米韓野外訓練、8月に4年ぶり再開 同盟再構築打ち出す

米韓野外訓練、8月に4年ぶり再開 同盟再構築打ち出す
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『【ソウル=甲原潤之介】米韓軍は8月下旬に実施する合同演習で、野外での機動訓練を4年ぶりに再開する。野外訓練を交えた大規模演習は米朝の非核化交渉直前の2018年4月を最後に中断している。野外訓練の再開は韓国の政権交代を機に同盟関係を強化し、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を抑止する米韓の戦略の一環でもある。

韓国の李鐘燮(イ・ジョンソプ)国防相が22日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に合同演習の方針を説明した。8月下旬~9月初旬の期間中に陸海空軍あわせて11の野外機動訓練を実施すると伝えた。尹氏は「しっかり進めてほしい」と指示した。

米韓は17年まで合同軍事演習を毎年、春と夏~秋の2回開いていた。18年6月の史上初の米朝首脳会談を踏まえ、同年秋の演習を中止した。19年以降はコンピューターシミュレーションを用いた指揮所訓練にとどめている。

5月に発足した尹政権は文在寅(ムン・ジェイン)前政権の南北融和路線からの転換を打ち出している。尹政権にとって初めての米韓合同軍事演習となる8月の訓練を同盟強化の象徴として位置づける。

米韓は今回の演習を「乙支(ウルチ)フリーダムシールド(自由の盾)」と名付けた。17年までの「乙支フリーダムガーディアン」との呼称を引き継ぎつつ修正し、米韓の結束を再構築する意図を込めている。

野外訓練の再開の背景には、北朝鮮に対する米韓の危機感もある。北朝鮮は22年に入り少なくとも28発の弾道ミサイルを撃ち、すでに年間の発射数で過去最多を更新した。変則軌道や複数種の同時発射など新たな戦闘技術を試しており、近く7回目の核実験に踏み切る兆候もある。

米韓が訓練を控えていた間に非核化交渉は頓挫し、北朝鮮は軍事技術を高めた。李国防相は「高度化する北朝鮮の核・ミサイルに対する能力の補完は国防の最優先課題だ」と話す。

合同軍事演習の中心になるのが米韓の陸軍の戦闘訓練だ。砲弾の運用やヘリコプターからの射撃、前方部隊への補給、爆発物処理などについても共同での対処の手順を確認する。
敵が保有する核や生物・化学兵器などの大量破壊兵器を共同で除去する訓練も予定されている。17年に実施した際は北朝鮮の生物・化学兵器の施設に模した建物に入り、敵を制圧して兵器を除去するシナリオを採用した。北朝鮮の核の技術向上により訓練の重要性が高まる。

軍事演習では米韓の空軍機による訓練も予定されている。核兵器を搭載できる戦略爆撃機などを登場させるかどうかが焦点になる。海軍は海上から敵の動きを監視する「哨戒作戦」の演習をする。

尹政権は北朝鮮のミサイル攻撃に対し「3軸体系」と呼ぶ3段階の防御態勢の構築をめざす。①相手の発射兆候を捉えて先制打撃する「キルチェーン」②発射された後に空中で迎撃するミサイル防衛③攻撃を受けた後の大量反撃報復――だ。

北朝鮮の能力が上がるなか、韓国側にも新たな軍事技術が必要になる。そのうえで米軍が持つ探知や攻撃の能力も求められている。韓国政府は米韓両軍の様々な階層で訓練を重ね、連携を円滑にすることが急務とみる。

北朝鮮は反発しそうだ。北朝鮮外務省は21日、同省軍縮・平和研究所の副所長による英国メディアのインタビューでの発言をホームページで公開した。米韓合同軍事演習について「我々に核先制打撃を加えるための実戦演習なのは明らかだ」と批判した。』