[FT]「英政府は減税以外の政策を」 長期戦略求める声

[FT]「英政府は減税以外の政策を」 長期戦略求める声
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『英国政府は長年のちぐはぐな経済政策を改め、国内総生産(GDP)の力強い成長を下支えする首尾一貫した長期的な経済戦略が必要だと、13日に公表された3つの報告書が指摘した。

EU離脱で英国では国内で高技能労働者を育てる必要性が増しているという(英南東部のロールスロイス工場)=ロイター

英シンクタンクのレゾリューション財団は、英国経済が「低成長と大きな格差という有害な組み合わせ」によって他国に後れを取りつつあると警告した。英下院財務委員会も同様の見解を示し、政府が「長期的な視点に立った経済戦略を欠いている」と批判した。また、英会計検査院(NAO)は、政府の技能戦略はビジネスのニーズを満たしていないと結論付けた。

3つの報告書はいずれも2020年代の経済課題に対応するためには中途半端な減税を超えるものが必要だと示唆した。

次の保守党党首で英首相の候補者が打ち出す経済改革は、これまでのところ減税を伴うものが支配的だ。

他国との所得差が拡大

レゾリューション財団が英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの経済パフォーマンスセンターと共同でまとめた、30年までに望まれる英国経済のあり方に関する研究の中間報告書は、英国が直面している経済課題を浮き彫りにした。

この報告書によると、英国は生産性で2000年代半ばにフランスとドイツにほぼ追いついたが、労働党政権による08〜09年の金融危機への対応やその後の保守党政権による経済再生策の下で両国に後れを取った。

報告書は格差の大きさも指摘した。上位10%で比べると英国の世帯は他の欧州諸国の大半より収入が多いが、中所得層ではオーストラリア、フランス、ドイツ、オランダに比べて世帯所得が8800ポンド(約144万円)少なく、その差は拡大している。

各国の貨幣購買力は計算方法によって異なるため、厳密な所得の差は明確ではない。だが、レゾリューション財団のトーステン・ベル最高経営責任者(CEO)によると、2000年代半ば以降の傾向は明白であり、経済運営の失敗が浮かび上がるという。

同財団はプレスリリースで、政策立案者が英国経済の本質や投資する企業、生産性の向上、公平性の確保、税制に対して真剣に向き合っていないと批判した。

報告書はこうした政府の怠慢が英国を「経済停滞国」にしたと断じた。政治家に対しては、英国は製造業大国になることはなく、専門的サービス業や教育、知的財産といった強みにこそ将来性があると認識するよう求めている。

また、高齢化が進むなかで公共サービスの財源を十分に確保するには減税ではなく増税が必要になると指摘した。

ベル氏は「我々はわが国の相対的な衰退の規模を過小評価しており、経済の本質や変化を起こすのに必要な改革の大きさに真剣に向き合っていない。こうした状況を変える必要がある」と述べた。
企業の研修予算は減少

レゾリューション財団の報告書で指摘された点の多くは、大きな影響力を持つ下院財務委員会に所属する国会議員にも認識されている。同委員会の報告書では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降の労働力の減少や、生産性の伸び悩みが長引いている点が強調されている。

同委員会は、新型コロナ後遺症患者の労働市場への復帰を支援するための追加予算の確保や、英国の欧州連合(EU)離脱に伴う経済的打撃を補填するための財政措置の増額、EU離脱によって生まれる経済的なチャンスを見つける取り組みの強化を求めた。

委員長のメル・ストライド議員(保守党)は、生産性を向上させるのに税制優遇に着目したのは「出発点としては適切」だったものの、「政府はより安定的で長期的に揺るぎない政策立案をする必要があることを我々が入手した証拠は示唆している」と述べた。

政府の支出を監視する独立機関である会計検査院の報告書は、今後数十年に英国の労働者が備えるべき技能を身につけるための適切な戦略を政府が描けているかについて疑問を投げかけた。

報告書は、EU離脱によって域内から来る高技能労働者が減り、国内で育成する必要性が増したと指摘した。しかし、企業の研修予算は11年から19年までの間に11%減少しており、19年の調査では過去12カ月間に従業員に技能研修を行わなかった雇用者が39%に上ったという。

会計検査院トップのガレス・デービス氏は、政府と雇用者が労働者の技能習得を支援することは「不可欠」だとし、「政府は近年、技能不足への賢明な対応を取ってきたものの、直面する課題は増えている。政府が正しい意図をもって対策を強化しても、以前ほどうまく国民に必要な技能を提供できない恐れがある」と指摘した。

英財務省にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

By Chris Giles

(2022年7月13日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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