「ポスト安倍」の日韓

「ポスト安倍」の日韓 関係改善へ国内説得の難路
岸田首相と韓国外相が会談
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM191900Z10C22A7000000/

『2022年7月20日 0:00

岸田文雄首相と韓国の朴振(パク・ジン)外相の19日の会談は、関係改善に向けた道のりの険しさを改めて浮き彫りにした。日本側の公式発表は銃撃された安倍晋三元首相への弔意を巡るやりとりしか紹介しなかった。自民党内からは慎重な対応を求める声が出た。

「首脳会談の話はありましたか?」。首相官邸で記者団から問いかけられた首相は何も答えずに立ち去った。外務省の発表資料は160字程度で、元徴用工や慰安婦の問題への言及はなかった。

朴氏も官邸では記者団の問いかけに何も答えなかった。その後の説明も懸案で従来より踏み込んだ表明はなかった。

自民党の佐藤正久外交部会長はツイッターに「同じ失敗を繰り返してはダメ」と書き込んだ。朴氏が日韓議員連盟の額賀福志郎会長に「日本側にも誠意あるリアクションを頂ければ」と求めたのを受けた反応だった。

文在寅(ムン・ジェイン)前政権が慰安婦合意の履行を止めるなど、約束をほごにしてきた過去へ警戒感をにじませた。

日韓は安倍政権だった2015年に慰安婦合意を交わした。当事者であり保守層の支持が厚い安倍氏が納得する形であれば日韓関係を前に進めやすい側面があった。

安倍氏は18年、党内の反対論を押し切って平昌冬季五輪の開会式に出席し、文氏と会談した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が就任前に派遣した政策協議団との面会も受け入れた。安倍氏がいなくなり党内が抑えにくくなる可能性がある。

国内の説得が必要になるのは韓国側も同じだ。韓国外務省は7月、元徴用工問題の解決に向け専門家らを集めた官民協議会を立ち上げた。韓国政府が日本企業への賠償金を肩代わりする案の検討を始めると、一部の被害者団体は反発した。

尹政権の支持率は発足直後の50%台から足元で30%台に低下した。もともと大統領選は僅差の勝利だった。支持率がさらに低下すれば歴史問題に絡む対日関係のかじ取りは一段と難しくなる。

韓国は日本に「協力」を求める方針だ。被害者を救済する基金をつくり企業や個人が自主的に寄付したり、政府や企業が「おわび」を何らかの形で示したりといった日本の対応が念頭にある。

日本政府が韓国の要請を一定程度のむなら、自民党内や日本の世論が受け入れられるような説得が必要になる。

元徴用工の問題を巡っては8月以降、差し押さえられた日本企業資産の現金化ができる状態になるとの観測がある。時間は限られる。中国や北朝鮮へ対応するには日韓の協力は欠かせない。米国による両国への働きかけも重要な要素になる。

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Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Spotlight/Japan-South-Korea-rift/Japan-South-Korea-face-naysayers-at-home-in-push-to-mend-fences?n_cid=DSBNNAR 』