米国、2四半期連続マイナス成長 4~6月のGDP0.9%減

米国、2四半期連続マイナス成長 4~6月のGDP0.9%減
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『【ワシントン=高見浩輔】米商務省が28日発表した4~6月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は前期比の年率換算で0.9%減り、2四半期連続のマイナス成長となった。世界的な資源の値上がりに伴う物価高で個人消費が減速し、急速な利上げで住宅投資が冷えた。米国は景気後退に陥った可能性もあり、ウクライナ危機に揺れる世界経済はけん引役を失いかねない。

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4~6月は中国の実質GDPも前年同期比0.4%増にとどまった。国際通貨基金(IMF)は22年の世界成長率を3.2%と、前年の6.1%から急減速すると予測している。

国際的には実質ベースのマイナス成長が2四半期続くと「テクニカルリセッション」と呼ばれ、機械的に景気後退局面とみなされる。6月の消費者物価上昇率は前年同月比9.1%と40年半ぶりの水準で、強いインフレにさらされている。景気後退になると、物価上昇が併存する「スタグフレーション」の色合いが濃くなる。

マイナス成長が続いた最大の要因は、GDPの7割を占める個人消費の減速が強まったことだ。4~6月の個人消費は前期比1.0%増と、1.8%増だった1~3月期に比べて減速した。景気の回復で賃金は上がっていたが、ガソリンや食品など身近で購入頻度の多い商品を中心に物価が急激に上がり、購買力が低下している。

個人消費の先行指標として知られる米コンファレンス・ボードの消費者信頼感指数はこの1年余りで米リーマン危機などに次ぐ落ち込みを記録している。

米国では新型コロナウイルス禍からの回復で需要が過熱したところで、ロシアのウクライナ侵攻に伴ってエネルギーや食料が値上がりし、インフレに拍車がかかった。米連邦準備理事会(FRB)は利上げでインフレの沈静化を狙うが、まだ落ち着く兆しは見えていない。

一方で急激な利上げはGDPの主要な需要項目である住宅投資や設備投資の逆風となっている。

4~6月期の住宅投資は前期比14.0%減と大幅な落ち込みになった。1~3月期は0.4%増だった。30年固定の住宅ローン金利は21年初めの2.7%から22年6月下旬には5.8%と08年11月以来の水準まで跳ね上がり、購入者から見ると物件の割高感が強まっている。

FRBは新型コロナ禍からの回復局面で高騰した住宅価格を問題視していたが、今では需要を冷やしすぎる「オーバーキル」が懸念される。

設備投資も0.1%の減少に転じた。1~3月期は10.0%の増加だった。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、銀行融資の金利上昇や人手不足などを理由に、企業が生産設備の建設プロジェクトを延期している例が複数の参加者から報告された。

米国で景気後退の懸念が一気に高まったことで、11月に中間選挙を控えるバイデン米政権やFRBは難しい立場に置かれる。個人消費を冷やすインフレを抑制するために利上げを急げば、景気の悪化を一段と深刻にする恐れがある。一方で財政出動や金融緩和といった景気刺激策は、高い水準にあるインフレを一段と加速させかねない。

国際通貨基金(IMF)はインフレ抑制を優先しつつ、低所得層などに的を絞った財政支援をすべきだと主張している。

米国では全米経済研究所(NBER)が景気後退を正式に認定する。2四半期以上続いたマイナス成長は第2次世界大戦後の1949年以降で計10回あり、すべてが正式に景気後退だったと認定されている。終戦直後の47年は認定されていないなど、例外はある。

NBERは景気後退を「経済全体に広がり、数カ月以上続く経済活動の著しい低下」と定義している。今回は景気後退の認定で重要視される失業率が歴史的な低水準になっている点が異例だ。イエレン米財務長官は24日のテレビ番組で「リセッションは経済が広範囲にわたって弱くなることで、今のところそれは見られていない」と述べていた。

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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サービス消費はコロナ危機からの回復もあって強く伸びていることから米国経済がすごく落ちこんでいるわけではないようです。労働市場が引き続き堅調であることも米国経済がそれほど悲観する状況になっていないといえます。ただし企業の設備投資(知的財産への投資は大きくく伸び続けていますが、構造物や設備などは下落しています)や住宅投資がマイナスに転じているため、景気が減速していることは間違いないようです。今後の消費の動向をみきわめる必要があります。
2022年7月28日 21:51

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蛯原健
リブライトパートナーズ 代表パートナー
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これをもってリセッション(景気後退)入りか、答えはノー。あくまでまだ「テクニカル」リセッション。では何をもってリセッションになるかと言えば、全米経済研究所という非営利、無党派の組織による決定による。そのエコノミスト8名からなる委員会が「数か月以上続く経済全体に広く渡った大幅な経済活動の低下」であるか否かをもって判断、宣言しはじめてリセッションが認定される。いつの時代も政権は自らの代で不況を歴史に刻みたくはない、故に現政権もイエレン財務長官やホワイトハウス報道官ら皆否定している。実際労働市場の底堅さから一理あると言えなくはないものの、これでその足音はドアのすぐ向こうまで来たというのが実態だろう。
2022年7月28日 23:34

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滝田洋一
日本経済新聞社 特任編集委員
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2四半期連続のマイナス成長です。普通の定義だと「リセッション(景気後退)」です。でもインフレ抑制のために景気にブレーキを踏んでいるバイデン政権にとっては、いかにも間が悪い。イエレン財務長官が今の米国はリセッションではないと事前にクギを刺していたのも、この発表を見越してのことだったのでしょう。前日のFRBの利上げに際しても支出や生産のもたつきを認めつつ、雇用は堅調といった言い回しをしていました。金融・株式市場は米景気後退によって、FRBが来年にも利下げに向かうとの見方をとっていますが、インフレを抑えたい米当局はそんな先取りシナリオは牽制したい。当局と市場の間では熾烈な駆け引きが続きます。
2022年7月28日 21:45 (2022年7月28日 22:31更新) 』