北朝鮮、物資不足緩和へ中国に列車再開を要望

北朝鮮、物資不足緩和へ中国に列車再開を要望
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『【大連=渡辺伸】深刻な物資不足に直面する北朝鮮が、新型コロナウイルス対策と経済政策の両立を模索している。コロナ前から7割減った対中貿易の回復を狙い、中国に貨物列車の定期運行の再開を求めたほか、農業生産の人員を確保するために都市封鎖も一時緩和した。ただ、新型コロナとみられる発熱者数は増え続けている。

中国東北部の遼寧省丹東市と北朝鮮の新義州を結ぶ列車を巡って「北朝鮮の貿易会社などが中国に運行再開を要望した」。北朝鮮の実情を知る中国の関係者が日本経済新聞に明らかにした。

北朝鮮の対外貿易のうち、中国は9割以上を占める。その中朝貿易の約7割を担うのが丹東と新義州間のルートで、鉄道はその最重要手段だ。

中国で新型コロナが広がった2020年1月下旬、ウイルスの流入を警戒した北朝鮮は列車の定期運行を停止した。北朝鮮の意向を受けて長らく運行は止まっていたが、22年1月に再開。だが4月に再び停止した。中国側の感染拡大が停止の原因になったとみられる。現在のところ「中国政府は北朝鮮からのコロナ流入を警戒し、貿易再開に慎重な姿勢だ」(関係者)といい、再び運行できるかは不明だ。

今回の再開要望の背景には、食糧や物資不足に悩む北朝鮮側の焦りがある。中国税関総署の18日発表によると、22年1~6月の中朝間の輸出入額は3億4137万ドル(約470億円)と、コロナ禍前の19年同期に比べて73%減った。

北朝鮮北部の農村で牛車を使って作業をする人々(2022年2月、中国の遼寧省丹東市から撮影)

最も不足しているのは原油と食糧、外貨だ。中でも食糧価格の上昇は著しい。中国側有識者の分析によると、首都・平壌の市場でコメ1キログラムの販売価格は6月の5100北朝鮮ウォン(約780円)から7月に5800北朝鮮ウォンに上昇した。

慶応義塾大学の礒崎敦仁教授は「北朝鮮は(コロナとの共存をめざす)ウィズコロナを模索している。鉄道による貿易再開なども徐々に進めたいのだろう」と読み解く。「北朝鮮は自給自足の経済をめざしているが、物資不足もあって現実的には難しく、中国との関係を重視せざるをえない」

朝鮮中央通信によると、北朝鮮当局が新型コロナ感染者を初めて公表したのは5月12日だった。中国側の関係者によると、北朝鮮は中国政府の「ゼロコロナ」政策を参考に、都市や農村などに多くの隔離施設を設置し、地域間の移動を厳しく制限した。

北朝鮮では農村の労働人口が足りないため、例年のように都市の工場労働者や学生らを農村に派遣している。当局は食糧確保のため、コメや大豆、トウモロコシ、ジャガイモなどの生産を重視している。そのため今年も「6月には都市と農村間の移動を緩和した」(関係者)。だが、田植えが終わったため、7月に再び移動制限を敷いたという。

朝鮮中央通信によると、コロナ感染者と推計される発熱患者は7月18日時点で、累計477万人にのぼる。1日あたりの新たな発熱患者は数百人で、5月時点の数十万人から急減した。朝鮮中央通信によると、北朝鮮当局は「ウイルスとの闘いに勝つ体制が確かになっている」と自信を示している。

一方、世界保健機関(WHO)の幹部は6月の記者会見で「必要な感染データに接触できず、的確な分析は難しい」としたうえで、北朝鮮の感染状況を「悪化している」と推計した。同国内ではコロナワクチンや治療薬もほぼ普及していないとみられる。

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Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Spotlight/N-Korea-at-crossroads/Shortage-hit-North-Korea-urges-China-to-restart-freight-rail-lifeline?n_cid=DSBNNAR 』