バイデン氏が帰国 中間選挙へ反転描けず、身内も反旗

バイデン氏が帰国 中間選挙へ反転描けず、身内も反旗
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『【ワシントン=坂口幸裕】バイデン米大統領は16日、サウジアラビアなど中東歴訪を終えて帰国した。11月の中間選挙前で最後とみられる外国訪問の成果は見えにくく、国内では身内から反旗を翻す動きが再び表面化した。支持率低迷に苦しむバイデン氏が局面を転換する展望を描けないまま、今年最大の政治決戦に向けて米国は選挙の季節に入る。

中東訪問はインフレ対策という内政の最重要課題を強く意識した。バイデン氏は15日、サウジのサルマン国王やムハンマド皇太子と会談後、原油増産について「サウジもその緊急性を共有しており、数週間のうちに追加措置がとられると期待している」と述べた。

サウジ人著名記者カショギ氏の殺害事件に関与したと断定したムハンマド氏との面会を巡っては米国内で「人権軽視」との批判が強い。それでも損得をてんびんにかけ、原油増産によるガソリン価格引き下げをめざす方が世論の支持を得られるとの判断があった。

返り血を浴びる覚悟でインフレ対策を優先したバイデン氏の賭けがどちらに転ぶのか。現時点ではわからないが、米メディアは批判的に報じている。16日には米紙ニューヨーク・タイムズなど有力紙が軒並み、バイデン氏がムハンマド氏とグータッチする写真を1面トップに掲載。同紙はサウジ訪問で「厳しい批判とささやかな合意を得た」と伝えた。

カショギ氏の婚約者だったトルコ人女性ハティジェ・ジェンギズさんはツイッターで反応した。ムハンマド氏と会談したバイデン氏について「カショギなら『これが私の殺害に対して約束した説明責任か。次の犠牲者の血はあなたの手の上にある』と投稿しただろう」と非難した。

原油高を緩和できるかも見通せない。市場ではサウジ側から大きな増産を引き出すのは難しいとの見方が強まる。6月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比の上昇率が9.1%と40年半ぶりの伸び率を記録。足元で原油相場が下落基調に転じても、ガソリン価格はなお高水準のままだ。

インフレ対策で検討している対中国制裁関税の引き下げ判断も政権のもろ刃の剣になる。中国の譲歩がないまま関税を下げれば、野党・共和党が「中国に弱腰」と指弾するのは確実だ。

不満はバイデン氏に向く。 米国の各種世論調査では軒並み支持率が4割を割り込む。米キニピアック大が6月下旬に公表した調査によると、米国のインフレは危機的だとの回答は59%で、4月下旬の調査より20ポイント上昇。ガソリン価格の影響で夏休みの計画を変更したと答えた人は40%だった。

バイデン氏が中東を訪れているさなかには与党・民主党から政権の肝煎り政策に賛同できないと最後通牒(つうちょう)を突きつけられた。米メディアによると、ジョー・マンチン上院議員は14日、インフレ加速につながるとして気候変動対策を盛った新たな支出・増税案を支持しないと党の議会指導部に伝えた。

上院は与野党の議席が50対50で拮抗する状況で、保守派に近い政策を志向するマンチン氏はこれまでも事実上の「拒否権」を行使してきた。党内左派やリベラル派が重視する政策停滞は民主党支持層の離反を招く事態もありうる。

中間選挙まで残り4カ月を切った。バイデン氏は正念場をむかえている。』