ミャンマー国軍、国土掌握進まず 「非常事態」半年延長

ミャンマー国軍、国土掌握進まず 「非常事態」半年延長
目立つ強攻策、外貨対策も迷走
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM29E6O0Z20C22A7000000/

『【ヤンゴン=新田裕一】民主活動家らの死刑執行や日本人映像ジャーナリストの拘束などミャンマー国軍による強攻策が目立ち始めている。2021年2月のクーデターから1年半を経ても国土掌握が進まない焦りが背景にある。民主派が組織した挙国一致政府(NUG)が各地の少数民族武装勢力と連携して武装抵抗を続け、経済面でも国軍は深刻な外貨不足に直面しているもようだ。

国軍は7月31日、国防治安評議会を開き、全権掌握の根拠とする「非常事態宣言」の半年間の延長を決定したと発表した。憲法は同宣言の期間終了後、半年以内に総選挙を実施すると定めており、国軍は早期の国内掌握を迫られている。

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「武器や資金が十分でなくても最後まで戦う」。北西部のザガイン地域で国民防衛隊(PDF)を率いる男性(35)はこう話した。取材に応じたのはタイ北部チェンマイ。戦闘を続けるための支援金を受け取るため2日間かけて国境を越えた。

PDFはNUGの呼びかけで発足した民主派の武装抵抗組織だ。250以上の部隊を組織し、個別に動く500を超すグループとも連携する。総人員は11万~12万人に達するとの分析がある。

NUGが頼みとするのが、長年国軍と戦ってきた少数民族武装勢力だ。PDFの一部は少数民族側の指揮下に入り、共同で軍事作戦を展開する。

東部のカレン民族同盟(KNU)や西部のチン民族戦線(CNF)はPDFと共闘を明言。西部ラカイン州ではアラカン軍(AA)と国軍の間の緊張が高まっている。

PDFのゲリラ攻撃の結果、民族紛争と無縁だった北西部ザガインでも国軍の支配が及ばない地域が拡大する。NUGは軍から「解放」された村に独自の自治組織を設け、病院や学校などの公共サービスを始めた。

ある国軍幹部は「我々の力は衰え、新兵募集もままならない」と嘆く。兵士らの部隊離脱を支援する団体によると、軍や警察の離脱者は1万人を超す。国軍はさらなる脱走を抑えようと、数人単位のグループで相互に監視させ合うなど「締め付けが厳しくなった」(離脱者)という。
30日、最大都市ヤンゴンで抗議デモをする人々=在ミャンマー独立系ジャーナリスト支援協会(AAMIJ)提供

もっとも民主派勢力も課題を抱える。NUGは4400万ドル(約58億円)の戦費を調達したが、国軍に対抗するには不十分だ。PDFのなかには、実際に武器を持って戦えるのは10~20%程度という部隊もある。

NUG幹部は「(中国やタイの)近隣国が少数民族武装勢力への監視を強め、武器の入手が難しくなった」と話す。ロシアのウクライナ侵攻への対応と異なり、米国はミャンマーの民主派側への武器支援には消極的だ。

NUGと少数民族の摩擦もある。NUGは4月、東部カヤ州で自治組織を立ち上げようとしたが、同州のカレンニー民族進歩党(KNPP)が猛反発し、撤回に追い込まれた。アウンサンスーチー氏が率いてきた国民民主連盟(NLD)の出身者は同党の復権を目指すが、少数民族側の目標は自治権の拡大だからだ。

一方、国軍は外貨不足に直面しているもようだ。中央銀行は4月、海外からの送金や外貨預金を1ドル=1850チャットの公定レートで強制的に両替させる通達を出した。6月に外資企業全般を対象外にすると発表したが、1カ月後に撤回した。金融関係者は「必要な外貨を確保できないと判断したのではないか」とみる。

市中両替商が提示する為替レートは31日時点で1ドル=2480チャット前後と、政変前から50%近く下落した。輸入代金の支払いなど海外への外貨送金には、新設の外国為替監督委員会の許可が必要だが「許可はほとんど出ていない」(日系企業関係者)。

原材料の輸入が滞り進出企業は事業縮小を強いられている。』