米国の影響力低下が進むラテンアメリカでの悪循環

米国の影響力低下が進むラテンアメリカでの悪循環
岡崎研究所
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/27212

『最近のラテンアメリカでは、長期的には経済構造に起因し短期的にはパンデミックに原因する経済停滞や格差、治安悪化や汚職に対する国民の不満を背景に、既成政治家に対する反発、左右両極端のポピュリズムによる分断といった現象が見られている。その結果、選挙では政権党が敗れ、左派又はポピュリスト政権が成立し、改善しない状況の中で政権の強権化が支持されるといった悪循環も見られている。このような状況が続けば、ラテンアメリカにおける独裁政権の増加、欧米からの離反、中国の更なる影響力の拡大が懸念される。

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 6月上旬にロサンゼルスで行われた米州サミットでは、主催国米国は、ベネズエラ、ニカラグア及びキューバは、民主主義や人権に問題があるとして招待せず、これに抗議して、メキシコ、ボリビア、エルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラの大統領がサミットを欠席した。これらの国も外相等を代理で出席させたこと、アルゼンチン、チリ、ペルー等の左派系大統領や当初欠席が懸念されたカリブ海諸国首脳が出席したことで、一応格好をつけたが、直前までこれらの出席問題でもめたことや移民問題について地域の一体的取り組みがサミットの重要課題であっただけに、移民問題に関係深いメキシコ等の首脳の欠席はバイデンの顔を潰すものとなった。

 バイデンとしては、ウクライナ危機の下で民主主義を守るとの外交方針の筋を通した点は評価できるが、バイデン政権発足当時より新たなラテンアメリカ政策を打ち出す舞台となることが期待されていた米州サミットが、結果的には、米国の影響力の低下を印象付けるものとなった。また、このサミットで、当初出席が危ぶまれていたボルソナーロとバイデンの初めての会談が実現したが、どうせ会うのであれば、バイデンはもっと早く会うべきであったであろう。

 ラテンアメリカ域内の多くの国に政権の強権化の動きや政治的混乱の傾向が見られる。メキシコ大統領は、最近選挙管理委員会に対するいわれのない非難を強めており、グアテマラやエルサルバドルの大統領も強権化の傾向を強めている。そして10月のブラジルのボルソナーロとルーラの対決は、イレギュラーな動きの可能性も含めて予断を許さない。

 加えて、6月19日に行われたコロンビアの大統領選挙決選投票は、左右のポピュリストの間の不毛の選択となったが、極左候補のペトロが勝利し、米国は南米におけるもっとも信頼できる盟友を失い、今後、二国間関係の悪化やベネズエラを巡る情勢への影響等も懸念される。米国は、この地域への政策を改めて見直す必要があろう。』

『ラテンアメリカ諸国の民主主義を立て直すことが必要で望ましいのはもちろんであるが、結局のところそれぞれの国民の自覚と自助努力に待つしかない。
協力保つ努力も無駄ではない

 バイデン政権は、左派政権の中でも、米州サミットに首脳が出席した、アルゼンチン、チリ及びペルーの政権、或いは、ホンジュラスのカストロ政権などとは、人権や反汚職、犯罪対策、気候変動対策といった面では波長が合うはずである。コロンビアではFARCが武力闘争を止めた空白に麻薬組織が急速に力をつけて進出しており、ペトロは麻薬対策で米国と対立している暇はないのではないかとも思う。従ってこれらの面で左派政権とも協力関係を保ち、民主的な傾向を助長することも1つの方策であろう。

 また、米州サミットで、バイデン政権は、域内各国が移民問題に取り組むロサンゼルス宣言を採択し、公衆衛生に関するアクションプランの採択、投資動員・サプライチェーン強化・クリーンエネルギーによる雇用創出等経済面でのパートナーシップの強化、カリブ諸国への気候変動問題への協力などでのイニシアティブを発表し、特に中米を対象に投資誘致を通じた雇用機会の増大や職業訓練の拡充等の貢献案を提示した。地味で具体性に不足しており、ラテンアメリカの現状にインパクトを与えるには十分とはとても言えないがそのような努力を続けていくことも無駄ではないであろう。』