ロシア・ウクライナ、穀物輸出再開で合意 黒海に「回廊」

ロシア・ウクライナ、穀物輸出再開で合意 黒海に「回廊」
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『【イスタンブール=木寺もも子】ロシアのウクライナ侵攻で同国からの穀物輸出が滞っている問題で、両国は22日、それぞれ仲介役の国連、トルコと輸出再開に向けた合意文書に署名した。価格高騰を抑え食料危機の回避につなげることができるか、注目される。

イスタンブールでの署名式に出席したグテレス国連事務総長は「合意は経済破綻の間際にあった途上国、飢饉(ききん)が迫っていた人々に恩恵となる」と強調した。トルコのエルドアン大統領は「数十億に及ぶ人々が飢えに陥るのを防ぐだろう」と述べた。

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ロシアのショイグ国防相、ウクライナのクブラコフ・インフラ相は時間差で壇上に上がった。同席せず、同じ文書への署名も避けたもようだ。

国連によると、黒海沿岸のウクライナの港からの穀物などを運ぶ貨物船の運航を可能にする「回廊」の設置が合意の柱。23日にも黒海の出入り口に位置するイスタンブールに共同調整センターを設け、船舶の運航状況を監視し、武器を積んでいないかなどを確認する。

交渉に携わった国連の高官は、数週間以内にも本格的な貨物船の出入りが始まるとの見通しを示した。

ウクライナは南部オデッサなど港の防衛のために機雷を敷いている。ロシアは撤去が必要と主張していたが、ウクライナ側が安全な航路を先導する。ウクライナ高官は、港にロシア船は出入りしないと述べた。

4者は13日の対面協議で大筋合意し、詰めの調整を行っていた。

ウクライナは小麦輸出で世界5位。南部の主要港オデッサなどに滞留している穀物は2000万トン超に達し、世界の年間輸出量の5%を占める。

国連食糧農業機関(FAO)によると、人口2億7000万人のインドネシアは小麦輸入の3割をウクライナに依存する。

割安感や地理的な近さから特に中東やアフリカの途上国の輸入が多く、ウクライナ産小麦への依存度はソマリア(人口1600万人)で5割、レバノン(同500万人)では6割に達する。

ロシアは国際世論の批判を意識し、ウクライナの輸出再開を認めたもようだ。自国産の食料や肥料などの輸出を認めさせたい狙いもあったとみられる。

ただ、両国の相互不信は根強く、合意を円滑に履行できるかは予断を許さない。ウクライナ外務省は21日夜の声明で「ウクライナ南部の安全、黒海におけるウクライナ軍の強固な立場」などが保証されなければ支持できないとくぎを刺した。
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

ウクライナが機雷を敷設しているという問題だが、ウクライナ軍がまともな軍であれば、必ず安全航行できるルートを確保しているはずであり、それがあれば、機雷除去せずとも輸送は開始できる。それよりも問題となるのは、ロシアがどこまでこの合意にコミットするか、だろう。このまま穀物輸出を止めていれば、味方となるべき中東やアフリカ諸国に圧力をかけることになるからだろう。しかし、ロシアはいつでも黒海を封鎖してウクライナを苦しめることが出来るということを学習しているので、また繰り返す可能性はある。もしこの合意で穀物価格が下がれば、ロシアの主張する制裁による穀物高ではなく、黒海封鎖が原因であることが証明される。
2022年7月23日 1:08 』