米中間選挙は予想外の接戦か 有権者投票動向の最新分析

米中間選挙は予想外の接戦か 有権者投票動向の最新分析
https://news.yahoo.co.jp/articles/236307a38fe0cea620cb3d24de377c4a4b43e1a3?page=1

『11月に迫った注目の米中間選挙で、大方の予想に反し、民主、共和両党が「互角」になりつつあるとの最新世論調査結果が発表され、大きな関心を集めている。果たしてその背景に、何があるのか――。
民主、共和の伝統的支持基盤に変化

 米中間選挙の行方については、つい数カ月前まで、共和党が下院で「地滑り的勝利」、上院も「奪還の公算」との見方が支配的だった。

 その理由として、(1)例年、中間選挙では野党が極めて有利になる、(2)バイデン民主党大統領のかつてない不人気、(3)ガソリンなど生活物価の異常な高騰、(4)経済が減速から後退に向かいつつある――などが指摘されてきた。

 こうした中、米ニューヨーク・タイムズ紙は12日、中間選挙に関し、選挙動向の詳細分析で定評のあるシエナ・カレッジ(Siena College)と合同で実施した注目すべき調査結果を発表した。それによると、過去の民主党、共和党の伝統的支持基盤に変化が生じ、新たな傾向が見られることが明らかになった。

 その内容は以下の通りだ。

 調査ではまず、すでに民主、共和のいずれかの党に登録を済ませた有権者849人(Registered Voters=RV)を対象に、中間選挙に向けて「議会でどちらの党の支配を望むか」を聞いたところ、民主党支持が「41%」だったのに対し、共和党支持が「40%」で、民主党支持の有権者が1%上回った。

 中間選挙では例年、野党(今年は共和党)が常に圧倒的に有利とされてきただけに、この数字は、極めて異例と受け止められている。

 次に、投票所に行くとみられる有権者(Likely Voters=LV)に限定して同じ質問をしたところ、共和党支持が「44%」、民主党支持が「43%」で、共和党が逆に1%だけ民主党支持を上回った。

 しかし、もともと今年の中間選挙では、「共和党有利」は織り込みずだっただけに、民主党をリードしても意外感はなく、むしろ、その差がわずか1%しかなかったこと自体がニュースとなっている。

 調査では、さらに対象者を「白人で大学卒以上」と「黒人以外のマイノリティ」有権者に分けて支持政党を聞いたところ、民主党に対する「白人で大学卒以上」の支持(57%)が「黒人以外のマイノリティ」有権者の支持(41%)を初めて上回った。

 これまでの議会選挙では、最近の2016年選挙含め、民主党は常に、マイノリティ有権者の70%以上の支持を獲得してきたことで知られる。逆に共和党は過去、「白人で大学卒以上」の有権者の支持で民主党を上回ってきたが、今回、初めて民主党にリードされた。』
『このほか、有権者を年齢別に分析したところ、「18~29歳」では、民主党支持「46%」、共和党支持「28%」、「30~44歳」でも、民主党支持「52%」、共和党支持「31%」で、いずれも民主党支持が大きく上回った。しかし、「45~64歳」では、共和党支持「50%」、民主党支持「35%」、「65歳以上」では、共和党支持「45%」、民主党支持「39%」と逆転している。

 男女別の分析結果では、女性では、民主党支持が「44%」で、共和党支持の「34%」を大きくリード。逆に男性では、共和党支持が「47%」に対し、民主党支持は「38%」だった。

 また、「学歴別」の分析結果によると、「大学卒以上」では、民主党支持が「56%」も占めたのに対し、共和党支持は「32%」にとどまった。逆に、「高卒以下」では、共和党支持が「45%」とリードしたのに対し、民主党支持は「33%」だった。
変化しつつあるトランプ支持層

 この点に関連して、注目されるのが、共和党内に依然大きな影響力を持つといわれるトランプ支持層の実態だ。

 これまで米メディアが繰り返し報じてきたところによると、トランプ支持者の大半は、ペンシルバニア、オハイオ、ミシガンなど中西部ラストベルト(錆びついた工業地帯)や保守的南部諸州に居住する大卒以下の白人で占められてきた。

 ところが、国勢調査局などのデータによると、全人口に占める「Bachelor(学士号)取得者」は、20年度「30.4%」から21年度に「37.4%」となり、年々増加傾向にある。これに対し、高卒またはそれ以下の人口の割合は「25.3%」と下回り、一段と減少傾向にある。

 トランプ氏は、16年大統領選挙を通じ、こうした米国社会で孤立しつつある白人の特定の集団相手に、単純明快な「再び偉大なアメリカを!Make America Great Again=MAGA」のスローガンを巧みに売り込み、ホワイトハウス入りを果たした。そして、20年大統領選では、再選を果たせなかったにもかかわらず、「バイデン当選」阻止目的で、米議会史上最悪といわれる「連邦議事堂乱入・占拠事件」を引き起こした。そのお先棒を担いだのも、「高卒以下の白人層」が中心だった。

 しかし、今回の中間選挙では、「ニューヨーク・タイムズ/シエナ・カレッジ合同調査」が示す通り、民主党は防戦の立場にあるにもかかわらず、女性層、大卒以上の白人の間で支持を増やし始めており、その結果、現段階で意外にも「ほぼ互角」の情勢となってきたものとみられる。』

『米国民の心を揺るがす事件

 その背景にあるのが、過去1カ月の間に、米マスコミが一斉に報じてきた全米を揺るがす相次ぐ社会的大事件にほかならない。

 まず、各地で痛ましい銃乱射事件が相次ぎ、多数の犠牲者が出たことをきっかけに、野放し状態となってきた一般市民による銃砲所持について、一段と厳しい規制措置を求める声が全米で盛り上がってきた。

 ところが、保守派判事が多数を占める連邦最高裁が、国民の大半の意思を無視するかのように、銃砲所持の規制を厳格化したニューヨーク州法を「違憲」とする判断を下し、規制撤廃を求める銃砲自由所持派を支持した。このため、各地で、最高裁の〝横暴〟を非難する集会やデモが繰り広げられた。

 その最高裁は続いて翌日に、これまで半世紀近くにわたり憲法で保証されてきた女性の「妊娠中絶選択権」を却下。事実上、中絶を禁止する異例の判断を示した。その直後に、CNNテレビが実施した世論調査によると、国民の59%が最高裁判断に「反対」、「賛成」は41%にとどまった。

 とくに、中絶問題は、全米有権者の過半数を占める女性の間で大きな波紋を広げつつあり、ミシガン、カンザス、カリフォルニア、ケンタッキーなどの各州において、中間選挙の際に、中絶権認可の「州憲法明文化」について住民投票にかける動きが盛り上がりつつある。住民投票実施によって、これまで政治参加に消極的だった婦人層の投票率が上がり、それだけ、民主党が有利になるとの判断がある。

 銃砲所持規制をめぐる最高裁判断についても、国民の56%が異議を唱え、支持派を大きく上回っている。

 これらの動きに加え、その後、下院特別委員会が真相解明中の「連邦議事堂乱入・占拠事件」に関連し、当時のトランプ大統領やその側近たちが20年大統領選挙結果転覆工作に直接関与したとする新たな証言が相次ぎ、その模様が連日にようにテレビ中継されるにつれて、「民主主義の根幹を揺るがす大スキャンダル」だとして、国民の関心も予想以上に高まりつつあるのも事実だ。

 この点で、「ニューヨーク・タイムズ/シエナ・カレッジ合同調査」で、共和党有権者の過半数が24年大統領選において、トランプ氏以外の候補を望んでいることも明らかにされており、このところ、「トランプ・ファクター」が共和党支持率の足を引っ張るかたちとなっている。』

『それでも民主党の劣勢は続く

 しかし、だからと言って、中間選挙において、民主党が両院、とくに下院において、勝利を収める確証は今のところない。

 逆に、14日発表された米議会専門誌「Congressional Quarterly」の電子版「Roll Call」の各州別の情勢調査によると、共和党は下院において、現議席数より7議席増の221議席の多数を制し、下院議長のポストを奪回する見通しだという。さらに、今後の情勢次第では、さらに上積みする可能性にも言及している。

 ただ、同誌はその一方で、「例年の中間選挙では、野党が平均30議席増となってしかるべきだが、今回、わずか7議席増にとどまっていること自体、共和党のリードはあまりにも少なく、喜んでいられる状況ではない」とも指摘している。

 また、上院での見通しについては、今回何も触れていない。

 言い換えれば、「ニューヨーク・タイムズ/シエナ・カレッジ合同調査」が示す通り、今回の中間選挙は、これまでの予想に反し、与野党が接戦状態になりつつあることを示していることにもなる。

 では、民主党は、バイデン大統領の支持率低迷と内外に難題を抱えているにもかかわらず、なぜ、ある程度踏みとどまっていられるのか。

 「Roll Call」は結論として、「民主党候補の多くが、各選挙区において、バイデン大統領の不人気とは距離を置き、個人的資質や魅力で善戦しているからだ」と説明している。

 投票日まで4カ月足らずを残すのみとなっている。まだ、今年の中間選挙では、いくつもの波乱要因が飛び出してくる可能性も否定できない。

斎藤 彰 』