NPT「非保有国の声聞け」 核禁条約会議のクメント元議長

NPT「非保有国の声聞け」 核禁条約会議のクメント元議長
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN280F50Y2A720C2000000/

『8月1日から米ニューヨークの国連本部で核拡散防止条約(NPT)の再検討会議が始まる。6月に開いた核兵器禁止条約の第1回締約国会議で議長を務めたオーストリア外務省のクメント軍縮局長にNPTに期待することを聞いた。

――今回のNPT再検討会議の意義をどのように見ていますか。

「ロシアの行動を受け、核兵器に再び焦点を当てる国が出てきた。欧州では核軍縮を話し合う時期ではないとの声があがり、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が増えて核の傘への注目も高まっている。制限のない軍備競争の道を進むか、それともこの機会を生かして方向を転換できるか。分かれ目にあるが、後者の可能性を信じたい」

――前回2015年のNPT再検討会議では合意文書を採択できませんでした。

「今回は特に難しい状況に直面している。ロシアのウクライナ侵攻に伴う核使用の脅威、米中の対立といった核保有国間の分断が悪影響を及ぼしかねない。だが、できることはすべてやる必要がある」

――日本の岸田文雄首相が会議で演説します。

「日本は核禁条約の第1回会議には参加しなかったが、将来はもっと関わってくれると期待している。核禁条約ができたことで、各国は核兵器をめぐる立場を問われるようになった。特に橋渡し役を担える国々には、議論に積極的に加わってほしい」

――核禁条約の締約国はNPTにどのような期待がありますか。

「締約各国はNPTを最も強く支持している。6月に採択した合意文書では、核兵器に対する強い懸念と、抑止力として核を支持する政策への反対を明記した。NPT会議でも同様の発言が相次ぐはずだ」

――核保有国と非保有国との間で分断が深まっています。

「非保有国の安全保障問題を取り上げ、彼らの声を聞く必要がある。核の傘の下にある国々ではなく、核兵器に頼らない150カ国が70年以上持ち続けてきた懸念に真剣に取り組まなければいけない。核保有国が非保有国としっかり議論し、核軍縮に取り組めば分断は解消できる」

――イラン核合意をめぐる交渉が停滞しています。

「イラン核合意そのものが素晴らしい成果だったため、現在の状況は悲劇的だ。米国が議論に復帰し、最終合意に至れば、核不拡散に向けて多国間が協力する重要性を示すことにもなる。核不拡散は可能であるとの証明にもあり、NPTに貢献できる。交渉が続くことが非常に大事だ」

――北朝鮮が核開発を進めています。

「大きな課題であり、国際社会はうまく対応できていない。制裁などの圧力や交渉はあまり効果的でなかった。実際、核保有国が核兵器を持つことの重要性を強調しているなかで、北朝鮮にそれをしないよう強いるのは難しい。まずは核兵器がない世界に向けて進む必要がある」

――中国も核増強に動いているとされます。

「最大の核戦力を持つロシアと米国が弾頭数を削減すれば、中国は多国間の軍縮枠組みのプロセスに加わると説明している。全ての核保有国に包括的な核軍縮プロセスに加わってほしい。だが現状、中国が自主的に加わるとは思えない」

(聞き手はニューヨーク=吉田圭織)』