「官邸主導」完成させた安倍氏 終わらぬ政治改革

「官邸主導」完成させた安倍氏 終わらぬ政治改革
安倍政治とは何だったのか⑥ ニュース・エディター 丸谷 浩史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODB148WD0U2A710C2000000/

 ※ 今日は、こんなところで…。

『首相官邸主導と、衆院の小選挙区制度。平成と1990年代の政治改革で根幹となったこの2つのシステムをもっとも有効に使い、完成形に導いたのが安倍晋三元首相だった。

第1次内閣、民主党政権の失敗が教訓

政治改革の出発点は、巨大化した自民党派閥とおカネがかかりすぎる政治を変えることにあった。中選挙区は同じ自民党から3人も4人も当選でき、そこに派閥が生まれる。ならば自民党から1人しか当選できない小選挙区にすれば派閥の弊害は除去され、総裁選で勝つために必要な兵を養う巨額のおカネは必要なくなる。これこそが、選挙制度改革を実現した原点にあった。自民党が1人なら、対抗勢力も1つにまとまらざるを得なくなり、政権交代可能な二大政党制への道筋がつく。

小選挙区は執行部の独裁を許す、自由な論議を妨げる、日本に二大政党はなじまない。1990年代初め、反対派は論陣を張った。安倍氏と小泉純一郎元首相は反対論に立った。その2人が首相になってこの制度を最大限に活用できたのは、メリットと欠点を反対の立場から熟知していたからでもある。

官房副長官、官房長官、自民党幹事長として小泉氏の政権運営を間近にみた安倍氏は、第1次内閣では郵政民営化の反対派を復党させるなどの軌道修正を試みた。そして短期間での退陣。雌伏の期間をへて再登板したときには、自らと民主党政権の失敗を繰り返さず、官邸主導と小選挙区制をフル活用する首相に変身していた。

巧みに使った「人気・解散権・人事」

まず小選挙区制においては、内閣支持率を高く保たなければならない。そのために安倍氏は「岩盤」とよばれた支持層を3割と規定して防衛ラインとし、保守派の支持を最後までつなぎとめる作戦をとった。スタートダッシュは有権者の関心が高い経済で「アベノミクス」を打ち出し、ほんの数回の例外を除いて4割以上の支持率を保つ政権運営を続けた。

第2に、解散権を最も効果的なタイミングで行使した。安倍氏は「解散のタイミング、それは勝つ時ですよ」と口にしていた。野党が1つにまとまれば、1対1の小選挙区では負けるリスクが大きくなる。「官製賃上げ」とも呼ばれた政策などで常に野党の分断を誘い、ひとつにさせないことが、自民党・公明党の与党が勝つ秘訣でもあった。

安倍氏は麻生氏㊨を副総理・財務相として起用し続けた(2013年、首相官邸)

第3は党首に権限が集中する特性をいかした、巧みな人事配置だ。安倍氏は基本的には閣僚を「一本釣り」し、表だって派閥の意向は聞かなかった。内閣は麻生太郎副総理・財務相と菅義偉官房長官の2人を固定した。党の幹事長は最初はライバルの石破茂氏、次に政策・信条が自らとは違ってリベラルな谷垣禎一氏、最後は老練な二階俊博氏を据えた。大派閥偏重や派閥均衡にはしない。結果として人事権は安倍氏1人が握り、党内の政敵につけいる隙は与えなかった。

コロナ禍が明らかにした官邸主導の弱み

いずれの要素も第1次政権の反省にもとづく。7年8カ月にわたった第2次政権は、ともすれば自らの理想や好き嫌いが先行した前回とは異なり、現実主義の面を強く押し出して成功した。

平成改革の完成者が再び首相官邸を去ったのは、新型コロナウイルス禍が、危機管理のあり方、地方自治体の首長との関係など、官邸主導の弱点を突いたからでもあった。「ある日、突然起こる危機」に首長たちまでを従える必要性は、平成と90年代の改革では手をつけられなかった。安倍政権の手法を基本的に踏襲した菅政権も、同じ弱点を克服できなかった。

記者会見で辞意を表明する安倍首相(2020年8月、首相官邸)

岸田文雄政権が政策決定で官邸主導よりも調整型を選び、人事で派閥均衡型をとっているのは、安倍・菅政権の反省を踏まえたものでもある。衆参両院の選挙を終え、野党が弱体化、多党化した現象と合わせれば、まるで中選挙区当時の「55年体制」に戻り、あたかも自民党内で「疑似政権交代」が実現したかのような印象を与える。

危機の時代、新たなリーダーシップの必要性

だが衆院の選挙制度は小選挙区制で変わらず、派閥の力は当時より、はるかに弱い。安倍・菅政権の逆をゆけば、政権運営がうまく運ぶわけでもない。

この点をもっとも理解していたのも、首相退任後の安倍氏だった。野党の弱体化と「55年体制」への逆戻りをみこした安倍氏は、最大派閥のトップであることをうまく使い、人事と政策の両面で要求を強めようとしていた。それは安倍氏が父、晋太郎氏の秘書を務めたころにみてきた当時の最大派閥、田中派と竹下派の全盛期を体験した「派閥政治家」としての本能でもある。野党に政権を奪われるかもしれないとの恐怖が自民党内にある間は、内輪もめをしている場合ではなく、総理総裁のもとで結束する心理が働く。いったんその心配がなくなり、党内での疑似政権交代の状況になり、派閥均衡と調整型で進むなら、大派閥の意向を重視するのは当たり前でもある。古い派閥政治と、小選挙区制の功罪を知り尽くし、時の政治状況に合わせていくのが安倍氏の政治行動だった。

首相退任後は自民最大派閥のトップとして改革を訴えた(清和政策研究会=安倍派=のパーティーで乾杯する安倍会長㊥ら、21年12月、東京都港区)

「安倍1強」とまで呼ばれた官邸主導の安倍政治は平成と90年代改革の完成形でもあり、安倍氏の退場は30年前に始まった改革が時代に合わなくなってきた事実をも示した。世界を揺るがしたコロナ禍に続くロシアによるウクライナ侵攻は、突然の危機に対応するための新たなリーダーシップのあり方、指導者論を提起した。台湾有事の可能性も取り沙汰されるいま、安倍氏を失った日本の政治は本当の危機に際しては官邸主導をより強力にする方策を含め、一連の改革を見直す時期に来ている。=おわり

通算で8年を超える長期政権を担った安倍晋三元首相の政治は何をもたらし、安倍氏の不在で日本の政治はどうなっていくのか。外交、経済など様々な角度から検証しました。

【安倍政治とは何だったのか」記事一覧】
・「保守」の安倍氏が導いた中韓外交 重石が不在に
・日米同盟「崩壊」に切迫感 危機脱した安倍氏の遺訓
・日銀不信が生んだ異次元緩和 「独立性」問うた安倍氏
・SNSと安倍時代のシンクロ 民主主義に「分断」の影
・TPP推進に賭けた安倍氏 経済秩序に対中安保の視点 』

NHK高校講座 | 世界史 | 第11回 西アジア・中東の新展開

NHK高校講座 | 世界史 | 第11回 西アジア・中東の新展開
https://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/sekaishi/archive/resume011.html

※ 中東の歴史を学ぶとき、その王朝がアラブ系なのか、イラン(ペルシャ)系なのか、トルコ系なのかは、押さえておいた方がいい…。

※ それが、「王朝の支配構造」にも影響を与え、ひいては現在のサウジアラビア、イラン、トルコなんかの「影響力」にも、大きな影を落としている…。

『第11回
西アジア・中東の新展開

世界史監修:東京大学名誉教授 羽田 正

学習ポイント
西アジア・中東の新展開

政井マヤさん
野呂汰雅さん
羽田正先生

ここは歴史の専門家も来店する無国籍雑貨屋。
政井マヤさん、野呂汰雅(たいが)さんと一緒に、世界史のおもしろさを探っていきます。
お話をうかがうのは、東京大学名誉教授の羽田正先生です。

イスラームの誕生

世界中で信仰されている宗教「イスラーム」。
現在、およそ18億人の信者を擁するイスラームは、7世紀の初め、アラビア半島に誕生しました。
その後、8世紀にかけて、イスラームの信仰者ムスリムは、カリフと呼ばれる指導者のもと、東は中央アジア、西はイベリア半島におよぶ広い地域を支配するようになります。
当初アラブ人が中心だったムスリムの王朝は、イラン人、トルコ人が参入し共存が図られることで、統治の体制が大きく変わっていきます。

ムスリムによる王朝の移り変わりを通して、7世紀から11世紀ごろまでの西アジア・中東の歴史をひもといていきます。

イスラームの教え

スーフィー
カーバ神殿

コーヒーを飲む3人。

羽田先生 「コーヒーは、もともとアラビア半島で、人々が薬として飲んでいました。」
マヤ 「UAEとかサウジアラビアとかがあるところですよね。」

羽田先生 「そうですね。そのアラビア半島で、だいたい500年ぐらい前、15世紀ぐらいに、スーフィーと呼ばれるイスラームの修行者の人がいるんですが、そういう人たちが夜の修行の時に、眠気覚ましにこれを飲んでいたんです。」

汰雅 「根本的なことになるんですが、『イスラーム』と『イスラム』は同じですか?」
羽田先生 「同じですね。アラビア語の発音だとイスラームって伸ばすんです。でも、例えばトルコの人は『イスラム』と言っているし、イランの人は『エスラーム』と言っていて、いろんなローカルな発音があります。
イスラームが誕生したのは、アラビア半島の『メッカ』というところです。ここには、カーバという神殿があって、ここに向けて皆さん年に1回巡礼にやってきて、カーバ神殿のまわりをぐるぐるまわったりするんですが、その信者がイスラーム教徒。『ムスリム』といいますが、今は18億人ぐらい、世界中にいるんです。」

メッカ
ムハンマド

世界に18億人の信者を擁するイスラーム。
その始まりは、7世紀のアラビア半島です。
アラビア半島西側に位置するメッカは、貿易の中継都市として繁栄し、おもにアラブ人が住んでいました。
のちにイスラームの創始者となる「ムハンマド」はメッカの商人の家に生まれ、貿易の仕事に携わっていました。

ヒラー山
預言者

やがてムハンマドは、メッカ郊外のヒラー山の洞窟にこもり、瞑想にふけるようになります。
40歳をすぎた610年ごろ、ムハンマドに、唯一絶対の神「アッラー」の言葉が伝えられました。
ムハンマドは、神の言葉を預かった者、つまり「預言者(よげんしゃ)」となったのです。
預言者ムハンマドは、“この世が終わる時に、天国に迎えられるためには、アッラーの教えに従って生きることが大事だ”と説きました。
しかし、メッカでは、部族ごとの神に対する信仰心が強く、ムハンマドが伝えた教え、イスラームは危険な思想として迫害を受けました。

メディナに移住
ウンマ

622年、ムハンマドは少数の信者とともに、メッカから300キロ北にある「メディナ」に移住します。
この地で、ムスリムと呼ばれるイスラームを信仰する人が、次第に増え、やがて共同体がつくられます。
この共同体は「ウンマ」と呼ばれ、ムスリムの共同意識を生みだしていきます。

ムスリムが増えたメディナで兵力を整えたムハンマドは、630年、故郷のメッカを征服します。
さまざまな部族の聖地・メッカにあるカーバ神殿から偶像を撤去し、イスラームの聖地としました。
その後、ムハンマドはアラブの部族を支配下に入れ、アラビア半島を統一します。

コーラン

ムハンマドがこの世を去ると、ムハンマドに伝えられたアッラーの言葉がまとめられ、聖典・コーランとなります。
教義の中心は、“神がムハンマドを通じて伝えた教えを守る”ということで、アラビア語で記されました。
その教え・規範は、政治、社会、文化の活動すべてにおよびました。

預言者と予言者

汰雅 「ムハンマドの描かれている絵、全部白く覆われているのか、塗られている感じだったんですが、あれは、何でなんですか?」

羽田先生 「ムハンマドは、普通の信者からみれば特別な人ですよね。すると崇拝する人が出てくる、だろうと。でも、ムハンマドは預言者っていうだけで、これは神の言葉を預かっている人なんですね。」

汰雅 「僕らが思う“よげんしゃ”は、未来を予想してって感じなんですが…。」

羽田先生 「字が違いますよね。言葉を預かる人なんです。だから、神が語っている言葉を預かって、皆さんに伝える人っていうのが預言者で、そういう意味では普通の人間なんですよ。

すると、そういう人を崇拝するのはよろしくない。なぜかっていうと、イスラームでは神が絶対で、崇拝すべきなのは神だけなんですね。ムハンマドに顔があって、それをみんなが変に崇拝することのないように、絵ではああいう白いものが書かれている。もちろん、実際のムハンマドは、ああいったものはつけていなかったんですけどね。」

汰雅 「そもそも、イスラームの教えは、どういうものがあったんですか?」

羽田先生 「これは、“唯一の神を信じましょう”。唯一の神というのは、THE GOD。アッラーっていうのはアラビア語のTHE GOD、『神』という意味なんですが、これを信仰する。そして、“神の前では人間はみんな平等である”と考えるわけですね。アッラーがこの世界を創ったし、滅ぼすこともできる、もうまもなくこの世は終わるはずであって、終わる以上、そのあとは天国に行くか地獄に落ちるしかない。もし天国に行きたければ、アッラーの教えに従って、彼が勧めることをやりなさい。ということをイスラームは言っているんですね。(ムハンマドが)そういう言葉を伝え、コーランに書かれています。」

5つの分類

汰雅 「天国行く人、地獄へ行く人は、どのように決めていたんですか?」

羽田先生 「イスラームでは、人間が生活する時のあらゆる行動は、この5つに分類できるんです。一番上の『すべきこと』というのは、例えば礼拝、巡礼、さらには断食であったり、これらはコーランに書かれていることですね。同時に、『してはいけないこと』も書かれていて、お酒は飲まない、豚肉は食べない、というのが記されていて、そういうことをやると、ダメなわけです。」

汰雅 「豚肉は、なんでダメなんですか?」

羽田先生 「もともとアラビア半島には、豚はあまりいないんですが、豚肉を食べると衛生上問題があって、当時病気になる人が多かったんです。こういうものは食べない方がいいと神がお命じになった、ということですね。」

マヤ 「生活習慣もその中に入っているんですね。」

汰雅 『した方がよいこと』っていう、あいまいなところは、どういうことなんですか?」

羽田先生 「私たちの常識で、“親孝行しましょう”とか“子どもはちゃんとかわいがりましょう”っていうことが、『した方がよいこと』のところに入ると考えていいと思います。私たちの価値観とあんまり変わらないと思います。

真ん中の『どちらでもよいこと』っていうのが、ほとんどですね。
さっき、我々が飲んだコーヒーなんかも、実はどちらでもよいことだし…。

特に『してはいけないこと』をやったからといって、いきなり地獄に落ちるわけではなくて、『してはいけないこと』をやってしまったら、『すべきこと』や『した方がよいこと』を繰返すことによって減点がなくなり、人間の生涯終わる時に、最終的にプラスであれば天国に行ける、そういう考え方ですね。」

マヤ 「柔軟性のある宗教ってことなんですね。」

羽田先生 「それが特徴ですね。」

イスラームの広がり

アブー・バクル
正統カリフ時代の領土

7世紀、ムハンマドが没するとアブー・バクルがムハンマドの後継者「カリフ」に選ばれ、共同体・ウンマの政治指導者となりました。

以後、第4代アリーまで、選挙によってカリフが選ばれた 時期を「正統カリフ時代」と呼びます。

カリフは、アラブ人のムスリムからなる軍隊をアラビア半島から各地に派遣、進出していきます。
651年、ササン朝を滅ぼし、現在のイランやイラクを領土とし、ビザンツ帝国からシリアやエジプトを奪い、征服地を広げていきます。

アリー
ウマイヤ朝時代の領土

アラブ人ムスリムの支配領域が拡大すると権限が強くなったカリフの座をめぐり争いが起きます。

その結果、第4代カリフのアリーは暗殺され、661年、対立していたウマイヤ家がシリアのダマスカスを都として、「ウマイヤ朝」を樹立します。
ウマイヤ朝では、ウマイヤ家がカリフを世襲(せしゅう)しました。

そして、アラブ人ムスリムが支配者となる政権を作り上げました。
ウマイヤ朝の時代にもアラブ人ムスリムは征服活動を続けます。
8世紀の初めには、東は中央アジアや北インドに達し、西では北アフリカの地中海沿岸におよび、さらにイベリア半島にも進出、領土を広げました。

征服地では、先住民のユダヤ教徒やキリスト教徒は、人頭税・ジズヤと土地税・ハラージュを納めれば、生命・財産の安全と信仰の自由が保障されました。

カリフの役割

マヤ 「カリフは選挙で決められたり、世襲になったり、いろんな形があったみたいですけど、どういった存在だったんですか?」

羽田先生 「これは、ムスリム全体の最高指導者ですね。政治的にも宗教的にもあらゆる面でリーダーであるはずなんですが、カリフたちは預言者ではないわけですから、どうしても宗教的な側面では“象徴”の意味しかなくなってきますよね。でも、政治社会上のリーダーであることは間違いないです。一種の皇帝、あるいは王とそれほど変わらないと考えてもいいかもしれないですね。」

マヤ 「そういったカリフのもと、ウマイヤ朝が拡大していくわけですけれども、征服された側に対して、イスラームへの改宗を強制することは?」

羽田先生 「原則としては、なかったと。もちろん場合によりますから、絶対なかったとはいえないと思いますね。多くの地域には、キリスト教徒やユダヤ教徒が多く、ゾロアスター教徒もいました。

こういう人たちは、ムスリムの支配を認めれば、その人たちの生命や財産は保障されますし、信仰は自由だったということです。この意味ではイスラームという宗教は、ほかの宗教と共存する方法を知っていたといえるかもしれませんね。」

マヤ 「ただ、ジズヤやハラージュといった税は、異教徒に対して徴収されたわけですよね。それから逃れるためにイスラームに改宗しますということにすれば、税金は…。」

羽田先生 「本来であれば、イスラームに改宗すれば、そういうのは払わなくていいはずなんですが、実際は征服者(アラブ人)と被征服者(非アラブ人)の関係があるので、イスラームに改宗しても被征服者の人たちは税金を徴収されました。」

汰雅 「そうなってくるとイスラームの教えでいう、信者はみんな平等っていうのが、ちょっと変わってくると思うんですが…。」

羽田先生 「そうですね。イスラームに改宗しても、征服した側のアラブ人と征服された側の非アラブ人の間には、やっぱり区別や差別があったということになりますよね。」

カリフとスルタン

アッバース朝の宮殿跡
バグダードの中心に円形の都市

ウマイヤ朝では、征服地の非アラブ人がイスラームに改宗しても、人頭税のジズヤと土地税のハラージュは徴収されました。

そんな不平等な体制に不満を持つ非アラブ人と、暗殺された第4代カリフ・アリーを支持する人々が、ウマイヤ朝に対する反体制運動を起こします。
彼らは、ムハンマドの叔父の子孫をカリフに擁立、750年、ウマイヤ朝を倒します。

こうして生まれたのが、「アッバース朝」です。

ティグリス川のほとりには、首都バグダードが建設されます。
その中心には、直径2キロ・周囲7キロほどの城壁をめぐらした円形の都市があり、最盛期のバグダードの人口は100万を数え、当時では世界最大規模の都市となりました。

4つの幹線ルート

アッバース朝では、非アラブ人もムスリムであれば、人頭税が免除され、アラブ人であっても土地税が徴収されました。
民族間の不平等な制度は廃止されたのです。

さらに、行政機構を整備してイラン人などを官僚に登用するなど、現地の実情にあわせた統治を進めました。

交易にも力を入れました。
各地に4つの幹線道路が生まれ、東西のさまざまな産物や文化がバグダードに集まり、繁栄を支えました。

ブワイフ朝がバグダードに進出

9世紀、アッバース朝のカリフは、騎馬戦士として優れていた中央アジアの遊牧民・トルコ人を奴隷とし、親衛隊として用いるようになります。
彼らは、軍事訓練を受けたのち、コーランを学びイスラームに改宗、「マムルーク(奴隷軍人)」と呼ばれるエリート軍人として軍隊の中核を担うようになります。

そんな中、イラン人による軍事政権「ブワイフ朝」が誕生し、バグダードに進出。
アッバース朝のカリフを保護下におくと、カリフの委任を受ける形をとり、統治を行います。
アッバース朝は実権を失い、王朝としての実質的な終焉を迎えました。

セルジューク朝

11世紀になると、イスラームに改宗したトルコ系騎馬遊牧民の一団が中央アジアから西アジアへと進出、「セルジューク朝」をおこします。
強力な軍隊を整えたセルジューク朝は、ブワイフ朝を倒し、1055年にバグダードに入城。

ブワイフ朝に代わって保護下においたアッバース朝のカリフから、「支配者の地位」を意味する「スルタン」の称号を授かります。
こうしてトルコ系の人々が実質的な支配者となりました。
スルタンの称号は、これ以降、君主の称号として広く用いられるようになります。

カリフとスルタンの関係

汰雅 「セルジューク朝の騎馬遊牧民って、相当強かったわけじゃないですか。なんでアッバース朝を倒すところまでいかなかったんですか?」

羽田先生 「アッバース朝は、カリフですよね。カリフは信徒の長と呼ばれていて、やっぱり権威なんですよ。だからムスリムにとって、そう簡単に倒すような存在ではないわけですね。」

マヤ 「スルタンもムスリムのリーダー格というか、君主の称号ですよね。カリフとスルタンというのは、どういう関係って考えたらいいですか?」

羽田先生 「カリフは、もともと宗教と政治、両方のリーダー。最高指導者だったわけですが、この頃になると宗教的な権威だけになって、世俗的な力はなくなっているわけですね、軍事力とかもなくなって。軍事力を持っていたのが、スルタンですね。」

汰雅 「日本でいうと、江戸時代の天皇と将軍みたいなイメージって考えたらいいですか?」

羽田先生 「天皇は宗教的だったかどうかはわかりませんが、そういうイメージですね。
ただし、少し時代が進んでくると、たくさんの人がスルタンを名乗るようになってきて、結果としてムスリムの指導者の、世俗的な君主の相当部分はスルタンになってしまうんです。
そういう意味では将軍のように1人だったわけではないから、少し違うかもしれないんですが、似ていますね。」

文化を理解し尊重する社会

マヤ 「先日、コンビニの駐車場で、ムスリムの方がお祈りをしているのを見かけました。
いま、日本に暮らし働くムスリムの方が、増えていますよね。企業や公的な場所に礼拝室を設けたり、信仰に配慮したハラルフードを扱う店も増えてきました。
お互いに文化を理解し尊重する社会でありたいですよね。」

それでは次回もお楽しみに!』

[FT]サウジとイスラエルの正常化、パレスチナ前進が条件

[FT]サウジとイスラエルの正常化、パレスチナ前進が条件
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB145BY0U2A710C2000000/

『中東は変革のまっただ中にいる。そのかじ取りを担っているのはサウジアラビアのムハンマド皇太子だ――。2018年5月、当時のイスラエルの駐エジプト大使だったダビッド・ゴブリン氏は、自国の建国記念日を祝うためにカイロのホテル「リッツカールトン」に集まったゲストに、こんなメッセージを伝えた。

中東歴訪中のバイデン米大統領は、イスラエルの後にサウジアラビアも訪れる=ロイター

サウジの事実上の最高権力者であるムハンマド皇太子は石油資源に恵まれた保守的な王国を改革する計画に乗り出しており、数十年間にわたってイスラエルと敵対した後、米国メディアに対し、イスラエル人には自分たちの土地を持つ権利があるとも語っていた。

アラブ4カ国は国交を回復したが

ゴブリン氏の発言から4年たった現在、アラブ4カ国がイスラエルと国交を正常化した。一方で、イスラエル評論家の1人が「王冠の宝石」と評したサウジアラビアは国交の樹立に向けた慎重な構えを崩していない。

石油増産の確保を目指すために中東を歴訪中のバイデン米大統領は、イスラエルとの関係改善のタイムスケジュールについて、サウジ政府に強く働きかけると見られている。

だが、大統領は、イスラム聖地の守護者でありイスラム世界のリーダーであると自任するサウジからは「まだ用意ができていない」と伝えられるだろうと、あるサウジ関係者は語る。

サウジ高官らは公の場では、イスラエルがパレスチナとの紛争を解決した時に初めてイスラエルとの関係正常化が可能になると繰り返してきた。パレスチナ国家樹立と引き換えにイスラエルとの関係正常化を約束した02年の和平構想を主導したサウジ政府は、この立場は今も変わらないとしている。

王室周辺の考えをよく知るある関係者は、サウジを花嫁候補になぞらえ、王国はおおがかりなジェスチャーを求めていると話す。「ダイヤモンドの結婚指輪を用意してプロポーズする必要がある。それはパレスチナ問題の実質的な前進だ」と言う。

「サウジはイスラム、アラブ世界において譲れない特別な地位にあり、イスラエル側は表面的な変化だけで、サウジとの関係正常化に持ち込めると思わない方がいい」

だが、結婚願望は勢いを増しているようで、イスラエルもサウジも関係改善への興味を示している。バイデン氏は今回の中東歴訪で、エジプトが17年にサウジに譲渡した紅海の2つの島への多国籍軍の駐留についてイスラエル、エジプト、サウジの合意をまとめると見られている。イスラエルからアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、インドへ向かう民間機の上空通過を認めることに同意したサウジは、さらに多くのフライトの通過を認める方針だ。

両国共通の「宿敵」はイラン

欧米のある外交官によると、サウジとイスラエルが共通の敵であるイランと対峙するなか、両国は機密情報共有と安全保障関係も深めると見られている。イラン政府は、イエメンに対するサウジ主導の軍事介入に対抗する一方でサウジ国内の石油施設をも襲撃したイエメンの武装組織フーシ派を支援している。ムハンマド皇太子はイスラエルのことを「潜在的な同盟国」とまで踏み込んで表現した。

かつては超保守的な考えのイスラム教と激しい反ユダヤ主義の学校教科書で有名だったサウジアラビアにおける風潮の変化は、現地のテレビにまで及ぶ。ある番組では、サウジ男性がパレスチナ人のことを恩知らずと言及しながら、サウジはイスラエルと和平を結ぶべきだと発言した。

一部のインフルエンサーは日常的に、当局によって厳しく監視されているSNS(交流サイト)上でイスラエルとの和平のメリットを訴えている。

10年前、20年前であれば、イスラエルとの和平を口にしようものなら、サウジ人から不信の目、下手をすればあからさまな敵意を向けられた。この状況は変わった。特に、イランがとうの昔にサウジの宿敵としてイスラエルに取って代わったと広く認識されている。

しかし、首都リヤドのレストランが立ち並ぶ人気の大通りでは、サウジの若者たちはイスラエルに対して複雑な見解を抱いていた。

営業の仕事に就いている20代のラードさんは、イスラエルとの和平は「国の防衛にとってプラスになる」と話す。「どこかの国と同盟を組みたいのであれば、メリットがほしい。そしてイスラエルはイランと対立しているから、我々は恩恵を受ける」

若手銀行員のムハンマドさんは、イスラエルには反感を抱いていないと言い、「イスラエルを訪れたサウジ人がいるが、何の問題にも見舞われなかった」と話す。だが、友人のハレドさんは意見が違う。「イスラエルとかかわることには一切反対する。たとえ恩恵があるとしても、よそでも見つけられる。これは信念の問題だ」と語った。

保守派層に根強く残る懸念

反対派はムハンマド皇太子に懸念の目を向ける。映画館の設置解禁のほか、女性の運転や男女が同席するパーティーを認めた皇太子の改革は行き過ぎだ、とあるサウジ高官は言う。さらに、人口の大きな部分を占める保守派層のことを考れば、イスラエルとの条約は後回しでいいと付け加えた。

「UAEはイスラエルと関係を正常化させるまで、(UAEのムハンマド大統領が)12年間にわたって努力を重ね、筋道立てて国民を納得させなければならなかった。サウジの人々はそれ以上に懐疑的だという前提を信じるのであれば、(サウジのムハンマド皇太子は)大きく国民の心を動かさなければならない」。UAEの動きについて詳しい人物は指摘する。

サウジの消息筋は、イスラム世界における地位を考えると、サウジは20年にイスラエルと国交を正常化したUAE、モロッコ、スーダン、バーレーンよりも厳しい条件が求められると思うと話している。

それでも、サウジは徐々に外の世界に国を開いてきた。イスラエルのビジネスマンは、可能であれば別のパスポートを使うとはいえ、サウジアラビアをよく訪れるようになった。イスラエル人であることを隠そうともせず、サウジ国民ももう気にしていない。

「我々とビジネスをすることにどれほど前向きか、絶えず驚かされている。実際、非常に大きな励みになる」。イスラエルのあるビジネスマンは、最近サウジを訪れた後、こう語った。

リヤドでは、ユダヤ教超正統派の衣装をまとったイスラエル系米国人のラビ(指導者)、ジェイコブ・ヘルツォグ師の姿をよく見かける。同師は定期的にサウジを訪問し、市内を歩き回ることを好み、サウジ市民からよく一緒に自撮り(セルフィー)におさまってくれるようにせがまれる。「サウジ人からの反応は素晴らしい。みな敬意を示してくれるし、私は良い経験しかしていない」

By Samer Al-Atrush

(2022年7月13日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.』

米・印・UAE・イスラエル、食料安保などで協力

米・印・UAE・イスラエル、食料安保などで協力
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR14C1G0U2A710C2000000/

『【ドバイ=福冨隼太郎】米国、インド、アラブ首長国連邦(UAE)、イスラエルの4カ国首脳は14日、食料安全保障や再生可能エネルギーなどで協力を進めるとする共同声明を発表した。UAEが20億ドル(約2800億円)を投じて、インドで環境負荷を抑えつつ作物の収穫を増やす事業などを盛り込んだ。

バイデン米大統領が同日、訪問先のイスラエルのラピド首相とともに、インドのモディ首相、UAEのムハンマド大統領とオンラインで会合を開いた。4カ国の国名の頭文字を取った「I2U2」と呼ばれる枠組みによる初の首脳会合だ。UAEとイスラエルは米国の仲介で2020年に国交を樹立している。

インドで開発する拠点では、再生可能エネルギーや水資源保全などの技術を活用して気候変動に強い食料生産体制につなげる構想だ。米国やイスラエル企業が技術協力などを進める。4カ国はインドでの再生可能エネルギー事業の拡大も目指す。

声明には「エネルギー、交通、宇宙、保健などの共同投資や新たな構想に特に重点を置く」とも記し、I2U2の枠組みで連携をさらに進める方針も示した。』

ウクライナ穀物輸出、黒海に「回廊」 共同監視で合意

ウクライナ穀物輸出、黒海に「回廊」 共同監視で合意
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1467A0U2A710C2000000/

『トルコのアカル国防相は13日、黒海にウクライナ産の穀物を輸送する「回廊」を設置する方向で合意したと発表した。同日イスタンブールでウクライナ、ロシア、国連との4者協議を開き、回廊を共同管理することなどで一致した。世界的な穀物価格上昇や供給不足の緩和につなげる。

アカル氏の声明によると、黒海の出入り口にあたるイスタンブールに共同管理センターを設け、仲介役の国連、トルコを含む4者で貨物船の出入りなどを監視する。来週にも再度イスタンブールで会合を開き、詳細を詰めたうえで合意文書への署名を目指す。

国連のグテレス事務総長は、最終合意に向けてはなお努力が必要だとしたうえで「世界の飢餓を緩和する希望の光だ」と期待を示した。

グテレス氏によると、4者協議ではウクライナが沿岸防衛のために敷設した黒海の機雷撤去を巡っても進展があった。ウクライナは機雷を撤去すれば、ロシアがその隙から南部オデッサなどの重要拠点を狙う可能性があると懸念していた。詳細は明らかになっていないが、回廊の共同監視で懸念を払拭する仕組みが議論されたとみられる。

ウクライナのゼレンスキー大統領は13日夜のビデオ演説で、協議では一定の進展があったとして「黒海の航行でロシアの脅威が取り除けたら、深刻な世界の食糧危機を軽減できる」と指摘。数日中に詳細について合意できるとの見通しを示した。

ロシア国防省は13日の協議前の声明で「迅速で実効的な解決に向けた提案パッケージを提案した」と述べていた。

ウクライナは小麦輸出で世界5位の穀倉地帯で、2月下旬に始まったロシアの侵攻は世界的な穀物価格の上昇を招いた。米シカゴ商品取引所の小麦先物は3月、一時1ブッシェル13ドル台後半の過去最高値を付けた。足元でも1年前と比べて3割高い。

黒海の出入り口にあたるイスタンブールを航行する貨物船(13日)=AP

ウクライナは陸路に加え、ルーマニア国境のドナウ川河口から黒海南部に抜ける航路を今月に入って稼働させるなど、ロシアに制圧された黒海北岸以外の輸送路拡大を進めていた。ただ主要な輸出拠点だった南部オデッサやミコライウの取扱量には及ばず、2000万トン以上の穀物がオデッサなどで滞留している。

4者協議に注目が集まった13日の小麦相場は、3月の高値から4割安い1ブッシェル8ドル台前半で推移したが、日本時間14日夕時点では反発している。「輸出再開への不信感や侵攻前の水準で推移している値ごろ感」(マーケットエッジの小菅努代表)があるという。

農林中金総合研究所の阮蔚理事研究員は「今回の基本合意は、実際に輸出が進めば小麦価格の下落につながるので喜ばしいニュースだ」と評価する。一方、ウクライナ側はロシア軍による農地への放火も主張している。「黒海ルートが元に戻ってもウクライナ産の輸出量が完全に戻るには数年かかる」(阮蔚氏)

13日に実現したウクライナとロシアの対面協議が中長期的な停戦につながるかどうかは見通せない。記者会見で停戦の可能性について問われたグテレス氏は「現時点で和平合意の展望は見えない」と述べた。

(イスタンブール=木寺もも子、山本裕二)』

サウジ領空のイスラエル機飛行容認、バイデン氏が歓迎

サウジ領空のイスラエル機飛行容認、バイデン氏が歓迎
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN151I00V10C22A7000000/

『【エルサレム=中村亮】バイデン米大統領は14日、サウジアラビアが基準を満たすすべての民間航空機に領空の飛行を認めたことを歓迎する声明を発表した。これまで原則認められなかったイスラエル機を含むとみられ、イスラエルとアラブ諸国の関係強化をめざすバイデン政権の方針に沿った措置になる。

バイデン氏は声明で「数カ月にわたってサウジと粘り強く外交を展開した結果だ」と強調した。「この決定はより統合し、安全で安定した中東地域への道を開くもので、米国とイスラエルの安全保障と繁栄に不可欠だ」と述べた。

サウジとイスラエルは両国を結ぶ直行便の開設を協議してきた。バイデン氏は15日、米大統領として初めてイスラエルからサウジに航空機で直行する予定だ。今回の中東歴訪はイスラエルとアラブ諸国に協力を深めるよう働きかけ、敵対するイランの包囲網を形成する狙いがある。』

スリランカで経済危機 なぜ大統領が国外脱出?いったい何が?

スリランカで経済危機 なぜ大統領が国外脱出?いったい何が?
https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/qa/2022/07/14/23764.html

『スリランカで大統領公邸が占拠され、デモ隊が公邸のプールで泳ぎジムでトレーニング。
大規模な抗議デモを受けて、大統領は国外に脱出する事態に。

一体何が起きてるの?
そもそもスリランカってどんな国?

解説します。

スリランカってどこにある?

インドの南、インド洋に浮かぶ島国です。
面積は北海道より少し小さいぐらい、人口はおよそ2200万。

最大都市のコロンボは南西部の沿岸に位置する国の経済の中心地で、首都はコロンボ郊外のスリジャヤワルデネプラ・コッテです。

そもそもスリランカってどんな国?

スリランカの最大都市コロンボ

多民族国家で、人口のおよそ75パーセントを仏教徒中心のシンハラ人が占めています。このほか、ヒンズー教徒が中心のタミル人が15パーセントあまり。イスラム教徒が10パーセント近く、キリスト教徒も7パーセントあまり暮らしています。

仏教寺院などの世界遺産があるほか、イギリスやオランダの植民地だった時もあり、ヨーロッパ風の風情もあります。紅茶や宝石が有名で、観光客にも人気です。

いま何が起きているの?

コロンボのデモ隊(2022年7月13日)

スリランカでは経済危機が深刻化し、ことし3月以降、政権の退陣を求めるデモが繰り返し起きていました。

そして、7月9日には大規模な抗議デモが広がり、最大都市コロンボではデモ隊の一部がゴタバヤ・ラジャパクサ大統領の公邸を占拠する事態に発展。公邸に入った人たちがプールで泳いだり、ジムでトレーニングをしたり、ベッドに寝転がったりする様子が世界中に配信され、衝撃を与えました。

大統領公邸のプールに入るデモ隊(2022年7月9日)

大統領は事前に公邸を出て不在でしたが、こうした事態を受けて、辞任する意向を議会に伝えたのです。

なぜ経済危機が起きたの?

コロンボの港湾開発(2019年)

スリランカはインフラ整備を進めるため借金を繰り返し、対外債務の残高は2021年末の時点で507億ドル(日本円でおよそ7兆円)に膨らんでいます。

新型コロナウイルスの影響による観光客の激減なども重なり、深刻な外貨不足に陥りました。

また、ロシアによるウクライナ侵攻で原油価格が高騰する中、外貨不足で輸入が滞り、ガソリンなどの燃料費も高騰。食品や医薬品などの生活必需品の輸入も滞るようになっています。

こうした経済危機の根本的な原因は財政運営や農業政策の失敗、それに汚職にあるとしてラジャパクサ政権に対する不満が高まっていました。

ラジャパクサ政権、何が問題だったの?

ゴタバヤ・ラジャパクサ氏(2022年2月)

国民の間ではラジャパクサ一族が権力を独占しているという批判が出ていました。

ゴタバヤ・ラジャパクサ氏は2019年の選挙で勝利し大統領に就任しましたが、2015年まで2期10年にわたって大統領を務めた兄のマヒンダ・ラジャパクサ氏の元で国防次官を務めていました。兄弟で合わせて10年以上大統領として実権を握り、首相や財務相に親族をあてるなど一族支配を強めてきました。

また、ラジャパクサ政権は兄弟ともに中国に近いとされ、中国企業などによる大規模な開発事業で国の借金を増やす一方、私腹を肥やしてきたという批判にもさらされています。
2017年には中国からの融資を受けて南部ハンバントタに建設した港の運営権がローンの返済が滞ったことを理由に99年間にわたって中国側に譲渡され、いわゆる「債務のわな」の典型例といわれています。 

今後どうなるの?

大統領が辞任すれば、長年、スリランカの政治の要職を占めてきたラジャパクサ一族による支配が終わることを意味します。

ただ、誰が大統領になってもこれだけ政治的、経済的な混乱が広がった国のかじ取りをするのは簡単ではありません。

政府は財政再建策を8月にも発表するとしていますが、当面は海外からの支援に頼らざるを得ないのが実情で、IMF=国際通貨基金との間で資金融資の協議を進めているほか中国やインド、ロシア、それに日本などに支援を求めています。

深刻な燃料不足や50%以上にもなる急激なインフレは今後も悪化する見込みで、仮に新たな政権が誕生しても人々の生活の改善には長い時間がかかるとみられます。』

ロシア メディア統制強化の改正法成立

ロシア メディア統制強化の改正法成立
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220715/k10013680381000.html

『ロシアでは14日、国内外のメディアが誤った情報や偽のニュースを伝えたとみなされた場合、一定期間の活動停止や登録の無効を命じる権限を検察トップの検事総長に与える改正法が成立しました。

対象は、ロシアの人々の生命財産や公共の秩序を脅かす誤った情報のほか、軍の信用失墜につながる情報を流したとみなされた国内外のメディアです。

また、活動停止の期間は、▼はじめは3か月以内、▼繰り返せば6か月以内と定められ、▼さらに違反が繰り返されていると判断されれば、メディアの登録が抹消される可能性もあるとしています。

さらに、外国でロシアのメディアの活動が禁止されたり制限されたりした場合は、対抗措置としてその国のメディアのロシア国内での活動を禁止または制限できるとしています。

ロシアでは、ことし3月に情報統制の強化につながる改正法が成立しましたが、ウクライナへの軍事侵攻の長期化に伴い、プーチン政権への厳しい批判を続ける海外メディアに対して合法的な活動の停止までちらつかせながら、圧力を強める姿勢を鮮明にした形です。
ロシア 軍事侵攻の長期化を見据え法整備

ロシアでは、ウクライナへの軍事侵攻のさらなる長期化を見据えて、複数の法案が議会で可決され、14日、プーチン大統領が署名し、成立しました。

成立した法律の1つは、国家への反逆行為を罰するもので、軍事行動や紛争の途中で、敵側についた場合、最大で懲役または禁錮20年の刑に処することなどが定められました。

また、国外で活動する軍や治安機関を支援するため、政府が特定の企業に対し、物資の提供を強制する法律も成立し、これによってプーチン政権はウクライナでの「特別軍事作戦」に必要な兵器の修理や物資の供給に関する需要に対応できるようになります。』

メラニアトランプ置換陰謀論

メラニアトランプ置換陰謀論
https://en.wikipedia.org/wiki/Melania_Trump_replacement_conspiracy_theory

『(※ 原文は、英文。翻訳は、Google翻訳)

メラニアトランプ置換陰謀論
論文 話

言語
時計
編集

メラニア・トランプ交代陰謀論は、米国のファーストレディが代用された、または時には交代された、ボディダブル[1] [2] [3]であり、「本物」であると述べ始めた陰謀論です。メラニアは死んでいたか、時折のイベントに出席することを拒否したか、または完全に公の生活から抜け出しました。理論の支持者は、顔の特徴、体の大きさ、または元のメラニアと想定される「交換」メラニアの間の行動の物理的な違い、およびメラニアを参照する際のドナルド・トランプ大統領の言葉の変化を主張しています。
2018年3月、アラバマ州のドナルドとメラニアトランプ。ここに描かれている女性は本物のメラニアではないと信じている人もいます。

トランプ政権のいくつかの時期、特に2017年10月に、理論が生まれました。[1] [4] [5] [6] [7] 2018年5月から6月、[8] [9] 2019年3月、[3] [10] [ 11]そして2020年10月。[12]トランプ自身は、ツイートや記者へのコメントを通じて理論に取り組み、それを虚偽の「偽のニュース」として非難した。[13]

多くの主流メディアの情報源は理論を誤ったものとラベル付けし、一部はそれを「ばかげた陰謀理論」[4]と「非物語」とラベル付けしました。[1]ウェブサイトVoxは、この理論をファーストレディを取り巻くさまざまな物語に準拠していると説明しました。の”。[14]
コンテンツ

オリジンズ編集

2017年、ガーディアンのコラムニスト、マリーナハイドは、10月13日に「最近、メラニアがメラニアのなりすましによって演じられていることを絶対に確信しています。理論:彼女は数週間前に彼を去った」とツイートし、誤って理論を発表したと主張しました。[7]しかし、Business Insiderは、ハイドがツイートする前の月から2倍のボディについて推測しているツイートを参照しました。[4]この理論を支持するために10月13日に公開された女優AndreaWagnerBartonによるFacebookの投稿は、10万回近く共有されました。[4]

理論を議論するソーシャルメディアの投稿は、メラニアが彼女の隣に描かれた女性、明らかにシークレットサービスのエージェントに非常に似ている写真を指摘しました[4]、他の投稿はトランプが声を出して「私の妻、メラニア、ここにいる」。[2] [4] [5] [6]

2018年5月14日、メラニアは塞栓術を受けたと報告されています。これは、良性の腎臓の状態を治療するために血管を意図的に塞ぐ低侵襲手術です[15] 。報告によると、この手順は成功し、合併症なく実行されました。[16]この期間中、メラニアは5週間公に見られず、ホワイトハウスもこの期間のほとんどの間彼女の不在についてコメントすることを拒否し、さらなる理論を生み出した。[17]ある例では、メラニアについて尋ねられたとき、トランプはプールの記者に、明らかに空の問題の窓を指して、窓から彼らを見ていると言った。[9]手術後のホワイトハウスへのメラニアの報告に続いて、トランプは彼女の名前を「メラニー」と間違えた歓迎をツイートした。[18] [19]

メラニアの公の姿に関する別の理論は、彼女が手術からの回復に費やした時間の後に仮定され、メラニアは整形手術、おそらくは美容整形または乳房の拡大を行ったため、彼女は異なって見えるというものでした。[20]

ボディダブル理論は、ブリュッセルのエアフォースワンを出るメラニアの画像に端を発して、2018年7月に再び発生しました。[21]理論は、アラバマの竜巻サイトへのトランプの訪問に続いて、2019年に再び提起されました。テレビ番組のザ・ビューには、「#fakeMelaniaハッシュタグの下での元ファッションモデルのアラバマの登場についてのインターネットのおしゃべりの急増」に関するセグメントがありました。[10]

理論は2020年10月に再び浮上し、オブザーバーはメラニアとトランプを最後の大統領討論に同行した女性との違いを発見しました。ザック・ボーンスタイン監督は、「この政権から私が見逃す唯一のことは、彼らが新しいメラニアに交換し、グッピーを持った4歳のように気付かないふりをしていることだ」とツイートした。[12]元ホワイトハウス通信ディレクターのアンソニー・スカラムチは、 「あなたは注意を払っていますか?」のゲストが噂を確認しているようでした。、「あなたはマイケル・コーエンを知っています、大統領の弁護士は、体が二重になっていると主張し、実際には彼女の妹がキャンペーンの道で彼女に取って代わることがあると主張しています…通常、誰かがトランプ氏にもっと愛情を持っているのを見るとき。」[22]

応答編集

2018年3月のアラバマへの旅行に続いて、ドナルド・トランプは「メラニアのフェイクニュースのフォトショップ写真は、アラバマや他の場所で私の側にいるのは実際には彼女ではないという陰謀説を推進した」とツイートした。[10] [23]トランプはフォトショップで撮った写真の証拠を何も与えなかった。[23]メラニアのスポークスウーマンは、ザ・ビューのセグメントを「恥ずべき」[24]そして「ささいなことを超えて」と呼んだ。[25]

ある学者、ペンシルベニア大学の歴史学教授ソフィア・ローゼンフェルドは、メラニアの交代の陰謀論は、著名人の同様の主張の長い列に従っていると述べました。ミシェル・オバマやメラニア・トランプを主張する今日の「ニュース記事」の祖先は、実際には男性、または体の二重、またはレズビアン、またはその他の凶悪なものです。」[26]

パロディー編集

深夜トークショーのホストであるスティーブンコルベールは、2019年に女優のローラベナンティとクリスティーンバランスキーの両方をメラニアのなりすましとして彼のショーに出演させることで、スティーブンコルベールとのレイトショーの理論をパロディー化しました。 [27]
2020年10月、セスマイヤーズは、アンバーラフィンにメラニアのなりすましを描写させることで、セスマイヤーズとの彼のショー「レイトナイト」で理論をパロディ化しました。[28]
TraceyUllmanのコメディシリーズTraceyBreaksthe Newsは、メラニアトランプ(Carlotta Morelli)が実際にロシア政府によって作成され、制御されているロボットであるといういくつかのエピソードで理論をパロディー化しました。[29]

も参照してください編集

アヴリル・ラヴィーンの交代陰謀論
ドナルド・トランプが推進する陰謀説のリスト

参考文献編集

「ホワイトハウス:メラニアボディダブル非ストーリー」。CNN。2017年10月19日。2017年10月20日のオリジナルからアーカイブ。2019年12月9日取得。
「ドナルドトランプは偽のメラニアを使用していますか?陰謀説はソーシャルメディアに殺到します」。BBC。2017年10月19日。 2017年10月19日のオリジナルからアーカイブ。2019年12月19日取得。
Bruney、Gabrielle(2019年3月9日)。「『偽のメラニア』陰謀論が帰ってきた」。エスクァイア。2019年3月13日にオリジナルからアーカイブされました。2019年12月9日取得。
テイラー、ケイト(2017年10月18日)。「インターネットは、メラニア・トランプがボディダブルに取って代わられたというばかげた陰謀説に夢中になっている」。ビジネスインサイダー。2017年10月18日にオリジナルからアーカイブされました。2019年12月7日取得。
コルバーン、ランドール(2017年10月18日)。「ホットな新しい陰謀説:メラニア・トランプはボディダブルに置き換えられました」。AVクラブ。2017年10月19日にオリジナルからアーカイブされました。2019年12月7日取得。
「メラニア・トランプがロボットに取って代わられたという陰謀説があります」。イブニングスタンダード。2017年10月19日。 2017年10月19日のオリジナルからアーカイブ。2019年12月9日取得。
ハイド、マリーナ(2017年10月19日)。「『メラニア・トランプのボディダブル』陰謀説を始めたのは誰ですか?もう探す必要はありません」。ガーディアン。2017年10月19日にオリジナルからアーカイブされました。2019年12月10日取得。
Hale-Stern、Kaila(2018年6月4日)。「なぜ人々はメラニア・トランプが「行方不明」であることに気を悪くしているのか ” 。TheMarySue。2018年6月5日のオリジナルからアーカイブ。2019年12月9日取得。
Heil、Emily(2018年5月5日)。「トランプは、ファーストレディーが 『素晴らしいことをしている』と言っています。彼女は2週間公の場で見られていません」。ワシントンポスト。2018年5月25日にオリジナルからアーカイブされました。2019年12月9日取得。
” ボディダブルに関する「偽のメラニア」陰謀説は「破壊された」とトランプは言う」。サウスチャイナモーニングポスト。2019年3月14日。2019年3月13日のオリジナルからアーカイブ。2019年12月9日取得。
「メラニアトランプは体が2倍になっていますか?」。フォックスニュース。2019年3月28日。2019年3月14日のオリジナルからアーカイブ。2019年12月9日取得。
” 「偽のメラニア」陰謀説は、写真がバイラルになるにつれて再び出現します」。メトロ。2020-10-25。2020-10-31のオリジナルからアーカイブ。2020-10-25を取得。
「ボディダブルなし:トランプは#FakeMelania理論を爆破します」。AP通信。2019年3月13日。2019年3月13日のオリジナルからアーカイブ。2019年12月18日取得。
Abad-Santos、Alex(2017年10月20日)。「「偽のメラニア」陰謀説、説明」。Vox。2020年12月9日にオリジナルからアーカイブされました。2019年12月26日取得。
Scutti、スーザン。「メラニア・トランプの手順について私たちが知っていること、そして知らないこと」。CNN。2018年5月16日にオリジナルからアーカイブされました。2018年6月6日取得。
Singman、Brooke(2018年5月14日)。「病院のファーストレディメラニアトランプは、「成功した」腎臓手術を受けました」。フォックスニュース。2018年5月15日にオリジナルからアーカイブされました。2018年5月15日取得。
Karni、Annie(2018年5月29日)。「メラニアのホワイトハウス沈黙は陰謀説をかき立てる」。ポリティコ。2021年1月14日にオリジナルからアーカイブされました。2021年3月13日取得。
「トランプは病院からホワイトハウスに戻ったときのツイートでメラニアの名前のつづりを間違えた」。2018年5月20日。2021年2月4日のオリジナルからアーカイブ。2019年12月11日取得?www.theguardian.com経由。
「ドナルドトランプは「ウェルカムホーム」ツイートでメラニアの名前のスペルを間違えました」。スカイニュース。2018年5月20日。2021年1月24日のオリジナルからアーカイブ。2019年12月19日取得。
「メラニアトランプの秘密の手術は本当に胸の拡大でしたか?バイラルビデオはオンラインで噂を引き起こします」。www.inquisitr.com。2018年8月29日。2021年1月26日のオリジナルからアーカイブ。2019年12月30日取得。
Shamsian、Jacob(2018年7月12日)。「メラニア・トランプがボディダブルを持っているという噂は、彼女がエアフォースワンを去るというこれらの画像が表面化した後、再燃しました」。インサイダー。2021年3月13日にオリジナルからアーカイブされました。2019年12月30日取得。
” 「偽のメラニア」:ホワイトハウスの内部関係者が噂を確認する」.au.finance.yahoo.com。 2020年11月23日にオリジナルからアーカイブ。 2020年11月4日取得。
Oprysko、Caitlin。「トランプは、ファーストレディの写真を編集して 『偽のメラニア』陰謀説をかき立てたとメディアを非難している」。ポリティコ。2021-03-13にオリジナルからアーカイブされました。2021-03-13を取得。
「トランプはメラニアの「ボディダブル」陰謀説に踏み込んだ」。ストレーツタイムズ。2019年3月14日。2019年12月17日のオリジナルからアーカイブ。2019年12月17日取得。
ヤシャロフ、ハンナ。「メラニア・トランプの担当者が「ザ・ビュー」のボディダブルセグメントを非難:「ささいな、意地悪な女の子の精神を超えて」 ” 。USATODAY。2019-12-19にオリジナルからアーカイブ。2019-12-19を取得。
ソフィア・ローゼンフェルド、民主主義と真実:短い歴史(ペンシルベニア大学出版局、2018年)、13ページ。
クォン、ジェシカ(2019年3月16日)。「ウォッチ:メラニアトランプのなりすましは、#FakeMelaniaボディダブル陰謀説の後に再び現れます」。ニューズウィーク。2021年1月12日にオリジナルからアーカイブされました。2019年12月19日取得。
モラン、リー(2020年10月30日)。「町に新しい偽のメラニアトランプがあります」。HuffPost。2021年2月12日にオリジナルからアーカイブされました。2021年1月30日取得。

「英国の「国宝」、「強力な女性」を演じるトレイシー・ウルマン」。ローリングストーン。2017年10月28日。 2018年6月16日のオリジナルからアーカイブ。2017年10月30日取得。

3日前に71.167.161.27によって最後に編集されました
関連記事

ジャック・ポソビエック

アメリカのコメンテーター兼陰謀論者
メラニアトランプの文化的描写

アヴリル・ラヴィーンの交代陰謀論

ミュージシャンのラヴィーンが死んだと主張するデマ

ウィキペディア

特に記載がない限り、コンテンツはCCBY-SA3.0で利用できます。

プライバシーポリシー
利用規約
デスクトップ 』

メラニア・トランプ

メラニア・トランプ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%A9%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97

『メラニア・トランプ(Melania Trump, 出生名: メラニア・クナウス(スロベニア語: Melanija Knavs, 英語: Melania Knauss)、1970年4月26日 – )は、ユーゴスラビア(現:スロベニア)のノヴォ・メスト出身の元モデル。アメリカ合衆国の著名な実業家であり、第45代アメリカ合衆国大統領であったドナルド・トランプの3人目にして現在の妻(ファーストレディ)である[1][2]。外国出身のファーストレディは、イギリス出身のルイーザ・アダムズ(第6代大統領夫人)に次ぐ史上2人目で190年ぶりである[3]。身長5フィート11インチ(約180センチメートル)[4]。

人物・来歴

生い立ち

1970年に当時のユーゴスラビア社会主義連邦共和国(現在のスロベニア)で、スロベニア共産主義者同盟(共産党)党員[5][6]で国営自動車企業で働く父と子供服メーカーで働く母[7]の家に生まれる。

リュブリャナの高校に進学するためにセヴニツァを去った[8]。

リュブリャナ大学を一年で中退後、モデルとして活動していた。1996年にユーゴスラビア内戦の影響(ただし、スロベニアは旧ユーゴでは比較的安定していた)で故郷を離れて渡米[9]。

アメリカ合衆国にて

2001年にはアメリカの永住権を取得し、2005年1月22日に90年代に知り合ったトランプと結婚した。結婚式にはトランプが過去10回献金[10]してきたヒラリー・クリントンとビル・クリントンのクリントン夫妻が主賓で出席した[3]。

2006年には息子のバロン・ウィリアム・トランプが生まれ、アメリカの国籍(市民権)を取得した。

2016年アメリカ合衆国大統領選挙に立候補した夫の応援演説にも立ち、この選挙で夫のドナルドが当選を果たし、ファーストレディの傍ら宝飾品や腕時計をデザインしている。

2017年10月、夫ドナルドの先妻であるイヴァナ・トランプが「ファーストレディ」を自称したことに対して「著書の販促のための単に注目されたいだけの自分勝手な発言だ」と報道官を通じて猛反発した。大統領夫人と先妻が表立って対立したのはこれが初めてとされる[11]。

2018年6月には夫ドナルドの移民政策を批判しており[12]、移民出身ゆえに政治的思想は夫ドナルドに比べてリベラルとされる。

私生活

宗教

メラニアと教皇フランシスコ(2017年5月)

2017年5月、大統領とバチカンを訪問した際、カトリック教徒であることが判明した。彼女はジョン・F・ケネディ大統領とジャクリーン夫人以来、ファーストレディーとしては2人目のホワイトハウスに居住するカトリック教徒であった。

別人説

「メラニア・トランプ別人説(英語版)」も参照

トランプ大統領在任中、メラニアは別の人間に置き換えられたという陰謀論が出回った。夫ドナルドは「フェイクニュース」としてこの説を否定している[13]。』

イヴァナ・トランプ

イヴァナ・トランプ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%8A%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97

『この項目は訃報が伝えられた直後の人物について扱っています。その人物の死の詳細や取り巻く環境また状況が知れ渡っていくに従い、この項目の内容もまた急速に大きく変化することがありますのでご注意ください。

2022年7月15日 (金) 00:13 (UTC)貼付。(表示終了予定:2022年7月22日 (金) 00:13 (UTC))

Wikinews tag obituary.svg
イヴァナ・トランプ
Ivana Trump.jpg
2007年10月撮影
生誕 Ivana Marie Zelni?kova
1949年2月20日
チェコスロバキアの旗 チェコスロバキア
(現・チェコ共和国)
モラヴィア、ズリーン
死没 2022年7月14日(73歳没)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ニューヨーク州ニューヨーク
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
別名 イヴァナ・マリエ・トランプ
職業 ビジネスマン、モデル、著者、社交界の名士
活動期間 1970年 – 2022年
配偶者 Alfred Winklmayr
(m. 1971; div. 1973)

ドナルド・トランプ
(m. 1977; div. 1992)

Riccardo Mazzucchelli
(m. 1995; div. 1997)

Rossano Rubicondi
(m. 2008; div. 2009)
子供 ドナルド・トランプ・ジュニア
イヴァンカ・トランプ
エリック・トランプ

イヴァナ・マリエ・トランプ(Ivana Marie Trump、1949年2月20日 – 2022年7月14日)は、チェコスロバキア出身のアメリカの実業家。元ファッションモデル。ドナルド・トランプの元妻。ドナルド・トランプ・ジュニア、イヴァンカ・トランプ、エリック・トランプは実子。1972年札幌オリンピックのチェコスロバキアのアルペンスキー補欠選手を自称した[1]。

プロフィール

生い立ち

チェコスロバキア社会主義共和国のゴットワルドフ(現在はチェコの都市、ズリーン)で、イヴァナ・マリエ・ゼルニーチコヴァー(Ivana Marie Zelni?kova)として生まれた。子供時代は、彼女のスキーの才能を見抜いた実父によって特訓を受けていた。

国外へ

12歳の時にはより厳しい訓練を望む父親によって共産主義体制の思想教育キャンプにおくられたと本人は語っている[2][3]。1968年にチェコスロバキアのスキー・ナショナルチームの一員に選ばれ、共産主義体制の外へ出ることができたという(ただし、1989年にアメリカの雑誌がチェコスロヴァキアのスキー連盟に問い合わせたが、「そのような事実はない」という回答だった[1])。その後すぐ、オーストリア人のスキー選手アルフレッド・ウィンクルマイヤーと結婚。彼との結婚で、パスポートを得るためであった。

1970年代初頭、カレル大学で単位を取得。1975年、幼馴染のジョージ・シロヴァトカと共にカナダへ渡り、スキー・ショップを開店する。2年間モントリオールで暮らし、カナダ有数の毛皮会社のモデルを務めた。1976年にニューヨークへ移り、1976年モントリオールオリンピックの宣伝活動をする。同年にウィンクルマイヤーと離婚。

トランプと再婚

1977年4月、ドナルド・トランプと再婚。彼との間に、ドナルド・ジュニア、イヴァンカ、エリックの3子をもうけた。ドナルドによってインテリア関連会社、タージ・マハル・ホテル、カジノの運営を任され、成功している。1980年代後半には、家族と過ごす時間を増やしたいとしてアトランティック・シティを離れようとするが、夫にプラザ・ホテルの運営を任される。

トランプと離婚

1990年、夫ドナルドとモデルのマーラ・メープルズとの浮気が発覚。1992年に正式に離婚するが、慰謝料を巡って裁判で泥仕合となり、衆目を集めた。正確な金額は定かでないが、彼女のこれまでの会社への貢献度を加えられ、2億ドルの現金、14億ドルの土地(コネチカット州)、フロリダ州パームビーチにある邸宅などを受け取ったとされる。マーラ・メープルズは若い頃のイヴァナに似ているということ、離婚訴訟と並行してのドナルドの破産も大きな話題になった[4]。

離婚後の活動

離婚後すぐにウィリアム・モリス・エージェンシーと契約。映画『ファースト・ワイフ・クラブ』へのカメオ出演や、雑誌の人生相談など幅広い活動を行い、更に自身の名を冠した衣料、宝石、美容器具をテレビショッピングで売り出し、手堅い成功を収めた。著作もベストセラーとなり、テレビドラマ化された[5]。2000年代には元夫や子供たちが出演していた『アプレンティス』を含む複数のリアリティ番組に出演し、うち一つは自身の名を冠したものであった[6]。 一方、不動産開発業にも乗り出したが、失敗している[7]。

2017年10月、ABCテレビのインタビューで「最初(ファースト)の妻は私。ファーストレディでしょ?」と発言し、これに対して現在の妻であるメラニア・トランプが「著書の販促のための単に注目されたいだけの自分勝手な発言だ」と報道官を通じて猛反発した。大統領夫人と先妻が表立って対立したのはこれが初めてとされる[8]。

2022年7月14日、ニューヨークの自宅で死去。73歳没[9]。ドナルドはイヴァナの死をTruth Socialで公表し、素敵で美しく素晴らしい女性だったと称えた。死因は公表していないが、捜査当局はイヴァナが自宅の階段から転落した可能性について調べていると報じられた[10][11]。

私生活

1992年にリッカルド・マッツケッリと再々婚するが1994年に離婚。マッツケッリはイヴァナとドナルド・トランプを名誉棄損で告訴するなどこの離婚劇も泥沼化した[12]。2008年4月、24歳年下のロッサノ・ルビコンディと再々々婚。300万ドルをかけた披露宴に、元夫ドナルドを含む400人の客を招待した。2009年にルビコンディと離婚したが、その後よりを戻した[13]。』

イバナ・トランプさん死去 前米大統領の最初の妻

イバナ・トランプさん死去 前米大統領の最初の妻
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN150FZ0V10C22A7000000/

『イバナ・トランプさん(トランプ前米大統領の最初の妻)ニューヨーク市内の自宅で死去、73歳。トランプ氏が14日の声明で明らかにした。

チェコ出身の元スキー選手。1977年にトランプ氏と結婚し長男ドナルド・ジュニア氏、長女イバンカ氏、次男エリック氏の3児をもうけたが、92年に離婚した。トランプ氏は声明で「美しく素晴らしい女性であり、偉大な人生を送った。誇りに思う。安らかに」と述べた。(ワシントン=時事)』

中国南部の経済圏構想が再始動 デモやコロナで停滞感

中国南部の経済圏構想が再始動 デモやコロナで停滞感
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM294WT0Z20C22A6000000/

『中国南部の広東省や香港、マカオを巨大な経済圏に見立てて連携を深める「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)構想」が再始動する。税優遇や雇用促進で地域間の人材の交流と融和を加速する。習近平(シー・ジンピン)指導部が力を入れてきた大湾区構想だが、香港デモや新型コロナウイルス流行に起因した停滞感は否めず、てこ入れが急務になっている。

「責任と使命をもって、香港とマカオが国家発展の大局に融合していくことを支える」。6月29日、郭永航・広東省広州市長は国務院(政府)がまとめた同市郊外南沙区の産業振興策「南沙方案」について意気込みを語った。7月1日には習国家主席が香港返還25年の記念式典に出席しており、直前の発表は祝賀ムードに花を添えた。

たとえば南沙区内の試験エリアで「奨励産業」の企業を対象に最高で25%の税率を15%に減らす。加えて香港やマカオの人が南沙区で働く場合、個人の税負担を香港・マカオでの水準を超えないよう配慮する。香港とマカオからカネとヒトを呼び込む狙いがある。

また9月には香港の名門大学、香港科技大学の分校を南沙区で開校する。国際色豊かな香港の教育ノウハウを本土へ持ち込むほか、学術交流により若年層の融和を進める。

広域経済圏構想の枝葉となる取り組みは広東省全体に広がっている。深圳では2021年、公務員採用で初めて香港・マカオ出身者枠を設けた。外国語や外国企業への理解が深い香港やマカオの人材を呼び込んで一帯の国際化を加速させる。

大湾区構想はもともと10年代半ばに議論が立ち上がり、19年2月に共産党中央委員会と国務院が計画綱要を公表して本格始動した。35年までに「世界一流のベイエリアを全面的に確立する」計画で、22年は「基本的骨組みを形成する」目標だ。抽象的な表現だけに現時点での達成度を評価することは難しいが、この3年間を振り返ると多くの障壁があった。

まず計画を公表した19年、香港では刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡せるようにする逃亡犯条例改正案へ反対する大規模デモが勃発した。反対派が活動を重ねるにつれ警察の取り締まりは苛烈さを増し、20年には香港国家安全維持法(国安法)が施行、多くの民主派団体が解散に追い込まれた。民主化運動は霧散したが、社会分断の記憶はいまなお鮮明だ。

また新型コロナも大きな障壁となった。厳格な感染対策「ゼロコロナ」をとってきた中国では地域を越える移動が制限されることが多かった。香港で感染拡大が深刻化した際には本土との往来が大幅に減った。大湾区構想は始動直後につまずいてしまったと言わざるを得ず、まき直しが必要だ。

それだけに南沙方案では先立つものについても盛り込まれている。各種プロジェクトに関わる債券の発行規模を増やす。22年から24年にかけて、毎年100億元(約2000億円)ずつ地方政府の債務限度額を積み増すという。

大湾区、特に本土側としては広域経済圏の構築を急がなくてはならない事情もある。各地では地域経済の成長やインフラ整備を当て込んだ不動産開発が進むため、大湾区計画が遅れれば不動産プロジェクトの資金回収も滞る。住宅などデベロッパーは政府の業界締め付け強化を発端とした不動産市況の冷え込みに見舞われており、大湾区で期待される地価上昇は数少ない希望のひとつだ。

(広州=比奈田悠佑)』

中国実質成長率0.4%に失速 4~6月、ゼロコロナ打撃

中国実質成長率0.4%に失速 4~6月、ゼロコロナ打撃
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1369T0T10C22A7000000/

『【北京=川手伊織】中国国家統計局が15日発表した2022年4~6月期の国内総生産(GDP)は、物価の変動を調整した実質で前年同期比0.4%増えた。新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策で経済活動が滞り、1~3月の4.8%増から失速した。景気は6月から持ち直しているが、政府が22年の成長率目標とする「5.5%前後」の達成は厳しい。

日本経済新聞社と日経QUICKニュースが共同で実施した市場調査の平均(1.1%増)を下回った。

季節要因をならした前期比での伸びをみると、2.6%減となった。先進国のように前期比の伸びを年率換算した成長率は10.0%程度のマイナスとなる。前期比がマイナスになるのは、新型コロナの打撃を初めて受けた20年1~3月以来となる。

景気の実感に近い名目GDPは前年同期と比べて3.9%増えた。地域別では、新型コロナ対応でロックダウン(都市封鎖)を実施した上海市の実質成長率は13.7%のマイナスだった。行動規制を強めた北京市も前年同期を2.9%下回った。

15日はGDPと同時に他の統計も公表した。

1~6月の工業生産は前年同期比3.4%増にとどまり、1~3月の同6.5%増から鈍化した。最大経済都市の上海市の封鎖で物流が混乱した。自動車の生産量が減少に転じ、パソコンはマイナス幅が広がった。

工場の建設などを示す固定資産投資は1~6月に同6.1%増えた。1~3月の9.3%増と比べて伸びが縮まった。1~6月の不動産開発投資は5.4%減少した。販売面積の減少率が22.2%に拡大し、マンション市場の低迷が長引いている。

外需は経済成長率を押し上げる要因となった。輸出から輸入を差し引いた4~6月の貿易黒字は前年同期を7割上回った。輸出入の増加率はいずれも1~3月より縮小したが、ゼロコロナ政策による内需の停滞で輸入にブレーキがかかり、貿易黒字は拡大した。

百貨店、スーパーの売り上げやインターネット販売を合計した社会消費品小売総額(小売売上高)は1~6月、0.7%減った。1~3月は3.3%増だった。厳しい行動規制で接触型消費が打撃をうけ、全体の1割を占める飲食店の収入は大幅に減少した。

経済の急失速で雇用が悪化した。1~6月の都市部の新規雇用は654万人だった。前年同期を6%下回った。1人当たり可処分所得の伸びは3.0%と、1~3月の5.1%から鈍化した。

1~6月の実質GDP増加率は2.5%だった。上海市が6月1日に封鎖を解除し、直近の経済は企業部門を中心に持ち直しつつある。22年後半は地方政府のインフラ投資が成長を押し上げるとみられる。それでも中国政府が22年通年の成長目標として掲げる「5.5%前後」の達成は難しいとの見方が多い。

【関連記事】

・中国、低成長もゼロコロナ優先 15日に4~6月GDP
・中国株、世界で唯一上昇 4~6月5%高  金融緩和が支え
・中国リスク「上昇」5割超す 社長100人アンケート
・中国成長率、22年4.1%予想 目標未達も党大会優先

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

滝田洋一のアバター
滝田洋一
日本経済新聞社 特任編集委員
コメントメニュー

ひとこと解説

ゼロコロナ政策でゼロ成長。そんな中国経済については、日経電子版に掲載されたFOMCメンバーのブラード氏の見解が、簡にして要を得ています。
①中国の問題は依然として新型コロナウイルスだ。中国のゼロコロナ政策は生産停止などにつながる。今年も中国経済の変動が続くだろう。
②世界経済の成長は鈍るが、米国のインフレ抑制の観点からは(需要が落ち着くという点で)悪い話ばかりではない。
とくに②中国需要の抑制は、原油などの資源価格の上昇抑制にもつながります。エネルギーの大半を輸入する日本にとっても、悪い話ばかりではないと思います。サプライチェーンの過度の中国依存脱却に取り組む機会でもありましょう。

2022年7月15日 11:43』

ゼロコロナと中国社会:「普通ではない国」を見限り始めた若者たち

ゼロコロナと中国社会:「普通ではない国」を見限り始めた若者たち
https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00821/

『「普通ではない国」を見限り始めた若者たち

ゼロコロナと中国社会:「普通ではない国」を見限り始めた若者たち
国際・海外 政治・外交 社会 暮らし 2022.07.12

新型コロナウイルスを封じ込めるため、徹底したPCR検査と隔離、都市封鎖を進める中国政府の「ゼロコロナ政策」。北京や上海などの大都市では感染拡大を抑え込んでいるように見えるが、東部などの地方都市では新規感染者が依然目立つなど、先行きは不透明だ。私権を厳しく制限し、経済活動への犠牲を強いる習近平政権に対し、市民の鬱憤(うっぷん)は日増しに高まっている。

「これからの5年」を不安視する人々

中国政府は6月28日、海外からの入国者に義務付けている隔離施設での滞在期間を、従来の2週間以上から1週間に短縮することに決めた。だがその一方で、ゼロコロナ政策は堅持するとも強調している。

北京日報(電子版)は、北京市トップの蔡奇・市共産党委員会書記が6月27日の演説で、北京市は感染の再拡大を防ぐため、ゼロコロナ政策を今後5年間堅持すると表明したと伝えた。これに対して、ソーシャルメディアには「あと5年なんて!」「これからも長く北京で暮らし続けるのか、考え直すべきだ」など将来を悲観するコメントがあふれた。

その後、北京日報は「編集上の誤り」だったとして、この部分を削除し、ウェイボー(中国のミニブログサイト)は「未来5年(これからの5年)」のハッシュタグの使用を禁じた。

ところが、北京日報の社長・趙晴雲氏はウェイボーで「自分は社長という立場から明らかにする。転載を歓迎する」として、次のように投稿した。

「“未来5年”なんて4文字は(蔡書記の)報告の中にはなかったんだ。われわれの記者が間違って加えてしまった。おかしいと思うかもしれないが、記者はどうしても(記事の出稿を)急がなければならず、報告の重点をざっと理解した上で、事前に準備していたテンプレートの中に、“未来5年”にこれをやる、あれをやると入れていくうちに、“常態化防疫を堅持”(日常的な感染症対策を堅持)という文言も含めてしまった。頭が働いていなかったんだ」

結局、北京日報の記事は「未来5年」の文字だけが削除されて残った。

「今日午前、中国共産党北京市第13回代表大会が開幕した。蔡奇同志が報告を行った。《未来5年》北京は弛むことなく日常的な感染症対策を堅持する。ぶれることなく“外部輸入防止、内部感染再拡大”への対策と“ゼロコロナ政策”の方針を堅持し、“四方責任”(地域、部門、組織、個人における責任)と“四早”(早期の発見、報告、隔離、治療)を確実に実施する。迅速かつ柔軟、科学的で正確な総合的防疫政策を実施する」

この文面から、《未来5年》を外しても外さなくても、内容はそう変わらないことが分かる。社長が躍起になって弁明するほどのことなのか。まあ、蔡書記が《未来5年》と述べたかどうか、その真実は置いておくとして、《未来5年》について論争が沸き起こったのは事実だ。趙社長はメディアのトップとして直々にソーシャルメディアで記者の過ちを指摘するのではなく、なぜ、国民がこれからの5年にこれほど関心を持っているのかを、深く分析すべきでなかったのか。

「普通ではない国」にはいられない

人々が先行きを不安視するのは当然だろう。「コロナとの共存政策」が世界の主流となっても、中国政府は非合理的で非人道的なゼロコロナ政策を続けた。「家から出られず、食べ物がない」と高層マンションの住民たちは、窓辺で一斉に鍋をたたいて「出してくれ!」と悲壮な声を上げた。

一部、フェイクニュースが混じっていると思われるが、ソーシャルメディアでは高層ビルから飛び降りる人たちの映像もシェアされていた。両親と見られる2人が隔離施設に連れて行かれ、その後を追いかけようとしたのか、小さな子どもが窓から落ちてしまう衝撃的な動画もある。家から一歩も出られない中、食料が尽きて体が衰弱している人も確実にいることだろう。中には命を落とした人もいるかもしれない。

「息子が40度の熱を出しているの。誰か解熱剤を持っていませんか」と家々を回るお母さんに対して、誰もドアを開けようとしない。防護服を着た治安当局の職員は、大きな魚捕り用の網で犬を乱暴にすくい上げると、キャンキャン鳴いている犬を捕獲用のカゴの中にたたきつけた。必死に阻止しようと追いかける飼い主と思われる男性は、防護服の男に蹴りを入れられ地面に倒れた。

かつて文化大革命時、「破四旧」(古い思想・文化・風俗・習慣の打破)を叫んで貴重な文化財を破壊し、「反革命分子」に暴行を加えて死傷させた「紅衛兵」をもじって、白い防護服を着た治安要員は「白衛兵」とすら呼ばれるようになった。

強制連行するのに、警察手帳を提示するわけでもないし、防護服の中にどのような人物が入っているのかも分からない。状況に応じて力技で対応できる人間がたくさん必要であったのは間違いない。普段は定職を持たず、ごろついているような者たちが雇われ、荒っぽい暴力行為に至った可能性もある。

「われわれが何をしたというのか。どうして罪人のように扱われなければならないのか」――市民たちの悲痛な叫びもむなしく、上海で「一比十四億」(1対14億人)という新語が生まれたのは、たとえ14億の中国人が反対しても、たった1人の「皇帝」習近平主席が推進する政策は正しいのであり、必ず従わなければならないからだ。

インターネット上にはこんなコメントも投稿された。「ニューヨークでも東京でも、コロナのために日常の自由が奪われたが、中国のようにはならなかった。今後確実に、中国から富裕層が出ていくだろう。こんな普通でない国にはいられない」

街をフェンスで封鎖され、怒る上海の住民たち(2022年6月6日、AFP=時事)

「私たちは最後の世代」

他にもソーシャルメディアで広く拡散された動画がある。1カ月以上ロックダウンが続く上海で、自宅から政府の隔離施設に連行しようと、ある家族に対して白い防護服を着た警官が圧力をかけている場面だ。警官は「市の命令に従わなければ処罰される。その罪はあなた方一家の三世代に影響を及ぼすぞ!」と怒鳴りつけた。ところが、そばにいた男性は即座に、「私たちは最後の世代だから。結構です」と述べたのだ。

そして、ハッシュタグを付けた「私たちは最後の世代」(#最後一代)という言葉が広く使われ始めた。つまり、少なからぬ若者たちが、子どもを産み、育てていくつもりはない、との宣言をしたと受け取れる。

中国の官製メディアの言説に影響を受け、「コロナの大流行はアメリカの陰謀だ」「ゼロコロナ政策で中国は世界に打ち勝った」といった発信をし続けてきた若者たちも少なくない。しかしなぜ、一介の警察官が、「三世代に渡って影響を及ぼすぞ」などといった脅しの言葉を投げかけられるのか。

有無を言わせぬロックダウンで、上海のような国際都市に住む人々が、食料がなくて餓死するかもしれない状況に追い込まれたのだ。ソーシャルメディアでは「ウイグルや香港の人たちがどのようにして自由を奪われているのかが、やっと分かった」というコメントさえ見られるようになった。自由な国では起こり得ないことが次々に起こっているからだ。
若者たちをさらに不安に陥れているのは、深刻な就職難だ。店舗の閉鎖や企業の倒産は相次いでいるし、昨年、中国政府が打ち出した学習塾を閉鎖する政策では、約1000万人の失業者が出たと言われている。IT産業などでも大規模なリストラが行われている。今秋には1076万人が大学を卒業するというのに、中国国家統計局が5月16日に発表した4月の全国都市部の16-24歳の失業率は18.2%(前年同月比+2.2%)に上った。

コロナに関連する多くの制限は、現在も続いている。いや、コロナの政策に乗じてパワーアップした中国の社会統制システムは、今後も解除されることなく使われ続ける。健康状態を確認するだけでなく、監視を強化するために。どこで何をしていてもすべて追跡され、少しでも疑いを持たれれば入場を拒否されたり、銀行口座を凍結されたりもする。

結婚するにも、子どもを育てるにも、こんな国では嫌だと、海外移住を考える人たちの間では「潤学」が広まっている。中国語の「潤」のピンイン(発音のローマ字表記)は “run”。つまり、「潤いのある」生活を求めて海外に脱出する(英語のrun)、移住するという意味だ。「学」を付けることで、海外移住のノウハウという意味になり、それをネットユーザー間で伝え合う動きが加速しているのだ。

コロナ下で加速する少子高齢化

こうして、本来ならば理想を描き希望に満ちているはずの若い世代が不安を抱え、国家からの圧力が強い社会で苦痛を感じ、前向きな姿勢を持てずにいる。「996」(週6日、朝9時から夜9時まで、あるいはそれ以上働く)というライフスタイルに不満を抱き、「内巻」と呼ばれる非理性的でエンドレスに競争が加速する社会に嫌気がさした若者たちの中には、立身出世や物質主義に関心を示さず、「?平」(寝そべり族)になることを選ぶ者もいる。

一方で、少子高齢化は加速し続けている。2021年の出生数は1062万人、1949年の建国以来最少となった。2020年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数)は1.3と日本の1.34よりも低い。北京や上海などの大都市ではすでに0.7前後と世界最低レベルだ。対照的に、65歳以上の人口は2億人を突破した。

中国政府は21年5月、3人の出産を認める奨励策を出した。だが、出生率が一向に上向かない背景には、公的年金や社会保障制度の未整備、農村と都市の格差、就業機会や教育を受ける機会の不平等といった問題がある。一人っ子政策での人口抑制は、中絶や不妊手術といった手段で目標を達成できたのかもしれない。だが、三人っ子政策における目標は、いくら強権的な政府でも容易には達成できないだろう。ゼロコロナと三人っ子――習近平政権の“両輪”ともいうべき社会政策の行方は前途多難だ。

バナー写真:「ゼロコロナ政策」を続ける中国・北京の街中に張り出された、たくさんのQRコード。スマホで読み取り、付近の感染状況や外出制限措置などの情報を共有するためのものだが、マンションごとにつくられているので、どれを読み取ればいいのか悩みそう(撮影・ソン・ホウ、共同)

この記事につけられたキーワード

中国 ゼロコロナ 北京日報 白衛兵 一比十四億 最後一代 潤学

阿古 智子AKO Tomoko経歴・執筆一覧を見る

東京大学大学院総合文化研究科教授。1971年大阪府生まれ。大阪外国語大学外国語学部中国語学科卒。名古屋大学大学院修士課程修了、香港大学大学院博士課程修了。在中国日本大使館専門調査員、早稲田大学准教授などを経て現職。専門は現代中国論。主な著書に『貧者を喰らう国―中国格差社会からの警告』(新潮選書)など。』

伊ドラギ首相が辞意表明 大統領は受理せず、政局混迷

伊ドラギ首相が辞意表明 大統領は受理せず、政局混迷
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR14ETR0U2A710C2000000/

『【ウィーン=細川倫太郎】イタリアのドラギ首相は14日、辞任すると表明した。主要与党の左派「五つ星運動」が政権に不信任を突きつけたことで、安定的な政権運営は難しいと判断した。ドラギ氏は同日、マッタレッラ大統領に辞意を伝えたが、同大統領は受理を拒否した。イタリア政局の混迷が深まっている。

ドラギ氏は閣議で「この政権を支えてきた挙国一致体制はもはや存在しない」と述べた。一方、マッタレッラ氏はドラギ氏からの辞意の申し出を拒んだうえで、議会で状況を報告し、各政党から支持を得られるか否かを改めて確認するよう指示した。伊メディアによると、ドラギ氏は20日に議会で演説する予定だ。

議会上院では14日、物価高騰対策などを盛り込んだ暫定措置令の採決を実施した。賛成多数で可決となったが、五つ星は投票に参加しなかった。この採決はドラギ政権への信任投票という位置づけで、ボイコットは政権への不信任を意味する。

五つ星の党首を務めるコンテ前首相は、最低賃金の導入などドラギ政権に複数の政策を実行するよう求めていた。コンテ氏は低迷する五つ星の支持率を挽回するため、国民に存在感をアピールする狙いがあったとみられる。ドラギ氏は五つ星と政府の政策は多くで一致していると指摘したが、一部については難色を示していた。

今後、各政党は水面下での駆け引きを活発化させそうだ。ドラギ氏が政権への信任が得られたと判断すれば辞意を撤回し、続投する可能性もある。一方、各政党の交渉がまとまらず行き詰まれば、マッタレッラ氏が新しい首相を選ぶか、早期の議会解散、総選挙に踏み切るシナリオも考えられる。

欧州中央銀行(ECB)の総裁を務めたドラギ氏は2021年2月に首相に就任した。強いリーダーシップ力や国際社会での高い知名度で、左派から右派まで幅広い政党からなる多党連立政権をまとめてきた。

金融市場では政局の混乱が嫌気され、投資家は「イタリア売り」に動いている。長期金利の指標となるイタリアの10年物国債利回りは14日、前日の3・2%台から一時3・5%台まで上昇(債券価格は下落)した。
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

菅野幹雄のアバター
菅野幹雄
日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員
コメントメニュー

ひとこと解説

気になるニュースです。多党体制が日常となり、不安定な先進国という認識が定着したイタリアで、ドラギ首相は信じられない安定感を世界に見せつけてきました。本当に辞任となれば、ジョンソン首相が退任する英国、与党が下院の多数を失ったフランス、首相の支持率低迷が目立つドイツとともに、欧州政治の混迷をより一層濃くします。
来週にはユーロ圏の利上げが決まりますが、ここに来てイタリアの経済的な信用力にも疑問符が付き始めています。欧州中央銀行の総裁を務めたドラギ氏が退けば、不安は一気に高まります。
大統領は慰留していますし、今回の辞意表明が与党内を引き締まるハッタリである可能性もありますが、展開を注視したいです。
2022年7月15日 7:29 (2022年7月15日 7:36更新)』

日本とNATO: 米国の同盟国を結ぶ新たな可能性

日本とNATO: 米国の同盟国を結ぶ新たな可能性
https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00820/

『 ロシアによるウクライナ侵攻という事態を受け、日本とNATO(北大西洋条約機構)の関係進展が注目されている。NATOはこのほど採択した新たな「戦略概念」で、初めて中国に言及し懸念を表明。欧州とアジアにおける米国の同盟国は、今後さらに歩調を合わせる可能性が出てきた。

2022年6月末にスペインの首都マドリードで開催されたNATO(北大西洋条約機構)の首脳会合に、岸田文雄首相が出席した。日本の首相として初めてのNATO首脳会合出席であり、今回は日本の他、オーストラリア、ニュージーランド、韓国の首脳も出席した。NATOにとっては、ロシア・ウクライナ戦争が続く中でも、中長期的な課題としてのインド太平洋、なかでも中国への関心を示すことになり、日本にとっては、欧州とインド太平洋の安全保障の不可分性を発信するよい機会になった。

日本とNATOの関係はいかに発展してきたのか。そして今後、どのような可能性が考えられるのか。

欧州外で最も古いパートナーとしての日本

日本とNATOの対話の始まりは、1980年代の中距離ミサイル(INF)問題にさかのぼる。83年の米ウイリアムズバーグでのG7サミットで、サミット参加国の安全保障は不可分であると主張したのは当時の中曽根康弘首相だった。対象は異なっても、岸田首相の言葉と重なる。

その後、日NATO間の対話は90年代に制度化される。しかし、実際のところ当時の欧州は、旧ユーゴスラビアでの紛争や中東欧諸国のNATOやEU(欧州連合)への加盟問題など、欧州内の問題に傾注しており、アジアの安全保障が欧州に影響を及ぼすという発想に乏しかった。日本も同様であり、国際安全保障上の役割は限定されていた。

そうした状況を変えたのが2001年9月11日の米国に対する同時テロ事件だった。これを受けて日本は、海上自衛隊がインド洋で米軍などへの補給活動を実施するなど、アフガニスタン問題に関与することになった。他方でNATOは03年8月からアフガニスタンでの国際治安支援部隊(ISAF)を指揮し、同国に深くコミットすることになる。インド洋、そしてアフガニスタンで日本とNATOが出会う格好になった。日本はアフガニスタンへの自衛隊派遣は結局見送ったが、復興支援などの文民面でNATOとの協力が行われた。

2000年代後半から2010年代初めにかけて、NATOの首脳会合や外相会合の際には「アフガニスタンに関する会合」が頻繁に開催され、日本を含めたパートナー諸国の参加が招請された。アフガニスタンはこうした前例にもなったのである。12年のシカゴNATO首脳会合のアフガン会合には、玄葉光一郎外相が出席している。

その後、日本とNATOとの間では、13年4月のラスムセン(Anders Fogh Rasmussen)事務総長来日時に「日NATO共同政治宣言」が発出されたほか、実務協力に関する文書として、「国別パートナーシップ協力計画」が14年に最初に作成され、18年と20年に改訂された。同計画は、日本とNATOが「自由、民主主義、人権及び法の支配という共通の価値並びに戦略的利益を共有する、信頼できる必然のパートナーである」とした上で、ハイレベルの対話や防衛交流の強化をうたい、実務協力の具体的な分野として、サイバー防衛、海洋安全保障、人道支援・災害救援、軍備管理・不拡散、防衛科学技術などを列挙している。

ロシア・ウクライナ戦争と中国の挑戦

実務協力については、NATOの演習・セミナーへの参加や、海軍種間の共同訓練などの実績が積み重ねられてきたが、岸田首相の今回のNATO首脳会合出席は、NATO自体や日NATO関係への関心が日本で高まる契機になった。その背景に存在するのは、当然のことながらロシア・ウクライナ戦争である。

岸田政権は、ロシアへの対応において「G7と足並みをそろえる」ことを前面に打ち出してきたが、G7のメンバーのうち、EUを除けば日本以外は全てNATO加盟国である。3月にブリュッセルで開催されたG7首脳会合が、NATO首脳会合と合わせて開催され、NATO本部で開かれたこともうなづける。米欧にとっては、NATOの主要国プラス日本がG7であるし、日本にとっても、G7諸国との協力の自然な延長線上にあるのがNATOとの協力だという位置付けになる。

ロシア・ウクライナ戦争への日本の対応として、岸田政権が強調するのは、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」との意識に基づく、欧州とアジアの安全保障環境の不可分性である。そのため、力による現状変更は世界のどこであれ許されてはならず、侵略のような行為が成功するという誤ったメッセージを発することになってはいけないと強調してきた。この観点で、NATOと利益を共有するのである。

そうした中で、マドリード首脳会合でNATOが採択した新たな戦略概念は、歴史上初めて中国に言及することになった。中国は、「われわれの利益、安全保障、価値に挑戦している」として、ハイブリッド、サイバーに加え、技術面と中ロ関係に懸念を表明した。他方で建設的関与の可能性も残しつつ、それでも、価値や国際秩序のために立ち向かうとも述べた。直近の脅威はロシアだが、その先の課題として中国が存在しているという構図だ。NATOにおけるこうした中国への認識は、今後の日 NATO協力の重要な基盤にもなる。

NATO「諸国」との連携の強化

NATOとの関係強化に対しては、「アジアでの有事の際にNATOは助けてくれるのか」という疑問が呈されることも少なくない。

まず、NATOという枠を超えて今回の戦争への対応の裏に込められた日本のメッセージは、仮にアジアで中国の関与する大規模な有事が発生した際には、(米国に加えて)欧州が今回日本が示しているのと少なくとも同じ程度の連帯、結束を示すことを期待する、というものである。

その上でしかし、日本の自衛隊がNATOの防衛に駆けつけないのであれば、NATO側だけが行動することを期待するのは一方的で自分勝手な姿勢だろう。NATOの基本条約である北大西洋条約(第6条)は、「北回帰線以北の北大西洋地域の加盟国領土」を集団防衛(第5条)の地理的範囲として規定している。これには西海岸までの米本土は含まれるが、ハワイやグアムは入らないと解釈されている。したがって、台湾有事などの際にNATOが集団防衛の発動として直接に軍事的関与を行う可能性は極めて低い。

ただし、これはあくまでも法的な議論である。台湾をめぐるハイブリッド戦争のような段階を超えて、米中の正規軍が正面で戦うような事態が発生した場合には、日本も攻撃にさらされている可能性が高く、英国を筆頭に、米国との関係が深い同盟国も直接的な関与をすることが十分に考えられる。その際に、北大西洋条約における集団防衛の地理的適用範囲は問題にならない。なぜなら、集団的自衛権の行使は、同盟とは関係なく国連憲章で認められた国家固有の権利だからある。攻撃を受けた国からの要請があれば、NATO加盟国か否かに関わらず、集団的自衛権の発動が可能である。

このことが示すのは、日本にとってのNATOとの関係は、NATOという多国間組織との関係であると同時に、 NATO加盟国との関係だということである。NATOという「場」を通じて、個別のNATO加盟国との関係を深めるのである。

欧州とインド太平洋における米国の同盟国を結ぶ

ただし、多国間の「場」としてのNATOが持つ意味を過小評価してはならない。というのも、NATOが70年以上にわたって積み重ねてきたのは、多国間での作戦・計画の手法であり、それらの実践だからである。

日本の防衛は、主として日米同盟という二国間の文脈で捉えられてきた。この基本的構図は今後も変わらないものの、日本のみが単独で攻撃されて日米同盟において日本防衛を規定した日米安全保障条約第5条が発動されるケースを除けば、正規軍同士の戦闘を伴うハイエンドな武力衝突において、実際問題としてより蓋然(がいぜん)性が高いのは、米国に加えて台湾、さらにはオーストラリアや英国が直接関与するような事態であろう。

そうした事態においては、日本を含めた各国間の連携が鍵となる。そこで求められるのは多国間の作戦・計画であり、米国にとってもそのひな形はNATOだ。今後は、日米同盟や米豪同盟といったインド太平洋の米国の同盟網に、英国やフランスといった欧州のNATO加盟国を含めた、米国のその他の同盟国をいかに「プラグイン」できるかが問われることになる。その基礎となるのは、日英協力をはじめとする個別の二国間関係だが、その輪を広げていくうえでもNATOとの関係は有効なのである。

別のいい方をすれば、それは、NATOと日米同盟を結ぶということである。2022年2月に発表されたバイデン政権のインド太平洋戦略も、インド太平洋と欧州大西洋の間に「橋を架ける」と述べている。

その観点では、マドリッドNATO首脳会合の機会に、いずれも米国の同盟国であるオーストラリア、日本、ニュージーランド、韓国という、アジア太平洋のNATOの4つのパートナー国(Asia-Pacific 4: AP4)による首脳会合が開催されたことは意味がある。日米豪や日米豪印(Quad)などの枠組みはあっても、インド太平洋の米同盟国間のみの枠組みは、二国間関係を除いては希少だからである。また、オーストラリアへの原子力潜水艦提供を中心とする米英豪の枠組みであるAUKUSは、英国とオーストラリアという、米国にとっての欧州とインド太平洋の主要同盟国を結ぶ枠組みである。日本とNATOの関係は、そうした文脈に位置づけた際に、その可能性がさらに広がることになる。

実質的な対話と協力を進める観点では、サイバーや海洋安全保障といった国別パートナーシップ協力計画で言及されている分野に加えて、抑止態勢強化の課題として、中国やロシアのA2AD(接近阻止・領域拒否)や中距離ミサイルへの対処といったハイエンドな軍事の分野における議論も欠かせない。同時に、共同訓練の内容を、従来の親善訓練的なものから、より実践的なものに格上げしていくことも課題になる。具体的な協力を推進しつつ、戦略的な構想を持つことが求められる。

バナー写真:北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を前に並んで立つ(左から)オーストラリアのアルバニージー首相、岸田文雄首相、ストルテンベルグNATO事務総長、ニュージーランドのアーダーン首相、韓国の尹錫悦大統領=2022年6月29日、スペイン・マドリード(AFP=時事)

この記事につけられたキーワード

インド太平洋 安全保障 ウクライナ アジア太平洋 北大西洋条約機構

鶴岡 路人TSURUOKA Michito経歴・執筆一覧を見る

慶應義塾大学総合政策学部准教授。専門は国際安全保障、欧州政治など。1975年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒。同大学院法学研究科修士課程などを経て、英ロンドン大学キングス・カレッジで博士号(PhD)取得。在ベルギー日本大使館専門調査員、防衛省防衛研究所主任研究官などを歴任し2017年4月から現職。11年から東京財団政策研究所主任研究員を兼務。近著に『EU離脱』(ちくま新書、2020年)がある。』

高まる憲法改正論議 懸念すべき外国の影響力工作

高まる憲法改正論議 懸念すべき外国の影響力工作
川口貴久 (東京海上ディーアールビジネスリスク本部主席研究員)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/27285

『2022年7月10日の参議院選挙は将来、戦後政治史に記録されるかもしれない。それは、憲法改正プロセスの里程標として、である。
参院選で改憲勢力の議席が増え、岸田首相は憲法改正への議論を加速させるとみられている(代表撮影/ロイター/アフロ)

 今回の参議院選挙を経て、改憲に前向きな4政党(自民党、公明党、維新の会、国民民主党。以降、「改憲勢力」とする)の議席数は、非改選分も含めて177議席となった。これは参議院の総議席数248の3分の2(166議席)を上回り、改選前の166議席(総議席数は245)と比較すれば決して小さくない変化だ。

 もちろん改憲勢力4党の憲法改正に対する方針・争点は一枚岩ではないどころか、隔たりは大きく、政党内の合意形成も容易ではない。しかし単純計算とはいえ、憲法改正を志向する政治勢力が衆議院で約4分の3、参議院で3分の2以上を維持した意味は大きい。

 衆議院の解散や大きな政界再編がなければ、国会の勢力図は25年夏まで維持される。こうした状況を踏まえ、岸田文雄首相は参院選開票後の選挙特番で「できるだけ早く発議をし、国民投票に結びつけていく」と語った。

 また21年6月、通常国会で成立した改正国民投票法では、国民投票の公正や公平の確保のための追加検討事項が明記された(附則第四条)。具体的には国民投票に関わるインターネット利活用、広告、資金に関する制度的措置を改正法施行3年(24年9月)目途に検討・整備することを求めている。 こうした観点でも「(約)3年間」という時間軸が意味を持つ。

 今後、憲法改正そのものと改正手続きの両面で、議論が加速化するのは間違いないだろう。

原則、自由の「国民投票活動」

 憲法改正に係る国民投票とはどのようなプロセスか。義務教育課程で学ぶ憲法改正の発議と承認プロセスは次の通りだ。
「憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」(日本国憲法第96条)

 国民投票法等はこのプロセスをさらに具体化する。現行の想定では、国民投票は、国会の発議から60日以後から180日以内に実施され、満18歳以上の日本国民が投票権を有するとされる。

 発議の内容は関連するテーマごとに区分して国会で審査され、国民は国民投票においてもそれぞれ別個に票を投じる。つまり憲法改正案をワンパッケージで審議・投票するのではなく、関連テーマごと(例えば、9条関連、新しい権利の明文化、緊急事態条項など)に判断するということだ。』

『国民投票の周知を担うのは、衆参両院10人ずつで構成される「国民投票広報協議会」である。協議会は憲法改正案の要旨、新旧対照表、改正に対する賛否意見等を記載した「国民投票広報」を全世帯に配布し、同様の内容をテレビ・ラジオ放送・新聞広告で発信する。

 そして国民一人ひとりは「国民投票運動」、つまり「憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為」を行うことができる。この運動は、国民が自由に運動を行い、自由闊達に議論するために、「原則的に自由であり、規制はあくまでも投票が公正に行われるための必要最小限」との理念に基づく。

 つまり、この運動は公職選挙法の規制下になく、われわれがイメージする通常の国政・地方選挙とは異なるということだ。公職選挙法に規制されない活動・運動という点だけでいえば、19年2月に実施された「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票」と同様だ。

 個別訪問や公職選挙法にいう「気勢を張る行為」(団体行進、楽器の使用等)が認められる。もちろん、多数に対する組織的な利益・利害関係を悪用した誘導は罰則対象であるものの、基本的には自由なのだ。
自由故に高まるリスク、問題は外国勢力の介入

 憲法改正に関わる議論や国民投票運動は、根拠と論理に基づくことが望ましいだろう。と同時に、根拠や論理に基づかない、感情や信念に基づく主張も当然に許容されるべきだ。極論すれば、有権者の発言や表現は、不正確な情報や偽情報の類であっても、直ちに規制されるべきものではない。

 こうしたものも含めて、発言や議論を保証することが求められている。これこそが、自由で開かれた民主主義社会の前提だ。少なくとも国民が発信する内容を以って規制するという考え方は、国民投票活動以前にあってはならない。

 しかし同時に、自由で開かれた社会は、それ故に悪意をもった攻撃や情報に脆弱だ。特にソーシャルメディアやデジタルプラットフォームでは、偽情報やディスインフォメーションが流通・拡散しやすい環境にある。そして米国、欧州各国、台湾、豪州の国政選挙・国民投票では、外国勢力による介入や影響力行使が顕在化し、民主主義の根幹を揺るがす問題となった。

 国民が無自覚(もしくは意図的)に生み出すかもしれない情報混乱と外国勢力による干渉は本質的に異なるものであり、両者は区別する必要がある。その上で、少なくとも後者は徹底した対策を講じる必要がある。

 こうした考え方は、筆者が関わった笹川平和財団の提言書『外国からのディスインフォメーションに備えを!』(22年)や『ハックされる民主主義』(土屋大洋との共編著、千倉書房、22年)でも議論され、結果的に多くの専門家やメディア関係者の合意を得られたと考える。

 では、日本の選挙や投票に対して、外国勢力が介入するリスクはどの程度あるのか。

 そもそも、「日本の選挙は既に外国政府に干渉されているのではないか」との疑問も浮かぶだろう。 慎重に答えるならば、アクセス可能な公開情報に基づけば、外国政府が日本の選挙に対して、デジタル空間を通じて組織的に干渉した事実は確認できていない。もちろん単に公開されていないだけという可能性もあるし、そもそも日本政府や当局にそのような介入を検知する能力がない可能性もある。

 しかし、これまで介入を確認していないということは、将来にわたって介入がないということにはらない。』

『仮に憲法改正に係る国民投票が行われるとすれば、中国をはじめ、ロシアや北朝鮮といった近隣国の関心は高いだろう。もし国民投票の結果が日本の防衛力整備に影響を与えるとしたら、近隣国に関心がないということはあり得ない。

 そして重要なことは、中国やロシアはデジタル空間を通じて民主主義国家の選挙に干渉し、選挙に限定しなければ中国は日本に対してもオンラインで影響力を行使してきた、という点だ。
中国によるデジタル空間での影響力行使

 中国による影響力行使はオンラインに限定されず、伝統的なメディア、人的関係、各種団体といった多様なチャネルが指摘される。デジタル空間に焦点を当てれば、中国による日本語での影響力行使は少なくとも3つの経路が確認できる。

 第一に、もっとも分かりやすい経路は、政府関係者や政府系メディアによる公然たる影響力行使である。 これは中国の伝統的な対外宣伝活動がオンラインに延長されたものであり、無数のケースが確認できる。

 例えば、中国共産党の機関紙「人民日報」の日本語ウェブ版「人民網日本」は、21年末から年明けにかけての在沖縄米軍基地での新型コロナウイルス感染症のクラスター感染について、「#在日米軍 が日本側の感染防止・抑制措置を完全に無視して出入りしたため、その努力は台無しになった」とツイッターに投稿した。
中国共産党の機関紙「人民日報」の日本語ウェブ版「人民網日本」によるツイート 写真を拡大

 ここでは、この「主張」の妥当性は論じないが、明らかに問題なのはテキストに添えられた写真だ。投稿された写真はクラスター感染が発生したキャンプ・ハンセン、キャンプ・フォスター(瑞慶覧)、嘉手納基地ではなく、辺野古基地だった。 在日米軍のクラスター感染という負のイメージと辺野古基地問題を意図的に結び付けた可能性が高い。

 ただし、こうした公然たる影響力行使は「発信元」に注目することで一定程度、対処できる。

 第二の経路は、一般ユーザーを装ったボット(不正なプログラムによる自動発言)や大量に動員されたユーザーによる非公然の影響力行使だ。最近の典型例は、ツイッター上での「ウイグル族弾圧はデマだ」というキャンペーンだ。

 ツイッター社は21年12月、中国政府に紐づく情報作戦に関与したとして、中国共産党のウイグル関連「ナラティブ」を増幅したアカウントや新疆ウイグル地区地方政府を支援する「昶宇文化(Changyu Culture)」社に紐づくアカウント、合計2160アカウントを削除したと発表した。読売新聞の調査によれば、日本語による発信もあった。

 ツイッター社の元データを確認したところ、削除されたアカウントの大部分は19年以降に開設されたもので、全体の半分以上は20年3月(さらにいえば中国標準時間の3月10日、11日に集中的)に開設されていた。 何らかの組織的関与があったことは疑いようがない。

 これ以外にも、ボットや人海戦術を活用したとみられるさまざまな影響力キャンペーンが明らかになっているが、その全てが白日の下に晒されているわけではないだろう。

『第三の経路は、前者二つよりも秘匿性が高く、より多くのリソースが投入されたであろう高度な影響力行使である。

 朝日新聞のサイバーセキュリティ専門記者・須藤龍也によれば、21年の秋、台湾の大手セキュリティ会社「TeamT5」の信用を貶めるような偽情報、日台関係を悪化させるような偽情報が日本語で発信されたことが確認された。

 この影響力工作は活動や発信源を偽装する痕跡があり、(最先端というわけではないにせよ)従来のオンライン上の日本語での影響力行使とは次元が異なるものだ。影響力行使のプロセスや投入されたであろうリソース、推察される目標をふまえると、中国政府機関もしくはその「委託先」の関与が疑われる。

 こうした点からも、日本は中国のオンライン影響力工作とは決して無縁ではない。
今後3年間で議論すべきこと

 仮に国民投票が行われるとしても、外国勢力による影響力行使や介入が、国民投票の結果を覆すかどうかは分からないし、恐らく結果を変えることは難しいだろう。米欧や台湾への選挙介入がそうであるように、外国の影響力工作が有権者の投票行動にどれほど影響を与えたかの立証は難しい。

 しかし、国民投票運動や投票のプロセスに介入や不正の「疑惑」があるだけで、その投票自体の正統性が疑われることは、16年および20年米大統領選挙をみれば明らかだ。

 憲法改正に関する議論は国論を二分するだろう。これ自体は不自然なことではないし、自由闊達に議論を交わすべきだ。けれども、後に外国からの干渉が明らかになった場合、国民投票や民主主義に対する信頼は回復不可能なレベルにまで失墜するだろう。それは単に個別の国民投票の信頼が失われるだけではなく、戦後、日本が歩んできた民主主義への信頼を揺るがしかねない。

 インターネット利活用や広告に関するルール整備は必要だが、自由闊達な意見を前提とする国民投票活動が本当に懸念すべきは、開かれた言論空間を切り裂く権威主義国家の影響力行使だ。

 幸か不幸か日本には、選挙介入対策のベストプラクティスを学ぶ先が多くある。なぜなら、米国、台湾、豪州、欧州各国では既に外国による影響力行使や介入が顕在化し、法整備も含めて対応を講じてきたからだ。

 最も必要なことは、外国からの介入や影響力行使を可能な限りリアルタイムに近い形で検知・分析できる能力、すなわち国民による発信・議論と外国による介入を峻別する能力である。そのためには、外国資本も含めたデジタルプラットフォームに対して従来以上の協力を「要請」することも含まれる。さらにいえば、オフラインでの影響力行使の検知・対応も必要である。

 憲法改正が発議されるにせよ、されないにせよ、今後、議論は加速するだろう。その際、外国勢力の介入対策もワンセットで議論されなければならない。
 『Wedge』2021年12月号で「日常から国家まで 今日はあなたが狙われる」を特集しております。

 いまやすべての人間と国家が、サイバー攻撃の対象となっている。国境のないネット空間で、日々ハッカーたちが蠢き、さまざまな手で忍び寄る。その背後には誰がいるのか。彼らの狙いは何か。その影響はどこまで拡がるのか─。われわれが日々使うデバイスから、企業の情報・技術管理、そして国家の安全保障へ。すべてが繋がる便利な時代に、国を揺るがす脅威もまた、すべてに繋がっている。

 特集はWedge Online Premiumにてご購入することができます。』

【新刊紹介】中国の台湾侵攻が現実のものとなったとき、日本はどうなるか

【新刊紹介】中国の台湾侵攻が現実のものとなったとき、日本はどうなるか:岩田清文・武居智久・尾上定正・兼原信克著『自衛隊最高幹部が語る台湾有事』
Books 安保・防衛 政治・外交 2022.07.09
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/bg900430/

滝野 雄作 【Profile】

いたずらに台湾有事を騒ぎ立てることには組みしたくない。しかし、理想的平和主義を唱えるだけでは、いざ危機が目の前に迫ったときに、何の役にも立たないだろう。台湾有事のリアルは是非、知っておくべきなのだ。軍事の専門家による本書は、そのことを理解するためにかっこうの手引となるであろう。

本書の第一部は、想定される台湾有事の4つのパターンのシミュレーションである。これは昨年8月、政府の国家安全保障に近年までかかわってきた高級官僚、防衛問題に造詣の深い現職国会議員、自衛隊から退官まもない陸海空将官、さらに有事の際に関係してくる外務省、経産省の元幹部ら20数名によって行われた研究会での討議がもとになっている。
そこでは、

第3次台湾危機(1995~96年)では、中国が台湾総統選挙に台湾沖ミサイル発射演習をもって軍事的に介入する形で起こったが、次回の台湾総統選挙(2024年)でも、中国は軍事的に介入する可能性がある。

という前提に立っている。

シナリオ①は、直接的な武力行使は行わないが、グレーゾーンの戦いを中国が仕掛けてくるというもの。台湾が独立を画策しているとのフェイクニュースを流して台湾国内を混乱させ、武力介入の口実を探る。サイバー攻撃でインフラや基幹産業の稼働を止め、さらに台湾海峡とバシー海峡に海上臨時警戒区を設置、継続的に大規模な軍事演習を繰り返すことで諸外国の自由な航行を妨害する。

シナリオ②は、中国が台湾で新型ウイルスが発見されたとのフェイクニュースを流し、検疫と隔離政策をとるという名目で台湾全島を孤立させる。その際、サイバー攻撃、海底ケーブルの切断によって外部との通信手段をはく奪。中国海軍による海上封鎖の長期化で、台湾国内は混乱、対中融和政権の誕生を画策するというもの。

シナリオ③は、直接的な武力行使である。総統選挙で独立志向の強い候補が圧勝、危機感から中国は軍事進攻を開始する。どういう攻撃を中国は仕掛けてくるか。詳しくは本書を読んでほしいが、中国陸軍は台湾上陸を果たし、中台の衝突は全土を巻き込んで、さらには海上の戦域は日本の領土におよぶ。結果的に日本は防衛力が手薄な尖閣諸島と与那国島を占領されてしまう。

そうなったらどうなるか。

それがシナリオ④で、米軍は自衛隊とともに本格的な参戦を決意する。しかし、中国本土へのミサイル攻撃が開始される前に、中国は国連安保理に停戦決議を提案。現状で停戦がなると、尖閣・与那国の占領は固定化されてしまう。その前に、奪還作戦を遂行できるのか。アメリカは台湾本土の防衛に全力を注ぐので、日本は自力で事態を打開しなければならない。

台湾・中国本土の在留邦人救出は困難

第二部では、こうしたシミュレーションをふまえて、著者である元職の陸幕長、海幕長、航空自衛隊補給本部長と内閣官房国家安全保障局次長らが討論した座談会が収録されている。自衛隊の装備や法制度など、そこで浮き彫りにされる日本の国防の問題点は何か。

総じていえば、悪夢が現実のものとなったとき、日本の備えはあまりにも脆弱だということだ。ミサイルの射程や数といった日中の戦力差(中国の短・中距離弾道ミサイル約1600発が南西諸島全域を射程に収めている)という以前にそもそも問題がある。少しだけ紹介しておく。

頼りにすべき米国との間で、台湾有事に対処する共同作戦計画は手つかずのまま、具体的に検討されていない。中国の海上・航空戦力に対するに、日台間に軍事に関する通信連絡の仕組みがない。いまや近代戦ではサイバー攻撃が常識になっているが、日本にはサイバー攻撃者を特定する能力も反撃能力もない。

邦人保護も心もとないものだ。戦端が開かれたら台湾の在留邦人2万5000人、敵性国家の国民となる中国本土の在留邦人11万人をどうやって避難させるのか。自衛隊の限られた輸送能力だけでは絶対に救出できない。この対策が、一番、肝要であるように思う。

『自衛隊最高幹部か゛語る台湾有事』

新潮社
発行日:2022年5月20日
新書版:295ページ
価格:990円(税込み)
ISBN:978-4-10-610951-5

この記事につけられたキーワード

中国 本・書籍 台湾 尖閣諸島 新刊紹介 台湾有事

滝野 雄作Takino Yuusaku経歴・執筆一覧を見る

書評家。大阪府出身。慶應義塾大学法学部卒業後、大手出版社に籍を置き、雑誌編集に30年携わる。雑誌連載小説で、松本清張、渡辺淳一、伊集院静、藤田宜永、佐々木譲、楡周平、林真理子などを担当。編集記事で、主に政治外交事件関連の特集記事を長く執筆していた。取材活動を通じて各方面に人脈があり、情報収集のよりよい方策を模索するうち、情報スパイ小説、ノンフィクションに関心が深くなった。