[FT]企業経営者、台湾有事を警戒 コンサルに解説を依頼

[FT]企業経営者、台湾有事を警戒 コンサルに解説を依頼
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『企業経営者らは台湾を巡る戦争の可能性に懸念を強めている。ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、コンサルティング業界へはブリーフィングの要請が急増しているという。
敵軍による攻撃を想定した台湾での軍事演習(2020年)=ロイター

米ビーコン・グローバル・ストラテジーズでインド太平洋部門を率いるエリック・セイヤーズ氏は、中国政府による香港の民主主義弾圧にウクライナ侵攻が重なり、不安を「一気に加速させた」と話す。

「1年前、当社では顧客から時折、台湾について1つか2つ質問を受ける程度だった」という。

「それが今では台湾の政治や軍事情勢について経営トップに直接ブリーフィングすることや、米政府高官や元米軍幹部の状況認識を知るための会合を設けるよう求められている」

セイヤーズ氏によると、2024年の台湾での次期総統選についてもブリーフィングの要望がある。一部の企業からは、危機管理計画の検討に向けて、台湾危機はどのように展開していくのか、経営幹部が把握できるように机上演習を実施するよう要望も受けているとしている。

ここ2年間、中国が主権を主張する台湾周辺に戦闘機を侵入させることがますます増える中で、民主主義体制の台湾を巡る不安は急速に高まった。バイデン米大統領は5月の日本訪問中に、中国が台湾を攻撃すれば米国は軍事的に関与するとの警告を発し、緊張関係を浮き彫りにした。

21年の米インド太平洋軍司令官発言を意識

一部の企業は、21年3月に当時のデービッドソン米インド太平洋軍司令官が中国は27年までに台湾への軍事行動を起こす可能性があると述べたことを受けて、懸念を募らせていた。当局者はこの発言の火消しに動いたが、数カ月前から一部の高官がこのリスクについて公然と語るようになっている。

ヘインズ米国家情報長官は5月、台湾は10年間にわたり中国の「深刻な」脅威に直面する状況にあると発言した。3月には、4月末に就任したアキリーノ米インド太平洋軍司令官がフィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、ウクライナ侵攻は台湾への脅威が抽象的なものでないことを人々に思い起こさせるはずだと述べた。

米アジアグループのマネージングパートナー、カート・トン氏は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて台湾への関心が「急激に高まった」と話す。

「リスク状況をどのように認識すべきか、継続的に追跡すべき重要な要素は何か、企業は知りたがっている」。ベテランのアジア外交官だったトン氏は、テック企業から金融機関、製薬会社、日用品メーカーまで、幅広い顧客からブリーフィングを求められていると付け加えた。

米中央情報局(CIA)の元上級中国担当分析官で、現在はチャイナ・ストラテジーズ・グループを率いるクリス・ジョンソン氏によると、企業が抱える懸念は、台湾を巡る戦争が勃発した際に世界で最も重要な半導体製造拠点としての台湾に及ぶ影響から、中国での生産活動に生じる支障まで多岐にわたる。懸念の高まりを引き起こしているのは「ウクライナ情勢とくすぶり続ける27年予測」で、デービッドソン氏の警告のことだ。

「企業トップたちにはこのニュースが染み付いており、懸念を感じざるを得ない状況だ。ウクライナ侵攻によって、この問題が最優先されるようになった。それまで台湾の最新情勢は6番目の質問だったのだが」

ウクライナ侵攻でも制裁や経済混乱で企業に打撃

企業側もサプライチェーン(供給網)や台湾または中国に抱える人員など、あらゆる事柄について独自に状況を評価しているが、一部の米当局者はリスクへの警戒を強めるようさらに促してもいる。

米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は先週、ロンドンで経済人らに対し、ウクライナ侵攻が制裁措置や経済混乱などで企業にも様々な影響をもたらす結果になったことを踏まえて、企業経営者は中国の台湾への脅威がもたらすものについてさらに考えを深めるべきだと警鐘を鳴らした。

「ドアが閉じられた時にまだ指をはさまれたままの欧米企業が多かった」とレイ氏は語った。

「中国が実際に台湾に侵攻すれば、はるかに大きな規模で同じことがまた起こりかねない。ロシアの場合と全く同様に、長年積み上げてきた欧米の投資が人質になって資本が動かせなくなり、サプライチェーンと関係に混乱が生じる恐れがある」

米アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のアジア専門家、ザック・クーパー氏によると、台湾への最近の「極めて大きな関心」は以前から関心を持っていた企業から、ここにきて問題を認識して「恐れを抱いている」企業へと広がっている。

経営陣への浸透が遅れていた台湾有事のリスク

「大国がかかわる大規模な紛争は起こらないはずだと多くの企業は単純に思い込んでいたが、ロシアのウクライナ侵攻でその前提が崩れた」とクーパー氏は説明する。「今後の焦点は他のどの大国に軍事行動の可能性があるのかで、多くの人は台湾海峡危機をすぐに連想する」

米トレンチコート・アドバイザーズの共同創業者ホールデン・トリプレット氏は、ウクライナ紛争も一因としてからんでいるが、企業の経営陣は中国でのサプライチェーンと事業活動の見直しの一環として、台湾へのシフトを進めようとしていたと話す。安全保障担当の幹部はリスクを強く意識していたが、その懸念は必ずしも上層部にくみ上げられていなかったという。

「一般的に思われそうなほどには経営陣に浸透していなかったようだ」とトリプレット氏は言う。「安全保障や情報セキュリティーを担当する責任者たちは、警鐘を鳴らそうとしていたのにと不満をあらわにしている」

国際セキュリティーサービスを手掛ける米グローバル・ガーディアンのデール・バックナー最高経営責任者(CEO)によると、同社は世界の有力企業「フォーチュン500」の7社から、台湾有事の際の人員退避を含む危機管理計画について引き合いが来ている。うち3社はハイテク業界だという。

「名前を聞けばわかる有名企業だ」とバックナー氏は語る。「率直に言って、彼らは恐れている」

By Demetri Sevastopulo and Andrew Edgecliffe-Johnson

(2022年7月12日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』