インド、中国企業締め出し 資産凍結や買収不許可

インド、中国企業締め出し 資産凍結や買収不許可
中国の対応は抑制的、今後の関係は悪化も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM074Z30X00C22A7000000/

『【コロンボ=花田亮輔、広州=川上尚志】インドが自国市場から中国企業を締め出そうとしている。スマートフォン大手の資産凍結や、自動車工場の買収不許可といった動きが相次ぐ。一方、中国の対応は抑制的だ。ロシアとの協調にインドを取り込む狙いがあるとみられるが、中国側が受ける打撃は大きくなっている。インドと中国の関係が一段と悪化しかねない。

インド当局は7日、中国スマホ大手のvivo(ビボ)に立ち入り捜査を実施し、資産を差し押さえたと明らかにした。ロイター通信によると、マネーロンダリング(資金洗浄)に関する捜査の一環で、vivoのインド事業に関係する119の銀行口座から46億5000万インドルピー(約80億円)を差し押さえた。

インド当局はvivoのインド法人が同国での納税を回避するため、6247億6000万インドルピーを中国などに送金していたと主張している。

インドメディアによると、デリー高等裁判所はvivoに銀行口座の利用を認めたが、中国に向けた利益を送金する際に詳細をインド当局に報告するよう求めた。内容によっては再び規制に乗り出す構えをみせた。差し押さえられた口座資金の扱いは明らかになっていない。

インド当局は中国スマホ大手の小米(シャオミ)についても4月末、「不正な海外送金」に関連して555億インドルピーを超える資産を差し押さえたと明らかにしていた。関係者によると、事業継続に必要な一部の支払いについては差し押さえられた口座での取引が認められているという。

自動車産業にも影響は広がる。中国自動車大手の長城汽車は6月末、米ゼネラル・モーターズ(GM)のインド工場の買収を断念した。インド市場撤退を決めたGMと20年1月に買収で合意したと発表していたが、長城汽車のインド事業代理人は「期限内に(当局の)承認がおりなかった」と明かす。

インドではこれまでもインターネットや通信の分野で中国企業を締め出す動きがあった。中印両国は国境付近の領有権で対立し、20年6月には係争地での衝突で多数の死者が出た。衝突直後にインドでは動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」をはじめとする中国企業のアプリが禁じられた。高速通信規格「5G」の試験からは華為技術(ファーウェイ)などの中国企業が排除された。

今回は中国企業の締め出しがスマホなどにも広がった格好だ。背景の一つとして考えられるのは、インドの対中貿易収支の悪化だ。中国税関総署によると、インドの対中貿易赤字は21年に693億ドル(約9兆5千億円)となり、直近の10年では最大に膨らんだ。対中貿易赤字は22年1~5月も384億ドルで、前年同期を6割上回る。スマホ向けなどの電子部品の輸入が急増しているためだ。

香港の調査会社カウンターポイントによると、インドのスマホ出荷台数に占める小米やvivoなど中国企業の製品のシェアは6割を超える。パソコンやテレビなどの市場でも中国勢の存在感は大きい。自動車分野でも格安の電気自動車(EV)で知られる上汽通用五菱汽車が23年前半、インドで現地提携先を通じ、新型EVの発売を目指す。これからもインド当局の介入が続けば、各社は戦略の見直しを迫られる。

中国の対応はこれまでのところ抑制的だ。「中国企業への頻繁な調査は経営活動を混乱させ名誉を損なう」。在インド中国大使館は5日、インド当局への不快感をあらわにした。中国外務省も「インドでの投資や経営に対し、公平・公正・無差別な環境の提供を望む」と主張するが、インド企業への目立った報復措置には踏み切っていない。

中国はロシアと連携してインドを自陣営に取り込む狙いがあるとみられる。7月上旬にインドネシアのバリ島で開かれた20カ国・地域(G20)外相会議では、中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相とロシアのラブロフ外相が会談し、戦略的に連携する方針を確認した。

ウクライナを巡り、ロシアと日米欧が対立するなか、ロシアと協調する中国もインドとの正面対立は避けたい思惑を持つようだ。

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蛯原健
リブライトパートナーズ 代表パートナー
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分析・考察

Vivoやシャオミの違法な租税回避に関するあくまで個別の事案のようにも見えるが、いずれも製造販売業でかつ同国が自国製造業育成に血道を上げている状況ゆえに記事にあるような総じて中国製造業の締め出しの「可能性がある」といったところが正確な見立てではなかろうか。
もっともこれまでの一連の対中強行策、第一に中国モバイルアプリの全面締め出し、第二に対印直接投資の事前承認制度導入らを前提にすれば、本件も単なる個別事案でない可能性が論じられても然るべし、といったところだろう。
2022年7月20日 9:09 (2022年7月20日 9:37更新)
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

インドのローカルメーカーが育っていない現状において、中国企業を締め出すことができないのでは。ただ、納税回避のようなやり方でやられたら、インド政府も黙っていない。やましいところがなければ、調べてもらって事実を明らかにすればいい。やましいところがあれば、自分で正すしかない。立場を置き換えれば、インド企業は中国に進出して、納税回避のようなやり方でやったら、中国政府は黙っているとは思えない。重要なのは事実はどうなっているのかである
2022年7月20日 7:33 』