NPT「失敗に終わる」 核軍縮専門家のシリンシオーネ氏

NPT「失敗に終わる」 核軍縮専門家のシリンシオーネ氏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN14F280U2A710C2000000/

 ※ ロシアの振る舞いが、核軍縮問題に与えた影響も、大きい…。

 ※ 核保有国が、「核で恫喝して」、「核非保有国に軍事侵攻した」からだ…。

 ※ そういう「非道・不正義」に対して、「国際社会」なるものは、「手も足も、出せない」でいる…。

 ※ この専門家が言っている、『「日本は核兵器を絶対に持たないと宣言してほしい。中国が攻撃的な行動を繰り返しているなかでも、日本は核兵器を保有しない。そう宣言すれば力強いメッセージになる」』という言に、どれだけの日本国民が賛同するのか…。

 ※ 「核軍縮」よりも、「核で攻撃される可能性を、できる限り引き下げて欲しい。」というのが、大方の日本国民の「民意」じゃないのか…。

『8月1日から米ニューヨークの国連本部で核拡散防止条約(NPT)の再検討会議が始まる。米シンクタンクの外交問題評議会(CFR)で核軍縮の専門家を務めるジョー・シリンシオーネ氏に、会議の焦点や今後の見通しを聞いた。

――NPT再検討会議は7年ぶりの開催です。

「世界は核軍備競争のさなかにある。核保有国は核兵器を増強し、核軍縮や核不拡散の枠組みが崩れるリスクは高い。世界の指導者らが集まって、こうした流れを止めようとする試みは重要だ。だが核なき世界は現実的でなく、この再検討会議は失敗に終わるだろう」
「最大の焦点はロシアによる核兵器使用の脅威だ。現在は1962年のキューバ危機よりも核戦争に近づいている。2022年1月に米国、英国、フランス、ロシア、中国の核保有五大国は、核戦争を起こしてはならないとする共同声明を発表した。だがその数週間後、ロシアはウクライナで核戦争を始める用意があると明言した」

「再検討会議では行動をとるべきだ。しかし中ロやインドが各種議案で反対に回り、結果として合意が取れず、身動きが取れないだろう。核戦争は起きてはならないという基本的な方針すら再確認できない恐れがあり、それはNPTそのものの弱体化を表す」

――バイデン米大統領は長年、核なき世界を呼びかけてきました。バイデン政権の取り組みをどう見ていますか。

「完全に失敗だ。バイデン氏は核軍縮に向けた具体的な行動をとっていない。自分の信念に従うのは、政治的コストが高すぎると計算したのだ。ウクライナ危機や中国の台頭に直面し、核兵器については予算を削れないと判断した」

「バイデン氏はケネディ大統領以来、最も軍縮に詳しい大統領だ。バイデン氏は数十年にわたり、上院で軍縮問題に取り組んできた。条約制定の仕組みなど詳細まで理解していながら、一切行動はとっていない。むしろ軍縮に向けた米国の取り組みは彼が就任してから後退した」

――中国も核増強に動いているとされます。再検討会議でどのような立場を取るでしょうか。

「中国はこのような国際会議で表に出ないようにし、当たり障りのない声明を出すはずだ。核戦力で米ロに出遅れるなか、核軍備に向けた話し合いに参加する理由はないと感じている」

「まずは米ロ両国が核弾頭を1000発ずつ減らし、その後にやっと中国やインド、パキスタンなども含めた多国間の交渉を始める機会ができる。だが米ロが応じないため、軍縮プロセスは停止している」

――中ロやイランは米国と英国、オーストラリアの安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」はNPTの脅威だと主張しています。

「米英が豪州向けに原子力潜水艦の配備を後押しすることで、核を持たない豪州がウラン濃縮技術を得ることになる。これを批判しているのがイランだ。AUKUSはアジア・太平洋における軍拡競争のあらわれでもあり、中国は当然警戒する」

――日本の岸田文雄首相が会議で演説します。どのような期待がありますか。

「日本は核兵器を絶対に持たないと宣言してほしい。中国が攻撃的な行動を繰り返しているなかでも、日本は核兵器を保有しない。そう宣言すれば力強いメッセージになる」

――北朝鮮が核実験の準備を進めているとの指摘があります。

「NPTなどの国際的枠組みは核開発をタブーとし、北朝鮮をある程度は抑制する力がある。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は理由もなく米国を挑発しているのではない。米国が北朝鮮を無視していると感じているのだ。米国に振り返ってもらうために、行動を起こしている」

(聞き手はニューヨーク=吉田圭織)』