穀物輸出再開、価格安定には時間も 合意の履行が焦点に

穀物輸出再開、価格安定には時間も 合意の履行が焦点に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR223Y60S2A720C2000000/

『ロシアによる侵攻で滞っていたウクライナ産の穀物輸出が再開する見通しとなった。22日、両国がそれぞれ国連、トルコと合意文書に署名した。2000万トン超の在庫放出への期待から、小麦価格は侵攻前の水準まで下落した。だが、黒海に「回廊」を設ける合意の履行は予断を許さず、ウクライナの生産減少も懸念される。供給と価格の安定には時間がかかりそうだ。

米シカゴ商品取引所の小麦先物は日本時間22日夜の取引で1ブッシェル8ドルを下回った。侵攻前の水準を下回るが、1年前と比べるとまだ1割強高い。

穀物コンサル会社、グリーン・カウンティの大本尚之代表は「今まで出てこなかった穀物が市場に出回るとなれば相場の下押し圧力が強まる」と指摘する。先物価格は6ドル台に下がる可能性もあるという。

ただ、中長期の供給の安定には慎重な見方も多い。日本国内の海運仲介会社の担当者は「安全な航行が保証されなければ、穀物船が(ウクライナ南部の主要積み出し港)オデッサに向かうのは厳しい」と指摘する。

例年、ウクライナを含む北半球からの輸出が本格的に増える秋までに黒海ルートが正常化しなければ需給の逼迫感は緩和しないとの見方もある。

24日で侵攻開始から5カ月となるが、戦闘やロシアによる民間施設への攻撃は続いている。

22日の署名式で、両国は同席を避けるなど不信感は根深く、合意の履行が順調に進まないとの懸念は拭えない。

米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は22日、「ロシアに合意の履行責任を果たさせる必要がある」と強調した。

作付けができなかったといった理由で、ウクライナの穀物生産は減少している。ウクライナ穀物協会(UGA)は6月、2022年の小麦収穫量は前年の3300万トンから42%減少し、1920万トンになるとの見通しを示した。

戦争が長引くほど、世界の穀物需要とウクライナの供給能力のギャップが広がり、食料価格を再び押し上げる可能性がある。

ロシアは貧しい国々で飢餓のリスクを高めているとの批判を意識し、ウクライナの輸出再開を認めた格好だが、今回の交渉と並行し、自国産の穀物や肥料輸出を認めさせる実利も得つつある。米国は14日、ロシアへの金融制裁に農産物取引は含まれないとの見解を示した。

欧州連合(EU)はロシア制裁に農産物は含まれないとかねて説明してきた。21日には従来の制裁内容を微修正し、第三国とロシアの間の農産物の取引を対象としていないことを明確にした。

(山本裕二、イスタンブール=木寺もも子)』