北朝鮮、韓国と対決姿勢 金正恩氏「尹政権は最も非道」

北朝鮮、韓国と対決姿勢 金正恩氏「尹政権は最も非道」
しぼむ対話、南北緊張へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM283G60Y2A720C2000000/

 ※ 今日は、こんなところで…。

『【ソウル=甲原潤之介】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記が韓国との対決姿勢を鮮明にした。朝鮮中央通信によると、27日に朝鮮戦争休戦69年の記念行事で演説し、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の防衛政策を名指しで非難した。韓国は米国と8月の合同軍事演習を通じて抑止力強化を打ち出す方針だ。南北の緊張が一段と高まるのは確実だ。

韓国大統領府国家安保室は28日、金正恩氏の演説について「大統領の実名をあげて韓国政府を威嚇する発言をしたことに深い遺憾の意を表明する」というコメントを発表した。そのうえで「いかなる挑発にも強力に対応する態勢を整える。北朝鮮が対話の道に出るよう促す」と表明した。

大統領に5月就任した尹氏を金正恩氏が名指しで批判したのは初めて。演説で「尹錫悦が政権をとる前後に言い放った妄言を正確に記憶している。歴代のどの保守政権をもしのぐ極悪非道な同族対決政策に執着し、朝鮮半島を戦争の境目に導いている」と述べた。

尹氏は文在寅(ムン・ジェイン)前政権の南北融和路線を転換し、米韓同盟による北朝鮮の抑止を重視する政策を採用する。米国の核兵器で相手の核使用を抑える「拡大抑止」の拡充も掲げる。8月下旬には4年ぶりに野外訓練を交えた米韓合同軍事演習を計画する。

金正恩氏はこうした尹政権の方針に反発した。相手による攻撃の兆候を捉えて基地などを先に攻撃する「先制打撃」や、米国の戦略爆撃機を韓国に展開する議論などを具体的に取り上げた。先制打撃、ミサイル防衛、相手への報復という3段階で防衛する韓国の「3軸体系」にも触れ、「危険な試みだ」と強調した。

そのうえで自らを「核保有国」と明示し、「絶対兵器(核兵器)を保有するわが国を相手に軍事行動をあれこれ言うのは危険な自滅的行為だ」と述べた。韓国が先制打撃に出るならば「尹政権と彼の軍隊は全滅するだろう」と警告した。

金正恩氏は尹政権発足後、南北関係に言及していなかった。だが、27日の演説で立場を鮮明にしたことで、南北間の対立は決定的になった。

韓国・慶南大の林乙出(イム・ウルチュル)教授は「韓国と米国が軍事演習を頻繁に実施すればするほど、北朝鮮はより深刻なレベルの安全保障の危機をもたらすだろう」と指摘する。「韓米両国が強硬姿勢のほかに明確な解決策を提示できておらず、朝鮮半島情勢はさらに悪化せざるを得ない」との見方を示す。

過去の例を見ても、韓国の保守政権下では南北の緊張が高まりやすい。李明博(イ・ミョンバク)政権だった2010年には北朝鮮が韓国の延坪島(ヨンピョンド)を砲撃する事件が発生した。韓国の兵士2人と民間人2人が死亡した。

韓国の政治情勢も朝鮮半島の緊張を高める要素になる。尹政権の支持率は発足時の50%台から30%台に下落した。支持率の低迷が続く場合、保守層の関心を維持するうえで北朝鮮との対決姿勢を緩めるのは困難になる。

金正恩氏は「最も大きな危険の前に立たされた政権と言われるのを避けたければ、最初から我々を相手にしないことが得策だ」と述べた。尹政権を対話の相手とみなしていない事実は、こうした発言からもうかがえる。

北朝鮮による7回目の核実験に向けた布石との見方もある。日米韓はすでに、北朝鮮が準備を終えたとの認識を共有している。

金正恩氏は演説で、朝鮮戦争を「民主主義陣営と帝国主義陣営の対決」と表現した。北朝鮮を「民主主義」、米国を「帝国主義」と位置づけたうえで「米国とのいかなる軍事的衝突にも対処する用意ができている」と語った。

韓国・漢拏(ハンラ)大の鄭大珍教授は、金正恩氏が演説を通じて「北朝鮮の観点による国際認識を強調し、自らの軍事活動の正当性を確保しようと努めた。追加の核実験を控え、米国と対決する局面だという見方について、中国とロシアにも共感してもらう狙いがある」と解説する。 』