日米経済版2プラス2の目的は 経済安全保障の閣僚協議

日米経済版2プラス2の目的は 経済安全保障の閣僚協議
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA26EF30W2A720C2000000/

『日米両政府は29日、ワシントンで経済版の閣僚協議「2プラス2」の初会合を開く。中国を念頭に、半導体をはじめ重要物資のサプライチェーン(供給網)の強化などについて議論する。なぜ今、何のために経済安全保障を議論するのか。3つのポイントにまとめた。

・どのような枠組みか?
・何を議論するのか?
・意義と目的は?

(1)どのような枠組みか?

日本側は林芳正外相と萩生田光一経済産業相、米国側はブリンケン国務長官とレモンド商務長官が参加する。2022年1月に岸田文雄首相とバイデン米大統領がオンライン協議した際に新たに設けると合意した。

これまで「2プラス2」と言えば、一般的に外務、防衛担当の閣僚協議を指してきた。日米の場合、日本は外相、防衛相、米国は国務長官、国防長官が出席者だった。

経済閣僚が参加する新たな枠組みを設けたのは、軍事力を土台とした従来の安全保障の考え方が変化してきたためだ。

半導体や人工知能(AI)といった技術の進展で、民生品のドローンやカメラなども軍事転用できるようになった。経済と安全保障は以前より密接に結びついており、同盟国の日米間で連携する重要性が高まっているとの問題意識がある。

(2)何を議論するのか?

半導体など重要物資のサプライチェーンの強化が主要議題の一つとなる。

車や家電など様々な電子機器に使う半導体は、調達が滞れば産業に大きな影響が出る。新型コロナウイルスの感染拡大以降、世界的に半導体が不足し、日米両国の企業も自動車など幅広い製品で減産を迫られた。代替が難しい部品を安定的に調達する重要性が改めて浮き彫りになった。

世界の先端半導体の生産能力の9割は台湾に集中する。中国は台湾の武力統一も辞さない構えを見せている。仮に台湾有事になれば半導体の安定的な確保は難しくなる。

供給網の分散や多様化は喫緊の課題といえる。日米両政府は次世代半導体の設計と量産化に向けた共同研究を始める方針で、具体的な道筋を議論する。

量子暗号やAIなどの新興技術の流出を食い止め、保護する方針も確認する。顔認証や監視カメラなど、人権侵害につながりかねない技術の輸出管理についても話し合う見通しだ。
新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族の人権抑圧の問題が念頭にある。中国が少数民族の行動の監視に、日米両国の技術を組み込んだ製品を使っているとの見方がある。

ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ、エネルギー安全保障についても意見を交わす。日本は液化天然ガス(LNG)のロシア依存度を引き下げるため、米国にLNGの増産を働きかけてきた。ウクライナ危機で揺らいだ小麦など食料の安定供給に向けた課題についても議論する。

(3)意義と目的は?

自由や民主主義、人権や法の支配といった共通の価値観を共有し、インド太平洋地域で国際秩序づくりを主導する思惑がある。経済的にも軍事的にも地域で影響力を高める中国を念頭に対抗軸をつくる。日本にとっては経済、安全保障の両面で米国によるアジアへの関与をつなぎ留める意義もある。

米国はインド太平洋経済枠組み(IPEF)も主導し、経済面でのアジア各国との連携強化を模索する。中国との経済的な結びつきが強いアジアには米中との間合いの取り方に苦慮する国も多い。つなぎ役としての日本の役割は大きい。

戦後、日米両国は日米安全保障条約にもとづいて同盟関係を築きながらも、日本の経済成長にともなって自動車や繊維、半導体などの分野で摩擦も繰り返してきた。経済、安保の両面で協力を深める経済版「2プラス2」の発足は、新たな日米同盟の一歩とも言える。

(ワシントン=新井惇太郎、加藤晶也)

【関連記事】

・日米、次世代半導体の量産へ共同研究 国内に新拠点
・経済版2プラス2、国際基準づくり議論 29日に初会合

よくわかる解説コンテンツはこちら
https://r.nikkei.com/topics/topic_column_21100500/?n_cid=MCH997 』