中国、AWACS形の空自機模型を破壊 ミサイル訓練か

中国、AWACS形の空自機模型を破壊 ミサイル訓練か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC144B50U2A710C2000000/

『中国が新疆ウイグル自治区の砂漠地帯に設置していた航空自衛隊の早期警戒管制機(AWACS)に似た構造物を破壊したことが分かった。日本経済新聞が衛星写真を複数の専門家と分析して確認した。日本を仮想標的とするミサイル攻撃の訓練に使った可能性がある。

米衛星運用会社プラネット・ラブズが撮影した衛星写真を調べた。5月中旬の同地点の写真には自衛隊のAWACS「E767」を模した形の物体や滑走路、駐機場のような建築物が写っていた。7月13日の写真では構造物が破壊され、破片や黒い焼け跡のようなものがみえる。

過去の衛星写真をみると2日時点では物体が残っていた。天候の影響で撮影できない日があり詳細な時期は分からないものの、7月上旬に壊されたもようだ。中国で見つかった日本の自衛隊機形の物体が破壊されたと分かったのは初めて。

この一帯は人民解放軍の管理区域とされ、米軍艦と同形状の物体も複数みつかっている。空母に似た構造物にミサイルらしき着弾痕があると専門家が指摘したことがある。

衛星写真の軍事的な解析に詳しい米ミドルベリー国際大学院モントレー校のジェフリー・ルイス教授はAWACS形物体の破壊状況について「何らかの弾道ミサイルの訓練をしたと結論づけられる」との見解を示した。

米シンクタンク、新アメリカ安全保障センターのトーマス・シュガート非常勤上級フェローもミサイル演習に使われた可能性があると指摘した。中国が周囲に戦闘機を模した複数の構造物を配置した中で「特定の機体を識別して攻撃するテストに成功したのなら、中国軍のミサイル攻撃の精度が向上する」と分析した。

元自衛艦隊司令官の香田洋二氏は「手段がミサイルかレーザー誘導兵器かの判断は難しいが、空からピンポイントで破壊している」と話した。

破壊方法については別の見解もある。自衛隊の岩田清文元陸上幕僚長は着弾痕が確認できず、周囲の戦闘機形の物体がそのまま残っている点に着目。「ミサイル攻撃というよりもAWACS形構造物だけ燃やしたのではないか」とみる。

いずれにしても中国が自衛隊機を標的に見立てた訓練をし、目的を達成して壊した公算が大きい。衛星写真からは構造物の周りにあった滑走路や駐機場のような構造物も撤去し始めたことがわかる。

撤去前は写真下部に滑走路状の構造物が延び、模型が破壊された上部とつながっていた=Planet Labs PBC

防衛省によるとAWACS「E767」を運用しているのは世界で自衛隊だけで、浜松基地に配備する4機しかない。背面のレーダーで遠方の航空機やミサイルを早期発見し、味方の戦闘機を指揮する役割を担う。台湾有事などの際に航空優勢を確保するうえで要となる機体だ。

過去の衛星写真を分析するとAWACS形の構造物は2021年春に設置された。日米両政府が台湾海峡について明記した共同文書をまとめた直後だった。中国はそれから1年あまりの期間、軍事訓練に使用した可能性がある。

模型が破壊されたとみられる7月上旬は、中国とロシアが日本周辺で軍事活動を展開した時期と重なる。4日に中国とロシアの艦艇1隻ずつが相次いで沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域に入った。ウクライナ情勢や台湾を巡り日本への示威行動を強めているもようだ。

【関連記事】

・中国、空自機形のミサイル標的設置か 衛星写真で初確認
・中国、砂漠に日米の「標的群」 ミサイル訓練に活用か
・空自機形の「標的」設置、中国の狙いは 専門家に聞く
・中国の空自機標的問題 自民部会「世界に提起を」
・早期警戒管制機 「空飛ぶ司令塔」レーダーで全方位監視

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/Indo-Pacific/Satellite-photos-show-China-destroyed-object-similar-to-Japan-plane?n_cid=DSBNNAR
大中国の時代
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

桃井裕理のアバター
桃井裕理
日本経済新聞社 中国総局長
コメントメニュー

ひとこと解説

中国の弾道ミサイルが画像誘導でないとすれば、着弾訓練のためにここまで精巧な模型をつくる必要は小さく、一連の動きにはデモストレーション的な意味が強いと考えられます。ただ、注目すべきは、模型として選ばれたのが日本の早期警戒管制機(AWACS)である点です。仮に中国が台湾を侵攻し、台湾を迅速に制圧する戦略をとろうと考えた場合、中国本土の動きまで把握できるAWACSは真っ先に封じ込めておきたい兵力の1つとなる可能性が十分にあります。日本がいつでも中国の攻撃対象となり得るという前提での防衛戦略が必要だと考えます。
2022年7月15日 21:42

益尾知佐子のアバター
益尾知佐子
九州大学大学院比較社会文化研究院 准教授
コメントメニュー

ひとこと解説

台湾の頼清徳副総統の来日の報復かどうかわかりませんが、明らかに政治的メッセージが込められています。中国はロシアのウクライナ侵攻以降、自国が何もしていないのに世界で反中包囲網が強化されていると深く懸念し、憤っています。最近は「日本が裏で糸を引いてアメリカの同盟網を動かしている」という説も出てきています(過大評価ですが)。

米中は最近、あちこちの場でかなり交渉しています。しかし日本は最近、中国を追い詰めることに夢中になりすぎて、ほとんど交渉がないどころか総合的な中国分析すら諦めています。政策的にバランスを欠いています。このままだと中国が日本に圧力を集中させてくるのは避けられないでしょう。
2022年7月15日 21:08 (2022年7月15日 22:18更新)』