感染対策を怠ると懲役3~4年 中国ゼロコロナの恐怖

感染対策を怠ると懲役3~4年 中国ゼロコロナの恐怖
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM184CN0Y2A710C2000000/

『中国政府が新型コロナウイルス対策で、厳しい隔離やPCR検査を駆使する「ゼロコロナ」政策。その恐怖を象徴するのが、ルールに違反した住民らが逮捕される場合があることだ。東北部の遼寧省大連市では会社の幹部らが懲役3~4年ほどの実刑判決となった。一体何が起こったのか。

大連市で相次ぎ懲役判決

「コロナに関する違法な犯罪は法律に従って厳重に対処する」。大連市中級人民法院(地方裁判所に相当)の担当者らは5月17日、記者会見でこう強調し、3つの事件を説明した。
日本の地裁に相当する大連市中級人民法院(20日、遼寧省大連市)

最新の事例が、地元の裁判所が同日、公務員ら9人に一審判決を言い渡した事件だ。まず大連市内の一地域である荘河市の市場監督管理局・副局長である那氏が懲役3年3月、その部下の鄭氏が懲役3年となった。

荘河では2021年11月4日、地元企業の大連科強食品の冷凍倉庫で働く男性の感染が確認された。荘河を中心に感染が広まり、大連市全体の感染者は11月27日までに約350人に増えた。

那氏と鄭氏は科強食品の冷凍倉庫を監督する立場。一審判決は「2人の被告は倉庫内で貨物の消毒やPCR検査を正しく実行せず、ウイルスを外部に拡散させた」として、公務員らの職務怠慢罪を認定した。

裁判所は消毒やPCR検査を科強食品から請け負った外部企業3社などの幹部ら7人にも、それぞれ懲役1年3月~4年を言い渡した。感染防止を妨害した罪などを認定した。

大連では20年にも2つの事件が起き、二審判決が終了した。水産品加工の大連凱洋世界海鮮について、判決は「同年6~7月に輸入海産品に対するPCR検査を怠った。熱などのコロナの症状がある従業員を自由に出歩かせ、感染を広げた」と認定。4人の担当者らは懲役3年3月~4年6月となった。

港で貨物の積み下ろしをする会社の大連浩涵企業管理も20年12月、従業員の隔離やPCR検査を怠った罪が認定され、幹部ら3人が懲役3年3月~4年9月となった。
コロナが法定感染症になり、罪を適用

最高人民法院(最高裁に相当)によると、中国各地で大連と同じような有罪事件が起きた。20年1月に衛生当局が新型コロナを「法定感染症」に指定した結果、「職務怠慢罪」「感染症の防止を妨害した罪」などが適用されるようになった。当局は「新型コロナ防疫方案」と題したマニュアルを定期的に更新し、隔離などの方法を細かく規定している。市民や企業は法律違反を避けるため、これを順守しなければならない。

もっとも大連市の3事件は判決文が非公開で、量刑などが適切なのかを客観的に検証できない。同市に住む30代中国人男性は「市民や企業に警告するため、見せしめとして厳しい判決を出したのでは」と推測する。

中国ではコロナが広がった19年12月以降、感染抑え込みに失敗した各地方政府の幹部らが相次ぎ更迭や停職、免職となった。「政府の幹部らはクビが危うくなるのを恐れ、感染対策に必死」(30代男性)とみられ、政府には逮捕や実刑をちらつかせ、防疫ルールを厳守させる狙いがありそうだ。

中国のゼロコロナ政策には海外から批判も出ているが、中国共産党の幹部人事を決める党大会を22年秋に控え、習近平(シー・ジンピン)指導部はなお同政策を継続する構え。経済は冷え込み、住民の不満は高まるばかりだ。

(大連=渡辺伸)

[日経ヴェリタス2022年7月24日号掲載]
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