届く危険性が高い。中国は21年5月にも宇宙ステーション建設のために打ち上げた同じロケットを制御しないままに落下させ、世界的に批判を浴びた。この時は結果的にインド洋に落下したが、今回も同じ行動を繰り返したことは無責任だと批判されて当然だ。

こうしたロケットの落下による被害を防ぐために、使用済みのロケットを制御して危険が少ない海洋などに落下させる取り組みが行われている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)も宇宙ステーション補給機「こうのとり」の打ち上げに用いたH2Bロケットの2段目を制御して、安全な太平洋上に落下させる実験を行った。

NASA長官、中国を批判

しかし中国の長征5号Bは軌道上で制御されていないため、地球に落下する直前までどこに落下するか予測できない。米航空宇宙局(NASA)のネルソン長官は「長征5号Bのような人命と財産の損失の重大なリスクを伴う大型ロケット場合、責任ある宇宙の利用と人々の安全を確保するために情報の共有が重要だ」などと中国を批判した。

中国の実験施設「問天」の内部。打ち上げに利用したロケットの残骸が地球に落下した=新華社・AP

中国外務省は落下前の会見で「ロケットは特殊な技術設計を採用しており、ほとんどが大気圏再突入後に燃え尽きる。航空や地面に危害を与える可能性は極めて低い」としていた。だが中国が20年に同じロケットを打ち上げた際には、破片がアフリカ西部のコートジボワールに落下、家屋が一部壊れるなどの被害が出たと報道されている。今回は幸い被害は出なかったもようだが、万が一、都市部などに落下すれば大きな被害を引き起こす危険があった。

中国は10月に同じロケットで宇宙ステーションに連結する実験施設「夢天」を打ち上げる。これまでと同様にロケットの残骸を制御せずに落下させれば、同じ危険が繰り返される。これまで大きな被害が出なかったからといって、次も被害が出ない保証はどこにもない。

責任は打ち上げ国に

宇宙に関する基本的な取り決めである国際連合の宇宙条約と関連条約では、宇宙に打ち上げた物体によって生じた損害は打ち上げ国が全責任を負うと定めている。ロケットの破片が地上に落下して被害が出た場合、中国はその責任を負わなければならない。

それだけでなく宇宙利用が活発になる中で、打ち上げたロケットの残骸のような「宇宙ごみ」を安全に処理する責任も求められている。ロケットの残骸や使われなくなった人工衛星、その破片などの宇宙ごみは、衝突して新しい人工衛星を破壊したり、今回のように落下して被害を出したりする危険がある。地球を取り巻く宇宙ごみは急速に増えつつあり、持続可能な宇宙利用を進める上でも大きな問題になっている。

中国は「宇宙強国」を目指し、世界で開発に力を入れる(アルゼンチン中西部ネウケン州にある中国の宇宙関連施設)=共同

国連では2007年に宇宙ごみ関するガイドライン、19年には宇宙活動の長期持続可能性ガイドラインを採択して、宇宙ごみ対策をはじめとする宇宙活動の安全を維持する対策を求めている。ガイドラインに強制力はないとはいえ、中国に国際的なルールを率先して守る姿勢がなければ国際社会の信用は得られない。

中国は米国に対抗する宇宙強国を目指すとして、宇宙ステーション建設や月・火星探査などを強力に推進。ロケットの年間打ち上げ回数でも米国やロシアを上回り世界一になった。しかし計画推進ばかりを優先して宇宙を安全に利用する取り組みをおろそかにすれば、悪影響は中国自身にも降りかかる。中国は責任ある行動をとるとともに、国際社会が協力したルール作りにも取り組むべきだ。

Nikkei Views
編集委員が日々のニュースを取り上げ、独自の切り口で分析します。

クリックすると「Nikkei Views」一覧へ
Nikkei Views https://www.nikkei.com/opinion/nikkei-views/?n_cid=DSREA_nikkeiviews 』