家やモノに手が届かない米消費者の憂鬱(NY特急便)

家やモノに手が届かない米消費者の憂鬱(NY特急便)
米州総局 大島有美子
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN26D7B0W2A720C2000000/

『26日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比で228ドル(0.7%)下落した。前日の取引終了後に小売り大手ウォルマートが2023年1月期の通期業績予想を下方修正し、消費関連銘柄に売りが広がった。26日発表の新築住宅の販売件数は2年2カ月ぶりの低水準に落ち込み、投資家心理に重くのしかかった。インフレで家やモノの購入をためらう消費者の憂鬱が数字に表れ始めた。

「メッセージは明白だ。インフレが消費者をむしばんでいる」。米調査会社データトレックのニコラス・コラス氏は26日、ウォルマートの下方修正を受けてこう述べた。ウォルマートの株価は7.6%下げて121ドルとなった。米銀ウェルズ・ファーゴは23年末のウォルマートの目標株価を150ドルから130ドルに引き下げた。

規模の大きさで効率的な経営をする「ウォルマートで利益を確保できないのであれば、他の小売りはどう利益を上げるのか」(コラス氏)。ターゲット(3.6%安)、ホーム・デポ(2.6%安)と連想売りが広がった。

米調査会社コンファレンス・ボードが26日発表した7月の消費者の景況感は3カ月連続で低下した。米オアンダのエドワード・モヤ氏は「雇用が減速し、収入への期待が減っている」ことに着目する。消費者が収入の見通しに悲観的になれば、おのずと支出は絞られる。
6月の新築一戸建て住宅販売では、販売件数は前年同月比17.4%減、販売価格(中央値)が40万2400ドルと前月比で9.5%下落した。米西部や北東部など「特に生活コストの高い地域での販売減が顕著だ」(LPLファイナンシャルのジェフリー・ローチ氏)。

米インターネット不動産仲介のレッドフィンによると、6月の住宅の購入契約件数のうち、14.9%が解約された。解約は新型コロナウイルス禍に入った直後の20年4月(16.4%)以来の高水準で、5月(12.7%)から急増した。

米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によると、30年固定の住宅ローン金利は6月下旬に5.8%に達した。3カ月間で1.4ポイントの上昇だ。レッドフィンのエコノミスト、テイラー・マール氏は「金利急上昇でローンが組めなくなり、住宅購入を諦めざるをえなくなった人もいる」と指摘する。

住宅購入をためらう消費者の需要は賃貸住宅へと向かう。不動産物件情報を提供するリアルター・ドット・コムによると6月の全米主要50都市の家賃の中央値は1876ドルと前年同月比で14%上昇し、過去最高を更新した。「上がってもなお、購入するより月額の費用負担は抑えられる」(同ジョエル・バーナー氏)

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は27日、米連邦公開市場委員会(FOMC)後に記者会見する。市場を覆う消費への不安にどう向き合うのか。「FRBの心境変化やメッセージの変更は、27日の会見では見られそうもない」。米JPモルガン・アセット・マネジメントのデービッド・ケリー氏はこうみる。「経済が弱まっていることは認めても、インフレに断固として戦う姿勢を見せる義務感を持っている」

(ニューヨーク=大島有美子)』