中国外交 「多極化」戦略は矛盾が目立つ

中国外交 「多極化」戦略は矛盾が目立つ
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20220714-OYT1T50372/

『中国の習近平国家主席は「世界の多極化」を掲げ、途上国を陣営に引き入れて米国主導の国際秩序に挑んでいる。その手法こそ、中国が批判する「一国主義」ではないか。

 中国の王毅外相は11日、インドネシアで演説し、東南アジア諸国連合(ASEAN)を巡る米国との主導権争いを念頭に、「多くの国が一方を選択するよう圧力を受けている」「大国のゲームの駒になるべきではない」と述べた。

 王氏はこの2週間、ASEAN加盟10か国のうち、7か国の首脳や外相と立て続けに会談した。

 ロシアのウクライナ侵略後も、米国がインド太平洋重視の外交姿勢を変えず、ASEANなどとの関係強化に乗り出していることに危機感を高めているのだろう。王氏の発言は、対米接近にくぎを刺そうという試みに見える。

 大国ゲームを演じているのは、中国である。習氏の「多極主義」は、新興国や途上国を中国の陣営に引き込んで、米国の影響力を低下させようという狙いだろう。

 だが、中国が経済力と軍事力を背景に攻勢をかけ、ルールに基づく国際秩序を動揺させている現状は、自らが唱えてきた主権尊重や国連重視といった外交原則と大きく矛盾している。

 ウクライナ侵略という明白な国際法違反と主権侵害に目を 瞑 り、ロシアの擁護を続ければ、「中国は途上国の代表だ」という主張はますます説得力を失うだろう。

 インド洋の島国スリランカは、反政府運動が拡大し、大統領が海外に逃亡して混乱に陥った。直接の原因は財政破綻による物価高や政権腐敗だが、中国は巨額の融資を通じて影響力を強めてきた。

 返済不能となった港湾の使用権を中国が得たことは、途上国に資金を過剰に貸し付け、経済や安全保障上の利益とする「債務の 罠 」の典型例とされている。中国の支援が対象国の安定につながらないことが示されたのではないか。

 豪州やニュージーランド、南太平洋の 島嶼 国などで構成する太平洋諸島フォーラムは、14日までの首脳会議で、加盟国が結束する重要性を強調した。

 米国の影響力が強い地域で、中国が島嶼国を足がかりに軍事拠点を作る動きを見せたことへの警戒心の表れだと言える。

 中国が主導する世界になれば、国際法やルールは尊重されず、小国ほど不利益が大きくなる恐れが強い。米国や日本、欧州諸国は、こうした観点から途上国との関係強化に努めなければならない。』