中国が米国債保有を削減、12年ぶり1兆ドル割れ

中国が米国債保有を削減、12年ぶり1兆ドル割れ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN190180Z10C22A7000000/

 ※ 金利の上下と、債券価格の関係、「いろはのい」だが、もう一度確認しておこう…。
 ※ 「国債の金利の先高が予想される」場合、「債券(国債)の価格」は、「下がる」ことが予想される。

 ※ 例えば、「金利2%の国債」を保有している場合、「金利2%」の債権としては、市場で売れない。すぐに「金利3%の国債」が発行されるハズで、少し待って、そっちを購入する方が「お得」なので…。

 ※ そういう場合、「金利2%」の国債の保有者は、「現在の市場価格」よりも、「お安い価格で」売り払う他は無い…。

 ※ そういうことで、「金利先高予想」の場合、債券価格は「下がる」と予想される…。

 ※ 中国も、保有している米国債を「減少して」、米国債の「新規発行(金利の高いもの)」に備えていると、思われる…。

『【ニューヨーク=斉藤雄太】米財務省が18日発表した国際資本統計によると、中国の5月末の米国債保有額は前月比226億ドル(約3.1兆円)減の9807億ドルだった。6カ月連続で減少し、12年ぶりに1兆ドルの大台を割り込んだ。高インフレの米国で国債利回りに上昇(価格は下落)圧力がかかるなか、保有を減らす動きが続いた。米国のロシアへの制裁措置を踏まえ、ドル建て資産の圧縮を進めている可能性もある。

国・地域別の米国債保有で世界2位の中国は直近6カ月間で1000億ドル(9%)減らした。海外全体の保有額は5月末で7兆4215億ドルと336億ドル減り、3カ月連続減になった。世界最大の米国債保有国である日本も1兆2128億ドルと56億ドル減らし、直近3カ月では934億ドル減になった。

背景には米金利の先高観が強まったことがある。止まらぬインフレを受け、米連邦準備理事会(FRB)は3月に始めた利上げのピッチを上げている。米国債の保有を減らす量的引き締めも急ぐ考えを示し、6月に開始した。米長期金利の指標になる10年物国債利回りは昨年末の1.5%程度から5月に一時3%を突破。金利の急上昇で保有する国債に損失が生じることを警戒する海外投資家が持ち高を減らしている。

中国の保有削減は、ウクライナに侵攻したロシアに対する経済制裁が影響しているとの見方もある。米国はロシアの抱える外貨準備を凍結するなど、ドルの利用を封じる措置を取った。外貨準備の多くを米国債で運用する中国からすると、米中の緊張関係が高まった際に同様の制裁を受けるリスクがある。中国は貿易摩擦が強まったトランプ前政権時代から米国債保有を徐々に減らしてきたが、足元で削減を加速している。

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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分析・考察

外貨準備をどう運用するかについては、3つのチェックポイントがある。日本の財務省HPには「外国為替資金特別会計が保有する外貨資産は安全性及び流動性に最大限留意した運用を行うこととし、この制約の範囲内で可能な限り収益性を追求するものとしています」とあり、これが普通の考え方だろう。「安全性」「流動性」が十分確保できる範囲内で「収益性」を追求するということ。FRBの利上げにより短期金利が上昇してヘッジコストがかさむ中、米国債よりもやや高い利回りが享受できる債券へ運用先をシフトするなど、中国当局が収益性で工夫している可能性はある。その一方、将来の対米関係を考慮しつつドル以外にシフトすることも考えられる。
2022年7月19日 8:12
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川島真
東京大学大学院総合文化研究科 教授
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分析・考察

中国にとってウクライナ戦争は学習の機会。その一つが、アメリカや西側諸国の対露制裁メニューだ。そのメニューの一つ一つが自分に向けられた場合のことを想定し、事前に対応できるものは対応する。米国債の保有については、ある意味で抑止力になると言われたこともあるが、ウクライナ戦争に際してドル建ての資産は「有事」に際してはむしろ制裁対象になって運用できなくなることがわかったので、漸次保有を減じていくということだろう。無論、経済的合理性に基づいているということも言えるだろうが、中国、とりわけ政治や党の「国益」は経済的合理性に限定されず、総合的な判断に因る。米国債減少も「有事」を想定した総合的判断に因るのだろう
2022年7月19日 7:18
鈴木一人のアバター
鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

中国のこれまでの外貨準備の仕方を見ると、地政学的な問題に対する備えや対処というよりは、経済的な合理性から判断しているように思われる。ただ、米ドル資産を抱えすぎていることがリスクになっているという認識はあるだろうし、将来的にドルの国際的な優位性が劣れば、米ドルを保有する意味は下がってくるだろう。今回はロシアのウクライナ侵攻への反応というよりは、総体的なリスクの管理としてのドル資産の圧縮と、ドル覇権の終わりの可能性を見通しての判断なのではないかと思われる。
2022年7月19日 9:22
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察

こういう問題について単純な結論に飛躍するのは禁物である。まず、経済学的に考えれば、中国政府が発表している外貨準備が減っていないことから、人民銀行が保有する外貨準備の中身が調整されている可能性が高い。急速なドル高を踏まえ、ドル建て資産を少しユーロなどに振り向けたほうが短期的に合理的と思われる。そして、外貨準備を一定額保有する本来の目的は国際貿易の対外支払いリスクをヘッジするためであり、一般的に輸入の6か月分は一つの目安。そして、米国債の増減をウクライナ戦争と関連付けるのは少々論理的に飛躍している感じがする。3兆ドルもの外貨準備を保有する人民銀行が安定性と収益性を重視するのは当然と思われる
2022年7月19日 7:54 』