中国・貴州省政府、金融機関に債務返済延期など協力要請

中国・貴州省政府、金融機関に債務返済延期など協力要請
政府傘下のインフラ投資会社の経営再建目指す
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM147L10U2A710C2000000/

『【上海=土居倫之】中国西部の貴州省政府が、傘下のインフラ投資会社などの債務について返済の繰り延べなどの支援をするよう金融機関に要請している。不動産市場の不振で財政が悪化する地方政府のあいだで、今後同様の動きが広がる恐れがある。

「返済繰り延べ、金利引き下げ、借り換えなどによって債務リスクを解消しなければならない」。7日、貴州省トップの諶貽琴(チェン・イーチン)省共産党委員会書記は金融機関幹部を招いた会議でインフラ投資会社に対する金融支援を要請した。

諶氏の発言の背景には国務院(政府)が1月に公表した貴州省向け意見がある。「隠れ債務を増やさない前提で、(地方政府傘下のインフラ投資会社である)融資平台(プラットフォーム)が金融機関との返済繰り延べや債務再編を交渉することを認める」と記した。中央政府が地方政府の返済繰り延べにお墨付きを与えており、国有銀行をはじめ金融機関がこの要請を拒否するのは簡単ではない。

貴州省政府金融工作弁公室によると、中信銀行貴陽支店は、同省遵義市の遵義路橋建設集団の債務再編などに向けてプロジェクトチームを設立したという。同社は遵義市国有資産監督管理委員会が100%出資する融資平台の1社で、業績の悪化による税金の未払いなどが明らかになっている。

中国政府は2014年まで地方政府による地方債の発行を原則禁止していた。このため融資平台と呼ばれる地方政府出資のインフラ投資会社を設立して必要な資金を調達せざるを得ず、これが地方の「隠れ債務」を膨らませる原因となっていた。

融資平台は採算性の乏しいインフラ投資で業績不振に陥る例が少なくない。自助努力による経営再建や資金繰り改善が難しければ、株主である地方政府か貸し手である金融機関が支援せざるを得ない。銀行が金融支援してくれれば貴州省政府はその分財政負担を免れるメリットがある。

返済繰り延べや債務再編は、貸し手が同意すれば必ずしも「債務不履行(デフォルト)」には当たらない。ただデフォルトと認定されなくても、不良債権となって貸し手が損失を被る事実は変わらない。米格付け会社S&Pグローバルは「(融資平台は)資金の再調達が難しくなるだけで、本質的な信用改善にはつながらない」と警告している。

財政省によると、中国の土地使用権の売却収入は6月、前年同月比4割減少した。15年5月以来のマイナス幅で、21年7月以降、ほぼ一貫して前年割れが続いている。財政悪化は貴州省にとどまらない問題となっている。S&Pによると「貴州省以外には国務院による同様の意見はない」というが、今後国務院がほかの地方政府にも金融機関との交渉を認め、債務返済繰り延べなどを求める動きが広がる可能性がある。負担を強いられかねない銀行や投資家が警戒を強めている。

中央政府は、14年の地方政府による地方債の直接発行解禁と並行して地方政府傘下の融資平台による資金調達を度々規制してきた。「隠れ債務」として財政の透明性を低下させ、国際的な信認を損なうおそれがあるためだ。ただ現実にはこうした資金調達は続いている。中国の調査会社、Windによると、「城投債」と呼ばれる融資平台の債券発行残高は約13兆7500億元(約290兆円)にのぼる。銀行借り入れを含めるとさらに増えるとみられる。貴州省による債務繰り延べ要請は、これまで投資家が購入の前提としてきた「暗黙の政府保証」を崩しかねない。

新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策などが直撃し、中国の4~6月の実質国内総生産(GDP)は、前年同期比0.4%増にとどまった。22年通年目標である「5.5%前後」達成は難しさを増しており、政府内ではインフラ投資を主軸とした財政拡張論が浮上している。

ただ国債や地方債発行の増額や前倒しだけで5.5%前後の成長目標を達成できるかどうかは不透明だ。地方債と違って独自の判断で資金を調達でき、インフラ投資を上積みすることができる融資平台に、地方政府は頼らざるを得ない。貴州省はどこまで金融機関に負担を求めるか難しい判断を迫られることになる。

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Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Business/Markets/China-debt-crunch/China-province-seeks-lifeline-for-debt-ridden-infrastructure-projects?n_cid=DSBNNAR 』