中国「年5.5%成長」ゼロコロナで遠く 財政拡張論が浮上

中国「年5.5%成長」ゼロコロナで遠く 財政拡張論が浮上
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『【北京=川手伊織】中国国家統計局が15日発表した4~6月の実質国内総生産(GDP)は、前年同期比0.4%増にとどまった。新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策で経済活動が滞り、景気は急減速した。政府が2022年通年の成長率目標として掲げる「5.5%前後」は実現が遠のいており、政府内では財政拡張論も浮上してきた。

季節要因を調整した前期比の伸びは2.6%減だった。新型コロナの打撃を初めて受けた20年1~3月以来の減少だ。前期比の伸びを年率換算した成長率は10%程度のマイナスとなる。1~3月はプラス5.7%程度だった。

4~6月の前期比年率の成長率を主要国・地域と比較すると、中国の失速ぶりが際立つ。QUICK・ファクトセットやESPフォーキャスト調査がまとめた市場予測は、米国が1.6%、ユーロ圏が0.4%、日本が3.2%のプラス成長を見込む。

上海市のロックダウン(都市封鎖)などゼロコロナ政策で、4~5月の生産活動は停滞した。自動車やパソコン、産業用ロボットなど多くの製品が減産に追い込まれた。

雇用の悪化で家計の節約志向が強まり、消費も大幅に落ち込んだ。同市が封鎖を解除した6月は景気が持ち直したが、4~5月の打撃をカバーしきれなかった。

1~6月を前年同期と比べた成長率は2.5%だった。中国人民大学などが6月に主催した中国マクロ経済フォーラムは、22年後半の成長率は経済の正常化に伴って6%台半ばまで高まるとはじく。それでも通年では4.7%にとどまる。5.5%前後とした政府目標を達成するには、年後半に7~8%の成長が必要になるという。

当面は地方のインフラ投資が景気をけん引する見通しだ。地方政府が6月までに発行した22年分の新規インフラ債は3兆4100億元(約70兆円)と、通年の発行枠の93%に相当する。国務院(政府)は8月までに調達した資金も使い切るよう指示した。

年末が近づくにつれ、財政による景気押し上げ効果が弱くなる公算が大きい。政府内では、景気をさらに底上げするため、財政を拡張すべきだとの声もあがる。

中国人民銀行(中央銀行)の金融政策委員を務める王一鳴・中国国際経済交流センター副理事長は、2.8%前後と定めた財政赤字のGDP比率を引き上げるよう提唱する。財政赤字に計上しない特別国債の発行も検討すべきだと訴える。

米ブルームバーグ通信によると、中国財政省は23年に発行するインフラ債のうち1兆5000億元を、22年に前倒しで発行する案を検討する。

共産党は7月末に中央政治局会議を開き、22年後半の経済運営方針を決める見通しだ。国債発行の上積みなど財政政策の方向性が焦点になりそうだ。

秋の党大会を控えて、習近平(シー・ジンピン)指導部は経済社会の安定を重視する。ただ指導部が堅持するゼロコロナ政策は、今後も景気回復の重荷となりかねない。

7月に感染が広がった陝西省西安市や最南端のリゾート地、海南省海口市は、ロックダウンほど厳しくはないが、行動制限を強めた。飲食店の収入は6月まで前年割れが続いており、接触型消費などサービス業が打撃を受けやすい。

ゼロコロナ政策は地方財政にも重くのしかかる。北京市では飲食店や公共施設に入る際に、72時間以内のPCR検査の陰性証明を提示する必要がある。無料検査のコストは地元政府が負担する。

中国の証券会社、東呉証券は、北京や上海のほか省都クラスの大都市が大規模なPCR検査を常態化させると、年間コストが最大1兆7000億元になると試算する。

マンション市場の調整が政府の規制強化や景気悪化で長引き、地方政府が依存する土地収入は1~6月に前年同期から3割減った。ただでさえ地方の財政難は厳しさを増している。ゼロコロナ政策の負担も重なれば、景気対策などにも影響が出かねない。

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