ウクライナ穀物輸出、黒海に「回廊」 共同監視で合意

ウクライナ穀物輸出、黒海に「回廊」 共同監視で合意
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1467A0U2A710C2000000/

『トルコのアカル国防相は13日、黒海にウクライナ産の穀物を輸送する「回廊」を設置する方向で合意したと発表した。同日イスタンブールでウクライナ、ロシア、国連との4者協議を開き、回廊を共同管理することなどで一致した。世界的な穀物価格上昇や供給不足の緩和につなげる。

アカル氏の声明によると、黒海の出入り口にあたるイスタンブールに共同管理センターを設け、仲介役の国連、トルコを含む4者で貨物船の出入りなどを監視する。来週にも再度イスタンブールで会合を開き、詳細を詰めたうえで合意文書への署名を目指す。

国連のグテレス事務総長は、最終合意に向けてはなお努力が必要だとしたうえで「世界の飢餓を緩和する希望の光だ」と期待を示した。

グテレス氏によると、4者協議ではウクライナが沿岸防衛のために敷設した黒海の機雷撤去を巡っても進展があった。ウクライナは機雷を撤去すれば、ロシアがその隙から南部オデッサなどの重要拠点を狙う可能性があると懸念していた。詳細は明らかになっていないが、回廊の共同監視で懸念を払拭する仕組みが議論されたとみられる。

ウクライナのゼレンスキー大統領は13日夜のビデオ演説で、協議では一定の進展があったとして「黒海の航行でロシアの脅威が取り除けたら、深刻な世界の食糧危機を軽減できる」と指摘。数日中に詳細について合意できるとの見通しを示した。

ロシア国防省は13日の協議前の声明で「迅速で実効的な解決に向けた提案パッケージを提案した」と述べていた。

ウクライナは小麦輸出で世界5位の穀倉地帯で、2月下旬に始まったロシアの侵攻は世界的な穀物価格の上昇を招いた。米シカゴ商品取引所の小麦先物は3月、一時1ブッシェル13ドル台後半の過去最高値を付けた。足元でも1年前と比べて3割高い。

黒海の出入り口にあたるイスタンブールを航行する貨物船(13日)=AP

ウクライナは陸路に加え、ルーマニア国境のドナウ川河口から黒海南部に抜ける航路を今月に入って稼働させるなど、ロシアに制圧された黒海北岸以外の輸送路拡大を進めていた。ただ主要な輸出拠点だった南部オデッサやミコライウの取扱量には及ばず、2000万トン以上の穀物がオデッサなどで滞留している。

4者協議に注目が集まった13日の小麦相場は、3月の高値から4割安い1ブッシェル8ドル台前半で推移したが、日本時間14日夕時点では反発している。「輸出再開への不信感や侵攻前の水準で推移している値ごろ感」(マーケットエッジの小菅努代表)があるという。

農林中金総合研究所の阮蔚理事研究員は「今回の基本合意は、実際に輸出が進めば小麦価格の下落につながるので喜ばしいニュースだ」と評価する。一方、ウクライナ側はロシア軍による農地への放火も主張している。「黒海ルートが元に戻ってもウクライナ産の輸出量が完全に戻るには数年かかる」(阮蔚氏)

13日に実現したウクライナとロシアの対面協議が中長期的な停戦につながるかどうかは見通せない。記者会見で停戦の可能性について問われたグテレス氏は「現時点で和平合意の展望は見えない」と述べた。

(イスタンブール=木寺もも子、山本裕二)』