米国が後押しするイスラエル・アラブ関係の裏事情

米国が後押しするイスラエル・アラブ関係の裏事情
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/27209

『2020年の「アブラハム合意」(イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、モロッコとの関係正常化)に端を発する、イスラエルとアラブ諸国との関係改善は、急速に進展しているようである。イランによる核、弾道ミサイルの開発、代理者を通じた地域における影響力拡大などが共通の脅威となっていることが背景にある。双方にとりイランは生存にかかわる脅威と言ってよい。

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 こうした中、イスラエルでは6月20日にベネット前首相はクネセット(議会)の解散を表明、6月30日にクネセットは解散を決定した。ベネットは首相を退き、連立のパートナーだったラピド外相が選挙管理内閣の首相に就いた。

 ベネット前政権は、右派からアラブ系政党にいたる8党が、ネタニヤフ元首相を追放すること一点のみにおいて一致してできた連立政権で、その基盤は全く脆弱なものだった。今後イスラエルの内政は混乱することが予想される。しかし、イスラエルの政変がイスラエルとアラブ諸国との関係改善に与える影響は、あまりないと見られる。

 イスラエルは、イランの科学者らへの暗殺を繰り返している。核、ミサイル、ドローンなどの開発にかかわる重要な人物がターゲットになっている。それにより、これらのプログラムを遅らせ、もってイスラエルの安全に資するという狙いである。

 ラピド暫定首相もこういったやりかたを継続すると思われる。当然、イランとの緊張はますます高まることになる。イランによる報復がエスカレートする可能性も排除できない。

 よりマクロな動きとしては、「中東防空同盟」がある。ベネットが解散を表明した6月20日にガンツ国防相は、「中東防空同盟」を米国主導で構築し既に運用していると、クネセットの外交・国防委員会に対して説明した。』

『「中東防空同盟」の具体的な加盟国、枠組みなどの詳細については公表されていないが、対イランを目的としていることは、ガンツ国防相も明言していることであり、間違いない。漏れ伝わって来る情報によれば、「中東防空同盟」は、ミサイル迎撃システムと地域的なレーダーシステムのネットワークから構成されているとされる。なお、「同盟」と名付けられてはいるが、通常の意味での軍事同盟ではなく、レトリック的なものであろう。
米国の狙い通りに運ぶのか

 米国がイスラエルとアラブ諸国との関係改善を後押しし、「中東防空同盟」を主導するなどしているのは、米国のグローバルな戦略の一環であると考えられる。米国は、インド太平洋への軸足移動を進めるべく、中東のことは中東でやってもらいたい、具体的には、イランの脅威への対応は自分たちでやってほしいということである。

 それには、イスラエルとサウジやUAEなどのアラブ諸国とが関係強化し、協力してイランと対峙するのが最も都合が良い。ただ、このシナリオがうまく運ぶかどうかは予断を許さない。

 イスラエルとしては、この過程で、パレスチナ問題をアラブ諸国が棚上げしてくれることを望んでいよう。しかし、「アラブの大義」とされるパレスチナ問題をアラブ諸国がそう簡単に見逃すかどうかは疑問である。こうした動きの中、イスラエルおよびアラブ諸国とイランとの緊張が高まっていることだけは確かである。』