伊ドラギ首相が辞意表明 大統領は受理せず、政局混迷

伊ドラギ首相が辞意表明 大統領は受理せず、政局混迷
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR14ETR0U2A710C2000000/

『【ウィーン=細川倫太郎】イタリアのドラギ首相は14日、辞任すると表明した。主要与党の左派「五つ星運動」が政権に不信任を突きつけたことで、安定的な政権運営は難しいと判断した。ドラギ氏は同日、マッタレッラ大統領に辞意を伝えたが、同大統領は受理を拒否した。イタリア政局の混迷が深まっている。

ドラギ氏は閣議で「この政権を支えてきた挙国一致体制はもはや存在しない」と述べた。一方、マッタレッラ氏はドラギ氏からの辞意の申し出を拒んだうえで、議会で状況を報告し、各政党から支持を得られるか否かを改めて確認するよう指示した。伊メディアによると、ドラギ氏は20日に議会で演説する予定だ。

議会上院では14日、物価高騰対策などを盛り込んだ暫定措置令の採決を実施した。賛成多数で可決となったが、五つ星は投票に参加しなかった。この採決はドラギ政権への信任投票という位置づけで、ボイコットは政権への不信任を意味する。

五つ星の党首を務めるコンテ前首相は、最低賃金の導入などドラギ政権に複数の政策を実行するよう求めていた。コンテ氏は低迷する五つ星の支持率を挽回するため、国民に存在感をアピールする狙いがあったとみられる。ドラギ氏は五つ星と政府の政策は多くで一致していると指摘したが、一部については難色を示していた。

今後、各政党は水面下での駆け引きを活発化させそうだ。ドラギ氏が政権への信任が得られたと判断すれば辞意を撤回し、続投する可能性もある。一方、各政党の交渉がまとまらず行き詰まれば、マッタレッラ氏が新しい首相を選ぶか、早期の議会解散、総選挙に踏み切るシナリオも考えられる。

欧州中央銀行(ECB)の総裁を務めたドラギ氏は2021年2月に首相に就任した。強いリーダーシップ力や国際社会での高い知名度で、左派から右派まで幅広い政党からなる多党連立政権をまとめてきた。

金融市場では政局の混乱が嫌気され、投資家は「イタリア売り」に動いている。長期金利の指標となるイタリアの10年物国債利回りは14日、前日の3・2%台から一時3・5%台まで上昇(債券価格は下落)した。
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菅野幹雄
日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員
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ひとこと解説

気になるニュースです。多党体制が日常となり、不安定な先進国という認識が定着したイタリアで、ドラギ首相は信じられない安定感を世界に見せつけてきました。本当に辞任となれば、ジョンソン首相が退任する英国、与党が下院の多数を失ったフランス、首相の支持率低迷が目立つドイツとともに、欧州政治の混迷をより一層濃くします。
来週にはユーロ圏の利上げが決まりますが、ここに来てイタリアの経済的な信用力にも疑問符が付き始めています。欧州中央銀行の総裁を務めたドラギ氏が退けば、不安は一気に高まります。
大統領は慰留していますし、今回の辞意表明が与党内を引き締まるハッタリである可能性もありますが、展開を注視したいです。
2022年7月15日 7:29 (2022年7月15日 7:36更新)』