習氏「火遊び身焦がす」 米中首脳協議、台湾巡り応酬

習氏「火遊び身焦がす」 米中首脳協議、台湾巡り応酬
対面会談へ調整指示
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN28EB90Y2A720C2000000/

『【ワシントン=坂口幸裕、北京=羽田野主】バイデン米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は28日、2時間20分ほど電話で協議した。習氏は台湾問題への干渉に断固として反対すると伝え「火遊びは必ず身を焦がす」と述べた。ペロシ米下院議長が8月に計画する訪台などを念頭に、強い表現で警告した。

米政府高官は協議後、バイデン氏と習氏が対面で会談する可能性について議論し、両政府で調整するよう指示したと明らかにした。気候変動や感染症など協力できる分野で対話を継続する方針でも一致した。2021年1月に米大統領に就任後、2人は対面では会っていない。

米ホワイトハウスの声明によると、バイデン氏は台湾問題について「米国の政策に変更はない」と表明した。中国本土と台湾が不可分だとする中国の立場に異を唱えない一方、台湾の安全保障にも関与する米国の「一つの中国」政策を堅持する意向を示した。

バイデン氏は5月下旬に台湾有事の際は米国が軍事関与すると明言した。台湾防衛をあいまいにしてきた歴代政権の政策修正と受け止められかねない発言で、バイデン政権として踏襲していく方針を明確にする狙いもあったもようだ。

同時に、台湾海峡の平和と安定を損なう一方的な現状変更の試みに強く反対する考えも改めて伝達した。台湾への軍事威嚇を強める中国の行動にクギを刺した。声明では会談について「米中間の意思疎通を維持・深化させ、双方の違いを責任を持って管理する取り組みの一環だ」と記した。

両首脳が協議するのはバイデン米政権が発足してから5回目で、3月にテレビ会議形式で話して以来になる。バイデン政権が検討している中国製品への制裁関税の一部引き下げ案では突っ込んだ議論はなかったとみられる。

中国国営の新華社によると、習氏は台湾問題について「台湾問題の歴史的経緯は明白で、両岸が同じ一つの中国に属するという事実と現状ははっきりしている。『一つの中国』原則は中米関係の政治的基礎だ」と主張。「台湾独立に向けた分離の動きと外部勢力の干渉に断固として反対する」と強調した。

「台湾問題に対する中国政府と中国人民の立場は一貫しており、中国の国家主権と領土保全を断固として守ることは14億人余りの人民の確固たる意志だ」と言明。「民意に背くべきでなく、火遊びは必ず身を焦がす。米国はこの点をよく認識することを望む」と訴えた。

習氏がバイデン氏に厳しい言葉で台湾問題に言及したのは、7月中旬に表面化したペロシ氏の訪台計画があるとみられる。26日には習氏側近で知られる秦剛中国駐米大使が米政府関係者らを前に「台湾を中国から分裂させようとすれば、中国人民解放軍は必ず断固たる強力な措置をとり、国家主権と領土を守る」と中止を迫った。

中国では秋に共産党幹部の人事を決める5年に1度の共産党大会を控える。習氏は党大会での政権3期目入りに向けて体制固めを進める。8月から長老らの意見を聞く「北戴河会議」が始まる見通しで、党の重要人事の調整が山場を迎える。

米政府内にもペロシ氏の訪問が台湾海峡の軍事緊張を高めかねないとの声がある。中国の政治日程とペロシ氏の台湾訪問の時期が重なれば、習指導部が強硬姿勢に出ざるを得ないと懸念しているもようだ。

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

どんなに会談しても、平行線。中国は中国の立場があり、それを軟化させることができない。だからどんどんと強い言葉を発する。中間選挙を目前にするバイデン大統領もこれ以上中国を刺激したくなくても、下がれない。ただでさえ支持率が低い大統領は弱腰外交と批判されるのを心配している。問題はペロシ訪台について、中国は強い言葉で警告すればするほど、ペロシは台湾に行くしかなくなる。強い言葉の応酬でも、相手の立場を理解しないといけない。
2022年7月29日 6:57

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前嶋和弘
上智大学総合グローバル学部 教授
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ひとこと解説

どうしても台湾問題が私たちにとっては焦点になりますが、カービー報道官がアメリカのメディアで繰り返して言っていうように争点は人権、環境、貿易、ウクライナなどいろいろ。最初から何か解決をするのではなくて、米中が「いつものすれ違い」があることを再確認する外交イベント。ただ、再確認し、中国側が強硬な動きをしないように牽制することが外交上は非常に重要です。台湾情勢については、ペロシ訪台の可能性に対して「軍が難色」というバイデン発言を中国側は利用するかのように、強硬な態度を示していますが、ここで訪台を見送ることは中国を利することにもなります。
2022年7月29日 7:57 (2022年7月29日 8:12更新)』