中南米通貨下落、資源安や左派政権移行で

中南米通貨下落、資源安や左派政権移行で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN26E540W2A720C2000000/

『【サンパウロ=宮本英威、メキシコシティ=清水孝輔】外国為替市場で中南米の通貨が対ドルで下落している。世界的なドル高に加え、世界経済の先行きを懸念した資源価格の下落や左派政権によるビジネス環境の悪化が懸念されているためだ。政府当局は利上げや市場介入で通貨の下支えに動いているが、輸入物価上昇による一段のインフレ加速も警戒されている。

米連邦準備理事会(FRB)が利上げ開始を決めた3月半ばと今月25日の対ドルの為替相場を比較すると、コロンビアの通貨ペソは17%、チリのペソは15%、ブラジルのレアルは5%の通貨安が進んでいる。

チリの場合、世界最大の生産量を誇る銅の価格下落に伴い、通貨の下落が進んだ。経済紙ディアリオ・フィナンシエロによると、通貨ペソは14日に終値で1ドル=1051ペソと、過去最安値をつけた。

国際指標となるロンドン金属取引所(LME)の先物価格は3月の史上最高値から3割ほど下落している。ボリッチ大統領は「我々には手の届かない問題もあるが、チリ経済を前進させるために可能なすべての施策を行う」と話す。

中央銀行は18日から9月末まで、250億ドル(3兆4000億円)規模で為替介入を実施する方針を示した。足元ではペソ相場はやや戻しているが、先行きは油断できない。3月に発足した左派のボリッチ政権は鉱業分野の増税に動いており、経済界からは懸念する声もある。

コロンビアは6月の大統領選で左派のペトロ氏が勝利し、8月に就任する次期大統領に決まった。選挙戦では石油探査の停止や自由貿易協定(FTA)の見直しを主張しており、ビジネス環境の悪化への警戒が膨らむ。

ペトロ氏は今月上旬、ツイッターへの投稿で「いまドルを購入している人は価値の減少に直面することになる」と通貨安を口先介入でけん制したが、効果は限定的にとどまっている。ブラジルの場合は10月の大統領選に向けて左派のルラ元大統領が優位にたっている。
一方、メキシコペソは対ドルでやや上昇している。輸出の約8割が向かう米国の需要が旺盛なことが背景にある。2022年1~6月に米国への自動車の輸出台数は約110万台と前年同期比で3.6%増えた。半導体不足の影響は残るが、生産は回復基調にある。

メキシコではロペスオブラドール政権が新型コロナウイルスに対応した財政出動を抑えたため財政の悪化が抑えられており、「経済の基礎的条件が良い」(メキシコ銀行のヘラルド・エスキベル副総裁)ことも通貨が底堅く推移する理由となっている。

中南米の主要な中央銀行はインフレ対策としてFRBに先行して相次ぎ利上げしてきた。ブラジルは11会合、チリは9会合、コロンビアは7会合連続で利上げを実施してきた。金融引き締めによる経済への打撃も目立ち始めており、今後の上げ幅の余地は狭まっている。

FRBが利上げペースを一段と引き上げた場合には金利差は縮まるため、中南米通貨にとっては下落要因となる。米シティーグループは今年12月時点の中南米通貨について25日時点よりも対ドルで下落すると予測している。各国のインフレは依然としておさまる状況にはなく、輸入物価の上昇がさらにインフレを悪化させる可能性もある。
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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

米国など多くの先進国の中央銀行がインフレ抑制のために利上げをしている中で、新興国からの資本流出が起きています。ドルの全面高により多くの国で通貨安が起きています。新興国では金利の大幅な上昇により設備投資が抑制され景気減速に拍車をかけているだけでなく、コロナ危機後の企業の債務拡大もあって利上げによる債務返済負担が大きくなっています。先進国でも同じような状況ですが、財政政策の余地が乏しく、資本流入に依存する新興国のほうが状況は深刻です。中国の景気減速もコモディティ価格の低下に影響しており、コモディティ価格の高騰で資本流入の恩恵をうけていたラ米では逆風が吹き始めており、政治的不安も懸念されます。

2022年7月27日 7:37 (2022年7月27日 7:53更新)』