バイデン氏、サウジ原油増産「期待」 食料支援1400億円

バイデン氏、サウジ原油増産「期待」 食料支援1400億円
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1623U0W2A710C2000000/

『【ジッダ(サウジアラビア西部)=中村亮】バイデン米大統領は16日、サウジアラビアで開く湾岸協力会議(GCC)の関連会合に出席した。15日にサウジへ原油増産を個別に求めたことに続き、会合でも産油国に増産を働きかけた。中東の食料危機に10億㌦(約1400億円)の支援を表明した。

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サウジ西部のジッダで開く会合にはGCCに参加する6カ国とエジプト、イラク、ヨルダン、米国の首脳らが参加した。

バイデン氏は会合で原油市場について「エネルギー生産国はすでに生産を増やしており、今後数カ月にも期待している」と話した。石油輸出国機構(OPEC)にロシアなどを加えたOPECプラスは8月上旬に会合を予定している。バイデン氏の発言は増産を決めるよう促したものとみられる。

バイデン氏は15日、サウジのサルマン国王やムハンマド皇太子と会談した。会談後に記者団に対し「私は米国への原油供給を増やすために全てのことをする。サウジとはその緊急性を共有した」と説明した。「数週間で追加措置があると期待する」とも言及し、サウジに増産を強く促した。

米国とサウジは15日に公表した共同声明で「安定した世界のエネルギー市場を目指す方針を再確認した」と明記したが、増産の有無や規模には触れなかった。

バイデン氏はロシアによるウクライナ侵攻で食料価格が高騰していることを踏まえ、中東への食料支援を講じると説明した。価格高騰が政情不安につながるリスクがあり、新興国ほど食料危機に懸念が根強い。

バイデン氏は米大統領が中東を訪れるタイミングで、米軍が中東で戦闘任務を実施していないのは約20年ぶりだと指摘した。中東政策をめぐり「我々の資源をパートナー国の支援や同盟の強化、地域が直面する問題の解決に向けた有志連合の創出に振り向ける」と強調した。

米国は2000年代にアフガニスタン戦争やイラク戦争を始め、中東の民主化を進めようとしたが失敗した。バイデン氏はこの教訓を生かし、中東安定を中東各国に委ねて米国はサポート役に徹する構えだ。「唯一の競争相手」とみなす中国に対抗するため、米軍の戦力や予算をインド太平洋に回す狙いがある。

バイデン氏は「我々は中東を離れて中国やロシア、イランにつけ込む隙を与えるつもりはない」とも強調した。米国が安全保障や経済分野でのイスラエルとアラブ諸国の協力を後押しし、中東情勢を安定させていく方針だ。

米政府高官によると、GCC参加国は米国と連携したインフラ投資に総額30億ドルを使う方針を示す。米国は主要7カ国(G7)が掲げる「質の高いインフラ」の理念を中東各国と共有し、インフラ分野でも協力を強める。
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前嶋和弘
上智大学総合グローバル学部 教授
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ひとこと解説

アメリカ国内政治的にはプラスになりにくいのが今回の中東訪問。皇太子との手打ちで、リベラル派は猛反発。パレスチナ和平もそもそも動かすのが困難。共和党支持者は何をやってもバイデンを支持せず。今回も「トランプの中東政策が素晴らしかったのでその継続だけ」とみるはず。

さらに小売りのガソリン価格はガロン5ドルから4ドル台にピークアウトにみえますが、高い水準は変わらず。たとえサウジが原油増産をある程度行っても、需要とともに投機筋が価格を上げている分、価格がどうなるかは何ともいえないところ。
2022年7月18日 1:42 (2022年7月18日 6:34更新)

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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
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ひとこと解説

バイデン氏のサウジアラビア訪問に時を合わせるかのように、ロイター通信は英文の独占記事として15日付で、“ロシアへの経済制裁の抜け穴構造”や“サウジとロシアの錬金術の手法“を明らかにしました。ロシアは割引価格で燃料油をサウジに輸出、サウジはそれを国内用に消費し自国の原油は輸出に回すという裁定取引をしており、第二四半期は同燃料油取引が倍増したとのこと。同様に中国、インド、アフリカ、中東諸国がロシアからの原油や燃料油の輸入を増やしているとも伝えています。米Politicoはサウジ国王と皇太子がバイデン氏を空港で出迎えなかったことを皮肉りましたが、そこに様々なことが投影されており憂慮されるところです。https://www.reuters.com/business/energy/exclusive-saudi-arabia-doubles-q2-russian-fuel-oil-imports-power-generation-2022-07-14/
2022年7月17日 5:50

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松尾博文
日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員
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分析・考察

バイデン米大統領のサウジアラビア訪問は、実力者ムハンマド皇太子の存在を際立たせる結果になりました。宮殿に大統領を迎えるところから、湾岸協力会議(GCC)首脳会議でのホストとしての姿まで、皇太子の名誉回復をアピールする機会になったのではないでしょうか。加えて首脳会談後に公表された共同宣言(ホワイトハウス版)を読むと、18年に暗殺されたサウジ人ジャーナリストの名前を明記して人権問題に一項目を割いていますが、イランを念頭に置く安保協力や次世代通信規格、原発、グリーン水素、サイバーセキュリティなどでの協力合意が並びます。サウジが得たものの大きさに対して米国は何を得たのか。訪問がもたらす余波に注目です。
2022年7月17日 11:11 (2022年7月17日 11:42更新)』